スバルの新技術の多くはレガシィ&レヴォーグに採用されてきた

東京モーターショー2019でベールを脱いだ次期型レヴォーグ(プロトタイプ)。ここであらためてその内容を振り返ってみよう。予想以上の大反響を受けた今回の東京モーターショーにおいて、とりわけクルマ好きからの注目度が高かったSUBARUブースのメインステージに置かれ、伝統の油圧シリンダー展示で躍動感を演出。



メインステージに置かれた展示車を油圧シリンダーで動かす演出の歴史は古く、始まりは1990年代まで遡る。筆者が生まれて初めて見た1995年の東京モーターショーでは、2代目レガシィツーリングワゴンがステージの中央で宙を舞い、度肝を抜かされた思い出があるが、レヴォーグはレガシィツーリングワゴンの精神的な後継モデルでもあるので、今回の次期型レヴォーグがステージの中央で踊る様子にはとても感慨深いものがあった。



次期型レヴォーグの驚くべき進化とは? 東京モーターショーで最...の画像はこちら >>



初代から受け継がれた開発コンセプトは「革新のスポーツツアラー」。「革新」を標榜するだけに、今のSUBARUの最新鋭・最先端技術が優先的に採用される。SUBARUのラインアップを見ると、車両価格の最高はWRX STI、車格的な最高峰はレガシィB4/アウトバックとなり、いわゆるフラッグシップ車がどれにあたるのかわかりにくいが、「技術的なフラッグシップ」は歴代レガシィシリーズ、そしてレヴォーグが担ってきた。振り返ると、



・2リッター世界最高峰の最高出力



・2ステージツインターボ



・自主規制上限の280馬力



・倒立式ストラットビルシュタインダンパー



・マルチリンク式リヤサス



・全車等長排気



・全車3ナンバーボディ化



・5速AT



・運転支援システム(旧ADA/アイサイト)搭載



・リニアトロニック



・直噴ターボ



など、SUBARU車として初となる新メカニズムの多くは、レガシィシリーズで採用されてきた歴史がある。

従って、古参のSUBARUファン的に、実質レガシィの後継(日本のレガシィの後継)であるレヴォーグの新型への期待値は相当に高い。



次期型レヴォーグの驚くべき進化とは? 東京モーターショーで最注目だった1台をスバリストが徹底解説



「革新」と標榜せずとも、革新的なモノが盛り込まれていなければファンに納得されないのだ。当然メーカー側もそれを強く認識しているし、次期型レヴォーグは、古参のファンにアッと言わせる革新性を備えていなければならないという宿命を背負った、SUBARUにとって特別なクルマといえる。



エアスクープも装備! 未来のクルマにもスバルらしさは健在

今回発表されたのはエクステリアデザインと搭載エンジン、そして次世代アイサイトの簡単な概要にとどまったが、前述したファンの高い期待値に応えうるモノであると予感させるには十分だった。



エクステリアデザインでは、近年のSUBARUが強く推進しているデザインコンセプトにブレや揺るぎがないことを証明。六連星が中央に輝くヘキサゴングリルと呼ばれる、フロントグリルの六角形から伸びるように描かれた立体造形は、航空機メーカーのDNAだと説明されて頷ける説得力に富んでいた。ヘッドライトとテールレンズには、水平対向エンジンのピストンをイメージさせる「コの字」をさらに強調。

これもSUBARUが自らのアイデンティティを強めていきたいとの意思表示のひとつであり、未来のSUBARU車が進む方向性にもブレがないことが伝わる。



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さらに、ボンネット中央にそびえるエアスクープも健在。これも歴代レガシィターボ、あるいはWRXで培ったSUBARUの高性能車の象徴的な部分と言えるが、単なるスポーツイメージの訴求、あるいは古参ファンへの配慮から配置したわけでは決してない。「性能を出すために必要」との判断から踏襲されている。



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天地方向に薄い水平対向エンジンの場合、インタークーラーはエンジン上部に配置して、短いパイピングで吸気を冷やせるメリットがあり、今回もその点が重視された。フォレスターや北米向けアセントなどのSUVではピークパワーの要求値は高くないし、ボンネットの全高に余裕があるため、ボンネットにエアスクープを設けずともインタークーラーを効果的に冷やせるが、全高の低いクルマではやはり中央の穴から空気を導入する方が性能を出しやすいという。



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より大胆に、という意味を込めた「BOLDER(ボールダー)」と呼ばれるデザインコンセプトは、今年3月のジュネーブショーで初公開されたヴィジヴ・アドレナリン・コンセプトで表現されたもので、これが早速市販車に反映された。ヴィジヴ・アドレナリン・コンセプトはSUVの未来像である一方、各部に表現されたデザインのネタは必ずしもSUV用ではない。今回はフロントマスクの造形が次期型レヴォーグに受け継がれている。



メインステージに置かれる次期型レヴォーグと、少し離れた位置に展示されたヴィジヴ・アドレナリン・コンセプトを同時に見比べると、小さめのヘッドライトや彫りの深いエッジの効いた顔立ちがそっくりであることに気がつくのだ。ヘッドライトは今時のクルマらしく小さくなり、世界的な流行への追従を思わせなくもないが、もちろんヘッドライト本来の機能である照射性能については万全。照射範囲の広さや明るさなど、機能面を徹底的に追求していると熱く語るエンジニアの話を聞いて、SUBARUらしさを感じた。



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また、ホイールアーチにも六角形をイメージさせる造形が施されたのも印象的だ。大胆に張り出した前後のフェンダーもあいまって、止まっていても前に走るような躍動感が感じられるところもデザインの大きなポイントと言える。



プラットフォームや安全性を向上! 心臓部にも期待が高まる

モーターショーの現場にいると、ちょっとメリハリを利かしすぎてクドい、あるいはガンダムチックになった、などという来場者の意見も耳に入ったものの、デザインについてはおおむね好評で、多くの人に受け入れられるものになっていたと評価できる。



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ボディサイズはわずかに拡大されるようだが、現行レヴォーグ、あるいは4代目レガシィユーザーが困惑するような拡幅はなされていないという。デザイン性が高まると、視界を中心とした運転環境の変化が気になるところだが、その点についても心配ご無用。「0次安全」を重視する設計思想は必要以上に守られているという。

後方視界などについても悪化や後退はしていない。



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搭載されるエンジンについての発表は、1.8リッターの直噴ターボでリーン燃焼技術を採用したという内容にとどまっており、スペックや他の排気量の存在については明かされなかったが、エンジニアが声を大にしてアピールしたのは「レガシィ/レヴォーグは新世代ごとにパフォーマンスが向上する! その期待は絶対に裏切らない!」ということなので、それを信じて待ちたい。ミッションはCVTのリニアトロニックを踏襲。もちろん大幅な改良が施され、CVT嫌いの人でも違和感のない変速フィールをさらに追求したという。AWDシステムにも新たな機構が注がれるようだ。



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新世代プラットフォームのSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)はフルインナーフレーム構造となり、第2ステージへステップアップ。

極限まで歪みを抑えた高剛性ボディにより、意のままに操れる質感の高い走りを実現したとある。SGP車の走りの質の高さは現行インプレッサやフォレスターで定評があるが、この点においてもエンジニアは、従来のSGP車から予感させる動的質感とはまた別次元の高みに上ると自信満々に語っていたので、過度な期待を抱いて待ちたいところだ。



次期型レヴォーグの驚くべき進化とは? 東京モーターショーで最注目だった1台をスバリストが徹底解説



新しいアイサイトは、広角化した新開発ステレオカメラ/前後4つのレーダーで360度センシングにより、路地での出会い頭や右左折など、これまでのアイサイトではカバーしきれなかった領域でもプリクラッシュが作動するなどレベルアップ。



高精度マップ&ロケーターにより、人工衛星みちびきから得るデータの受信性能が上がり、自車位置をより精度高く正確に特定。高速道路形状をクルマが正確に把握できることで、カーブ前の減速や渋滞時のハンズオフ走行支援性能も飛躍的に高まるという。



次期型レヴォーグの驚くべき進化とは? 東京モーターショーで最注目だった1台をスバリストが徹底解説



SUBARUは「自動運転」という言葉を使わず、あくまで「運転支援」。この思想も揺るぎなく継承される。新アイサイトについては、前述の発表された内容に度肝を抜かれるほどのインパクトはなかったものの、本質的な性能面の高さにエンジニアは自信を持っていた。いまのアイサイトでも定評のある制御の緻密さや自然さ、違和感のなさなど作動時の質やフィーリング面においては、他銘の運転支援システムを再び大きく凌駕してくれるものになることを期待してやまない。



ファンの期待値というハードルはさらに高まったと言えるが、2020年の後半とされる正式発表が待ち遠しい。