この記事をまとめると
■アトキンソンサイクルエンジンはジェームス・アトキンソンが1882年に発明した



■アトキンソンサイクルエンジンを高効率化したのがミラーサイクルエンジンだ



■ハイブリッドシステムとアトキンソンサイクルエンジンは組み合わされることが多い



4ストロークエンジンとはそもそも何か

4ストロークのガソリンエンジンの作動原理を、オットーサイクルという。ドイツ人のニコラス・アウグスト・オットーが、19世紀後半に発明し、1877年に特許を取得した。この開発では、ゴットリープ・ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハが協力している。

このふたりは、その後ダイムラー社でともに働く。



オットーサイクルは、吸気‐圧縮‐燃焼‐膨張という4つの行程を繰り返すことで動力を生み出す。この4つの行程において、シリンダー内を上下するピストンの移動距離は、いずれも同じだ。



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馬力を上げるなら、排気量を増やすか同じ排気量であれば圧縮比を高くするのが一般的な手法だ。圧縮比の高いエンジンが馬力(出力)を大きくできる理由は、圧縮比の低いエンジンに比べ、圧縮に対し大きな膨張を得られるからである。ただし、あまり圧縮比を高くし過ぎると、ノッキングなど異常燃焼を生じさせる懸念がある。



圧縮比を高くし過ぎず、それでいて、圧縮に比べ膨張行程を大きくとれるような仕組みをもつエンジンを、アトキンソンサイクルという。英国のジェームス・アトキンソンが1882年に発明した。この技術を応用したのが、ホンダのコージェネレーション用汎用エンジンの「EXlink」だ。



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ホンダの「EXlink」の内部構造



ピストンを上下させるコンロッドとクランクシャフトの間に追加のリンク機構を設け、圧縮と膨張でピストンの移動距離を変える仕組みである。



しかし、アトキンソンサイクルは機構が複雑になるので、代わりに圧縮と膨張の行程でピストンの移動距離を疑似的に変化させ、効率向上を狙ったのがミラーサイクルである。



ハイブリッドシステムと組み合わせることで高効率を狙える

ミラーサイクルは、圧縮行程に入ってもなお吸気バルブをしばらく開けたままとすることにより、ピストンは上昇しているのに圧縮するのを遅らせ、実際に圧縮するピストンの移動距離を減らす。

これにより、燃焼後の膨張行程ではそのままピストンが本来の行程を移動するので、圧縮行程より膨張行程のほうがピストン移動量は長くなり、効率が高まるという考えだ。



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ミラーサイクルエンジンのエンジンバルブまわりの構造



しかし、せっかくシリンダー内に導いた吸気をそのまま圧縮せず、しばらくは吸気バルブから逃がしてしまうことになるため、効率が上がったとしても、手に入れられる出力は下がる懸念が残る。そこで、ターボチャージャーなど過給と組みあわせることで、帳尻を合わせる。あるいは、電子制御の可変バルブ機構を活用し、加速時などのより大きい馬力を必要とするときは、吸気バルブを早く閉じるといった切り替えを行い、巡航走行時の効率の高さ=燃費のよさと、加速での大馬力を両立させることも行われる。



ハイブリッドシステムでは、モーターで駆動力を補えるので、エンジンは効率重視のミラーサイクルを採用する例が増えている。



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トヨタ・プリウス(5代目)のハイブリッドシステム



新車解説などで、アトキンソンサイクルと表現される場合があるが、コンロッドとクランクシャフトの機構に手を加え圧縮比と膨張比を変える機構ではなく、吸気バルブの開閉時期を変えることで疑似的に膨張比を増やす場合を、ミラーサイクルというべきである。

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