この記事をまとめると
■三菱の2リッターターボエンジン「4G63」は今でも最強クラスのスペックを誇る



■そんな最高峰の2リッターエンジンを搭載したSUVが「エアトレックターボR」だ



■中古車価格は100万円以下ということもありオススメな1台だ



今でも大人気な2リッターターボエンジンの最高峰「4G63」とは

先日、ホンダが新型シビックタイプRを発表した。先代に引き続き、2リッターVTECターボの「K20C」型エンジンを搭載することは明らかとなったが、そのスペックは未公表。それでも、従来型の320馬力を超えてくることは確実視されている。

いずれにしても、国産の2リッターターボとしては史上最強のスペックを誇ることになりそうだ。



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しかし、ポテンシャルで評価すると、ホンダ「K20C」が国産2リッターターボの史上最強ユニットとは言いがたいというのが筆者の印象だ。遡ると、グループCやJGTCにも使われたトヨタ「3S-G」の潜在能力は非常に高かったし、WRCで活躍したのち、スーパーGTマシンに搭載されているスバル「EJ20」といった名機もあるからだ。



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そして、チューニングの可能性まで含めて考えると、史上最強と思えるのが三菱「4G63」だ。DOHCターボ版の登場は、1987年のギャランVR-4で、同車によるWRC初優勝の原動力となった名機中の名機である。



4G63エンジンのボア×ストロークは85.0mm×88.0mm。わずかにロングストロークなことから想像できるように、トルク重視のキャラクターで、鋳鉄ブロックを採用していたことでハードな使われ方をしても耐えうるタフさも魅力だった。これは設計の古さからくるオーバークオリティではあるが、それこそがチューニングベースとして見たときの4G63の魅力といえるだろう。



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初代から9代目までのランサーエボリューションに搭載されたことも、4G63エンジンの進化につながった。進化の度合いは最初と最後のランエボでエンジンスペックを比較すれば一目瞭然だ。



1992年:初代ランサーエボリューション搭載スペック



最高出力:184kW(250馬力)/6000rpm
最大トルク:309Nm(31.5kg-m)/3000rpm



2006年:ランサーエボリューションIX MR搭載スペック



最高出力:206kW(280馬力)/6500rpm
最大トルク:407Nm(41.5kg-m)/3000rpm



最高出力については280馬力規制が残っている時代だったので、ランサーエボリューションIVの時代から変わらなかったのだが、そのぶん最大トルクをどんどん豊かにしていったのが4G63の進化を示している。



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なにしろランサーエボリューションの最初と最後でトルクを見比べると、10kg-mも太くなっているのだから驚く。

排気量を変えずに、軽自動車のターボエンジン相当のトルクを増やしているということなのだ。これこそが、4G63の優れた潜在能力を示している。



名機を気軽に楽しめる快速SUVがある

そんな4G63・DOHCターボエンジンは、ランサーエボリューション専用ではなかった。折に触れて、三菱は4G63の水平展開を試みていた。国産最強2リッターエンジンの価値を最大限に利用しようとしていたのだ。



そうした4G63搭載モデルの中にSUVがあった。それが2002年6月に誕生したエアトレック・ターボRである。エアトレック自体は2001年6月に誕生したクロスオーバーSUVで、現在でいうアウトランダーのルーツとなったモデルだ。



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エアトレック・ターボRのトランスミッションは、シーケンシャル操作でマニュアル変速できる5速AT、駆動方式はビスカスLSD付きセンターデフ方式のフルタイム4WDとなっていた。



そのエンジンスペックは以下のとおり。



最高出力:177kW(240馬力)/5500rpm
最大トルク:343Nm(35.0kg-m)/2500-4000rpm



この数値からは4G63のチャームポイントであるフラットトルクを、SUVというキャラクターに合わせて伸ばしていることが見て取れる。また、最高出力は抑え気味になっているように見えるが、これはターボチャージャーのノズル径を絞って、レスポンス重視のセッティングとしているため。

ランサーエボリューションVIIと同じエアクリーナーを使っていることからもわかるように、けっしてパワーダウン版を用意したわけではなく、SUVに適した4G63にアップデートした結果といえる。



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そんなエアトレック・ターボRはいまでも中古車市場で見つけることができる。そもそもレア車といえるので、それほど多くが流通しているわけではないが、車両本体価格が70万円前後となっているのは、新車価格が約230万円だったことを考えると妥当であるし、4G63ターボを載せているという中身を考えるとお買い得にも思えてくる。



もっとも、SUVにランエボのエンジンを載せたと聞くと、シャシー性能が追いつかないクルマに仕上がっているのではないか、という疑問も浮かんでくるかもしれない。じつは、筆者は2002年にエアトレック・ターボRが登場した際のメディア向け試乗会に参加して、いまはなき某誌に試乗記を寄稿したことがある。



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その原稿からエアトレック・ターボRの生々しい印象を伝える部分を紹介しよう。



アクセルを踏み込むと3500rpmからブーストが正圧領域に入り、モリモリとトルクが出てくる。ランエボよりも小さいタービンを採用したことでピークパワーこそ劣っているが、ブーストのかかりはじめの領域では、エアトレックに分があるといっていい。たとえば高速での追い越し加速ならばランエボをわずかに凌ぐだろう。



ボディはターボエンジンの搭載にあわせて全車的に剛性アップが計られているというし、ブレーキもフロントに2ポットキャリパー(競技ベースのランエボRSと同じもの)を採用するほど。峠を攻めるキャラクターではないが、ガンガン走ることは許容してくれるレベルだ。



高速道路を走るなら、ランエボもエアトレックも変わらない。

むしろタイヤやサスペンションなど足まわりのちがいでエアトレックのほうが乗り心地に優れ、快適なくらいだ。さらにいえば燃料タンク容量はランエボが48リットルなのに対して、エアトレックは60リットルもある。これもアドバンテージだ。



いかがだろうか。



たしかに当時のランエボには電子制御4WDが採用され、ギュンギュンに曲がる4WDになっていたので、駆動系を含めて考えると走行性能には明らかに差はあったが、エアトレックにしても4G63の搭載にあたって、ボディやシャーシはそれなりに引き締められていたので、パワフルなエンジンに翻弄されるようなことはなかったと記憶している。



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20年近く前のクルマではあるが、SUVがメインストリームとなっている今だからこそ、三菱の先見性も含めて、エアトレック・ターボRに最注目してみるにもおもしろい。

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