この記事をまとめると
■以前よりクルマのフロントマスクはブランド内で統一化される傾向にあった■メルセデス・ベンツやアウディは長年にわたって上手くフロントをデザインしてきた
■デザインを統一せずとも、良いデザインで人気を得ているクルマも少なからずある
フロントマスクの統一化は正解なのか?
日産のノートがマイナーチェンジを実施し、新しい表情になった自慢のVモーションが話題です。こうしたクルマの顔の統一はずっと昔から行われてきましたが、その意義や効果はどこにあるのでしょうか? 今回は内外メーカーの「統一顔」について考えてみたいと思います。
特徴的だけど突出しない自然さが身上
統一された顔といえば、欧州プレミアム勢の伝統的な表情が有名ですが、近年では内外の多くのメーカーがこの手法を導入しています。面白いのは、同じ統一顔でも自然で違和感のないデザインと、逆に顔ばかりが目立ってしまう場合があること。
まず、前者の筆頭はメルセデスベンツでしょう。お馴染みの台形グリルは1950年代以降長きに渡って続いていますが、とくに「飽きた」とか「邪魔だ」といった声は聞かれません。それは、自社の伝統や歴史を継承するという本来の目的に徹しているからだと言えます。
また、グリルの基本的な形状は同一ながら、その大きさや表情は車種によって臨機応変に変化するし、これに接するランプ形状にも結構な振れ幅があります。間違っても顔がスタイリングに制限を与えるようなことはないのです。
これと同じ系列と言えるのがアウディ。自慢のシングルフレームグリルはアッパーとロアグリルが時代を追って一体化したものですが、結構な大きさの割には過剰な主張は感じられません。これは、現状の表現に至るまでのストーリーが明快だったことが大きいでしょう。

新しいところでは、ボルボのトールハンマー型のヘッドライトがあります。非常にユニークなパターンなので一見して同社だとわかりますが、しかしスタイリング自体には制限を与えないので「どれも同じで退屈」とはならないのです。

統一だけが正解ではない
やっぱり顔だよね、のクルマたち
さて、一方で顔ばかりに話題が集中するパターンですが、最近では何と言ってもBMWが筆頭でしょう。もちろん、キドニーグリルは伝統的な表現ですが、そればかりに特徴を与えると「過剰さ」を感じてしまうのです。

スピンドルグリルのレクサスもまた「顔が命」ですね。そもそも海外市場で埋もれない個性を打ち出すことが目的だったので目立って当然なのですが、最新のスピンドルボディやユニファイドスピンドルグリルなど、あれこれ名前を付けてしまうあたりにも過剰さの原因がありそうです。これは「今度はデジタルVモーション!」の日産も似ているかもしれません。

また、最近のプジョーも顔が話題です。ライオンの爪や牙をモチーフとするランプやデイタイムランニングライトは、現在進行形で次々に新しい形状に進化しており、どうしても顔に話題が集中してしまいがち。「ユニーク」と「目立ち過ぎる」は紙一重の好例と言えるかもしれません。
ボディ全体のなかで輝くフロントビューを
当たり前の話ですが、顔を統一すれば「いいデザイン」になるというワケではありません。デザイン性を高めようとすると、そういう考えにハマりがちですが、たとえばスズキやダイハツなどは統一する気配もないようですが、優れたデザインも少なからず見られます。

避けたいのは、先のように顔など部分ばかりが目立ってしまうことだけでなく、統一顔、統一デザインによって、全体のスタイリングが萎縮してしまうことです。デザインフィロソフィは大切ですが、より大きな枠のなかで幅広い展開があってもいいのではないでしょうか。