この記事をまとめると
■クルマにはさまざまなカテゴリーが存在する



■すべてのメーカーが全カテゴリーを扱うわけではなく、OEMなどで補完することも



■とくに近年の動向が注目されるマツダスバル



軽自動車は日本に最適なカテゴリーながら取り扱いが難しい

乗用車にはさまざまなカテゴリーがあり、すべてのメーカーが全部のカテゴリーを扱うわけではない。とくに近年の動向で注目されるのはマツダとスバルだ。両社ともに、今では3列シートのミニバンを販売していない。

軽自動車も自社による開発と生産から撤退して、OEM車に変更した。



ミニバンや軽自動車から撤退した理由は、大きくわけて2つある。ひとつは開発と生産の合理化だ。ミニバンは今でも国内の人気カテゴリーだが、海外では販売しにくい。その点でSUVとミドルサイズハッチバックは、海外と日本の両市場で売られるから効率が優れ、ミニバンからは撤退した。



とくに軽自動車は難しい。日本だけで扱われる薄利多売の商品だから、軽自動車の生産と販売は、今ではダイハツとスズキが中心だ。ダイハツはトヨタの完全子会社で、2021年1~11月の国内販売では、軽自動車販売比率は93%に達する。



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スズキはダイハツに比べると小型/普通車にも力を入れるが、国内では軽自動車が84%を占める。このように軽自動車は専門化しないと成立しにくい。



同様の理由に基づいて、日産と三菱は軽自動車を共同開発する。1社だけでは成り立たないからだ。

しかも軽乗用車に限られ、バンやトラックなどの軽商用車は、スズキ製OEM車を扱う。



ホンダはOEM関係を持たないので、商用車は乗用車のNシリーズをベースに開発したN-VANへ切り替えた。薄利多売を成立させるため、軽乗用車もN-BOX、N-WGN、N-ONEを用意する。



軽もミニバンもいらない! 売れ筋ジャンルを斬り捨てたマツダやスバルの思惑とは



そのために2021年1~11月に国内で新車として売られたホンダ車の53%が軽自動車になり、小型/普通車のユーザーを奪っている、必ずしも好ましい状況ではない。以上のように軽自動車は、日本に最適なカテゴリーながら、取り扱いが難しい。



スバルは軽自動車をやめて水平対向エンジンに集中

軽自動車の開発と生産から撤退したスバルの商品企画担当者は、以下のように述べている。「スバルが軽自動車の開発と生産から撤退して、残念に思われるお客様が多いのは、とても有り難いことだ。それでもスバルは軽自動車をOEMに切り替えたことで、水平対向エンジンに集中できるようになった。経営的には大きなメリットがあった」。



マツダやスバルがミニバンや軽自動車から撤退した2つ目の理由は、これらのカテゴリーが両社のブランドイメージに合わないことだ。



マツダでは、以前はミニバンのプレマシーやビアンテ、背の高いコンパクトカーのベリーサなどを開発/生産していたが、今は扱っていない。2012年に先代CX-5と現行マツダ6(当初はアテンザ)を発売してからのマツダ車は、OEM車を除くと、魂動デザインとスカイアクティブ技術に基づくカッコ良くて運転の楽しいクルマ作りをコンセプトにしているからだ。

高重心のミニバンや背の高いコンパクトカーは、新しいマツダのコンセプトに合わないと判断された。



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スバルも同様だ。以前は水平対向エンジンを搭載する3列シートのエクシーガを設定したが、外観がワゴン風でスライドドアも装着されず、ミニバンらしさが乏しい。スバルのブランドイメージにも合わず、大幅なマイナーチェンジを実施してSUV風のクロスオーバー7になったものの、結局は廃止された。



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両社ともに納得できる事情だが、国内での売れ行きは下がった。マツダは2010年には国内で約22万4000台の新車を販売したが、コロナ禍になる前の2019年は20万4000台であった。2012年以降のマツダは、魂動デザインとスカイアクティブ技術に基づく新型車を国内へ活発に投入したが、2010年の販売実績を下まわっている。



スバルは2010年に国内で約17万7000台の新車を販売したが、2019年は約13万1000台だ。マツダ、スバルともに売れ筋の価格帯は高まったが、販売台数は減ってしまった。

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