腕で勝負する素のマシンが「kuruma」
読者諸兄は「インタープロト」をご存じだろうか? ル・マン24時間レースで優勝した実績を持つ関谷正徳氏が富士スピードウェイを舞台に2013年に立ち上げたワンメイクレースで、マシンは専用開発のスポーツカー“kuruma”を使用。搭載されているエンジンはトヨタ製の4000cc・V型6気筒で、ABSやトラクションコントロールシステムなど、ハイテクデバイスを省いたピュアなレーシングカーだ。
リヤウイングやフロントのカナードなどの空力デバイスもないことからラップタイム的にはFIA F4と同レベルで、正直、マシン単体だけを見ればスピード感に欠け、迫力不足は否めない。
しかし、いざレースが始まるとインタープロトではテール・トウ・ノーズ、サイド・バイ・サイドの接近戦が展開されており、見るものを魅了している。
それもそのはず、同レースのプロフェッショナルクラスにはロニー・クインタレッリや山下健太、福住二嶺、関口雄飛、野尻智紀、坪井翔などスーパーフォーミュラやスーパーGTで活躍するトップドライバーが集結している。百戦錬磨の強豪がワンメイク車両で戦っているだけに、そのバトルはレベルが高く、エキサイティングなポジション争いが展開されているのだ。

「kurumaのフィーリングは独特で、ハコ車ではあるんですけど、フォーミュラのような動きで機敏な走りをする。クルマ自体はダウンフォースがないので、あえて似たような感じのクルマを探すならFIA-F4に近いかな」とインプレッションするるのはGR GARAGE YOKKAICHIで32号車を駆る坪井で、「インタープロトは同じクルマ、同じエンジン、同じタイヤの完全ワンメイクでプロドライバーが戦うことはあまりないし、富士ではスリップストリームを使ったバトルができるので、見ている人からすれば面白いと思います」と付け加える。

さらに「インタープロトはプロクラスのほか、ジェントルマンクラスもありますが、プロと組んで同じクルマでレースをするので、データを共有しながら教えられことから、ジェントルマンドライバーにとってもスキルアップに最適です。面白いフォーマットだと思いますよ」と坪井が語るように、インタープロトはアマチュアドライバーを対象にしたジェントルマンクラスが設定されていることもポイントだと言えるだろう。
1台のマシンをプロとアマチュアがシェアして乗る仕組み
ジェントルマンドライバーはプロとペアを組み、同じマシンでレースに参戦可能だ。ちなみに、ジェントルマンを対象にしたクラスは、レース実績に応じてエキスパートとジェントルマンの2クラスに分けられており、混走ながらも各クラスでプロに負けない激しいバトルが展開されている。
「86/BRZレースの経験もあるんですけど、インタープロトの魅力はプロと同じくクルマをシェアして走れるし、動画やデータロガーを使ってプロがコーチングしてくれるところにあります。自分の苦手な部分をひとつずつ教えて貰いながらレベルアップできるので、ひとりで参加するレースよりもスキルアップが速い」とインタープロトの魅力を語るのは、山下をパートナーにNAVULの44号車でエキスパートクラスに参戦する山口達雄。さらに気になる参戦コストについても「リアルなレーシングカーでレースができて、しかもプロに教えてもらえるのに、インタープロトはポルシェカップよりもリーズナブルなパッケージなっていると思います」と山口が語っているだけに、コストパフォーマンスの高いレースだと言えるだろう。

ちなみにエキスパートを含めてジェントルマンドライバーのほとんどがアマチュアドライバーで、前述の山口を含めて、ディーラー関連の企業で働いているドライバーが多い。そのほか、エキスパートクラスに参戦する寺川和紘はマツダの開発ドライバーを務めるなど、やはり自動車関連の企業スタッフが多くなっているようだ。

なお、インタープロトはkurumaを使用した「IPSクラス」のほか、GRスープラを使用した「スープラ」、レクサスISのレーシングモデル、CCS-Rを使用した「CCS-R」も混走でレースが争われており、各モデルにプロフェッショナルクラス、ジェントルマンクラスを設定。ジェントルマンにとってはレベルやコストに合わせてマシンを選べることも同シリーズの魅力だと言えるだろう。

同シリーズは1大会・2レース制で、開幕ラウンドは6月5日~6日に富士、第2ラウンドは7月24日~25日に鈴鹿で開催。第3ラウンドは9月25日~26日に富士、最終ラウンドは12月11日~12日に富士で争われる予定となっているだけに、日本独自のプロ&アマのレースの動向に注目したい。