この記事をまとめると
■同メーカーでサイズもキャラクターも似ているモデルがあって車種選択に困ることがある■スポーティさならヤリスHVに軍配、後席の居住性重視ならアクアがおすすめ
■シティコミューター的なMX-30EVよりもオールラウンダーなCX-30HVがやや便利
見た目がキャラを表現しているヤリスHVとアクア
クルマを購入する際、ライバルとなる車種を比較するのは当然だ。どちらが自身にぴったりのクルマかは、たとえ軽自動車、コンパクトカーであっても、それなりの出費になるのだから、慎重にならざるを得ない。
で、ライバルメーカー同士の比較なら、それぞれに独自の個性があり、比較的選びやすいのだが、ライバルが同自動車メーカーで、キャラクターも似ているとなれば、選択はけっこう難しくなる。
まずは、今、もっとも売れている国産車、コンパクトカーのトヨタ・ヤリスと、2021年7月に発売されたばかりのトヨタ・アクア対決だ。ヤリスは全長3940×全幅1695×全高1500mm、ホイールベース2550mm、室内長1845×室内幅1430×室内高1190mm。ハイブリッドとガソリン車を揃え、人気のハイブリッドモデルのWLTCモード燃費は、中心グレードのGでも世界最高峰の35.8km/Lとなる(Xは36.0km/L)。
一方、初代同様、ハイブリッド専用車となるアクアは、全長4050×全幅1695×全高1485mm、ホイールベース2600mm、室内長1830×室内幅1425×室内高1190mm。WLTCモード燃費は実質的ベースグレードのXで34.6km/Lだ(Sは35.8km/L)。

つまり、かつて世界最高燃費を謳ったアクアも、今やヤリスに燃費性能では追い抜かれてしまったということだ。
両者の価格帯はヤリスの標準モデルが(GRを除く)139万5000円~252万2000円。アクアが198万円~259万8000円だが、ヤリスはガソリン車があるため、スタート価格は安くなっている。ちなみに、最新のアクアには、全車速追従型のレーダークルーズコントロール(ACC)が全グレードに標準装備。ヤリスも2021年5月の一部改良で、要望の多かった同機能が(渋滞時に嬉しい停止保持機能はなし)追加されている。
スタイリングはまさに好みが分かれるところ、ヤリスはアグレッシブで、ちょっぴりとんがったスタイル。
こうしたコンパクトカーの場合、主に前席のみの乗車、後席は子供用か荷物置き場として使われるケースが多いとはいえ、室内の質感、後席や荷室の使い勝手は大いに気になるところ。室内の質感に関しては、やはり最新のアクアがリード。収納に関しても、より使いやすいと感じる人が多いはずである。

※写真はアクア
後席の居住性は、先代アクアの場合、燃費最優先のパッケージだったため、後席はある意味で犠牲にされていたのも本当だ。が、新型はヤリスを超えたゆとり、快適感が得られている。
一方、荷室の寸法は、ヤリスが奥行き610mm、幅990mm、高さ810mm。アクアが奥行き700mm、最小幅850mm、高さ690mm。つまり、奥行きならアクア、幅と高さならヤリスとなるのだが、ベビーカーなどを積み込むのであれば、幅方向が威力を発揮。ほぼ真横に積み込めるヤリスが優勢となる。

※写真はヤリス
走行性能はどうか。パワートレインはヤリスHV、アクアともに1.5リッターの3気筒NAエンジンにモーターを組み合わせたものだが、ヤリスはそのアグレッシブなスタイリングが象徴するように、GRでなくてもけっこうスポーティに走れるコンパクトカーに仕立てられている。

では、HV車のEV走行可能速度はどうか。この点では、世界初のバイポーラ型ニッケル水素電池(コンパクトながら従来の2倍のバッテリー出力を実現)を採用したアクアが圧倒、初代アクアの約20km/hから倍の約40km/hまで伸びている。ヤリスは最大約30km/hである。つまり、走りの”電動感”という点では、アクアということになるはずだ。

燃費性能にしても、実燃費ではヤリスとアクアは互角、場合によってはアクアが有利になることもあり得ると考えていい。また、アクアには日産のワンペダルのような「快適ペダル」も用意され、運転の新鮮さというところでも、最新のアクアが優勢になる。
アウトドアや災害時に威力を発揮してくれる非常時給電機能付きAC100V/1500Wコンセントは、ヤリスHVだと全グレードともに4万4000円(税込み)のオプション、アクアは全グレードに標準装備されるのだから、便利と安心まで標準なのである。

※写真はアクア
では、結論だ。今、高騰しているガソリン代を節約したカーライフを楽しみたいなら、どちらもアリだ。

もっと言えば、アウトドアライフ、ワーケーションがブームとなり、災害大国でもある日本において、AC100V/1500Wコンセントを標準装備してくれたホスピタリティにも共感できるからである。
万能型のCX-30とデザイン特化型シティコミュータのMX-30
次の対決は、これまた同門のマツダCX-30とMX-30である。こちらは最新のマツダのクロスオーバーデザインという点では共通し、ボディサイズもCX-30が全長4395×全幅1795×全高1540mm、ホイールベース2655mm、MX-30が全長4395×全幅1755×全高1550mm、ホイールベース2655mmと、全高10mmの違いでしかない。

しかしながら、CX-30は純ガソリンとクリーンディーゼルエンジンを積むのに対して(その両車のいいとこ取りをしたスカイアクティブXもあるが高価)、MX-30はマイルドHVと純EVモデルで勝負するという大きな違いがある。

また、CX-5の全高を低めたクロスオーバーモデルとも言えるCX-30に対して、MX-30はRX-8を思わせる観音開きリヤドアを採用。特別感を大いにアピールしているのが特徴だ。ちなみに室内寸法はほぼ同等。クロスオーバーモデルとして気になる最低地上高はCX-30が175mm、MX-30が180mmと、大きく変わらない。

このクラスともなれば、後席の居住性についても気になるところだが、身長172cmの筆者のドライビングポジション背後で、CX-30は頭上に120mm、膝まわりに120mm。

※写真はCX-30
また、荷室に関しても、CX-30は奥行き890mm、幅1000mmなのに対して、MX-30は奥行き800mm、幅1000mmと、奥行き不足。荷物をどっさり積みたい人は、迷うことなくCX-30となるだろう。

※写真はCX-30
ちなみに、MX-30のマイルドHVモデルとピュアEVモデルの内外装はほぼ同じ。ピュアEVモデル側からすれば、特別感なし。また、ナビ画面は、今のマツダ車すべてに言えることだが、画面が天地に狭すぎて、情報量が限られるのが難点だ。

走行性能は、まったく異なる世界と言っていい(内燃機関車とEVだから当然)。最新のマツダ車ならではのしなやかで落ち着き感ある洗練されたドライブフィールを持つのは両車同じ。MX-30のピュアEVモデルなら、100%モーター駆動によるウルトラスムースかつ静かな走行性能が、CX-30はとくにクリーンディーゼルモデルのトルク感溢れる上質な乗り味が魅力となる.

しかし、問題は航続距離。

※写真はMX-30EV
つまり、オールラウンダーなCX-30、MX-30のマイルドHVモデルに対して、MX-30のEVモデルはシティコミュータというキャラクターとなり、ユーザーを選ぶことになる。
個人的には、MX-30のデザイン性に惚れつつも、見る者をハッとさせるほど美しいスタイリング(とくにソウルレッドクリスタルメタリックのボディカラー)とマツダらしい走り、乗り心地の良さ、後席のアクセス、居住性を含めた実用性の高さを持つCX-30を選んでしまうだろう。

MX-30の内外装デザインや装備にもっと特別感があれば、答えは変わるかもしれないけれど……。