動力性能の高いクルマほどブレーキ容量が必要になる

スポーツモデルのブレーキには、対向式の4ポットキャリパーを装着している車種が多く、なかにはR35GT-RやスバルのWRX STI、レクサスLC500、F SPORTのように、6ポットキャリパーを純正採用しているクルマもある。



ではなぜ、ハイパフォーマンスカーほどポット数の多いブレーキキャリパーを採用するのか。



それは車重が重いクルマ、動力性能の高いクルマほど、ブレーキ容量が必要になるからだ。



重くて速いクルマを確実に減速させるには、ブレーキキャリパーのピストン径を大きくして、力強くブレーキパッドをローターに押しつけなければならないが、ホイール内の限られたスペースに大径ピストンのキャリパーを入れる余地はない。そこでピストン径を大きくする代わりに数を増やすというアイディアが生まれた。



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もうひとつ、ポット数を増やすことでパッド大きくできるのも大事な要素だ。



速くて重たいクルマを止めるには、パッドの面積を大きくしないとパッドが持たない。



パッドの面積を増やすには、直径方向か円周方向に大型化するしかないが、タイヤの外径が決まっている以上、直径方向にパッドを大型化するのは難しい。



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したがって円周方向に長いパッドが用いられるわけだが、長細いパッドをひとつのピストンで押すと、ピストンに近い部分には大きな力がかかるが、遠い部分の圧力は弱くなってしまう。長細いパッドを均一にローターに当てるには、複数のピストンで押すのがベストなので、ハイパフォーマンスカーほど、ポット数の多いキャリパーを装着しているというわけだ。



ポット数を増やした分ばね下重量は重くなる

しかし、ポット数の多いキャリパーはそれだけ加工も複雑になり、部品点数も増え、大きくなるのでばね下重量も重くなる。



そこで軽量化のためにキャリパー本体をアルミ素材で作るのが標準的だが、アルミはスチールよりコストが高く、なおかつ剛性も劣るので、高性能車は剛性を確保するために、より高価なモノブロックのアルミキャリパーを使ったりするが、ファミリーカーにはそこまでのブレーキは必要ない。



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多くの乗用車が採用しているシングルポットの片押し式キャリパーは、スチール製なので剛性もあり、部品点数が少なく、安価で、軽く、省スペースで済むメリットがある。とくにホイールとのクリアランスが少ない小型車には、内側にピストンがひとつだけしかない片押しキャリパーの利点は大きい。



結局、車重や動力性能にマッチしていれば、シングルポットの片押しキャリパーでも十分だし、逆にモータースポーツでガンガン使うのなら、ブレンボの4ポットキャリパーだって心許ないこともあるので、クルマの性能・用途に見合ったブレーキがついていることが一番重要。



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ブレーキキャリパーのポット数=ピストン数が多ければ必ずしもエラいのではないということを覚えておこう。

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