この記事をまとめると
■いま国内で売れているクルマのほとんどがAT車だ■しかしMT車を好む人も健在で、力を入れているメーカーもある
■MT車のうち人気モデルや、今後登場するとみられるクルマについて解説する
MT車好きはまだまだ健在!
今はハイブリッドなどモーター駆動を併用する車種が増えた影響もあり、以前に比べてMT(マニュアルトランスミッション)車の車種数が減った。国内販売ランキングの上位に位置するホンダN-BOX、スズキ・スペーシア、日産ノート、トヨタ・ルーミーなども、AT(自動変速機)のみを装着してMTは選べない。これに伴ってMT車の売れ行きも下がり、今では乗用車全体の1~2%だ。
しかし運転免許統計によると、2021年に第一種普通運転免許を取得したドライバーのうち、AT限定の比率は71%であった。つまり残りの29%はMT車を運転できる。1991年にAT限定免許が創設された影響もあり、その後にAT車の販売比率が急増したのは確かだが、MT車を希望するユーザーが皆無になったわけではない。
その意味で今のMT車の品ぞろえは、MT車の需要を下まわる状況になっている。表現を変えれば、MT車が貴重な存在になった。
好調に売られているMT車として筆頭に挙がるのは、2ドア、あるいは3ドアのクーペボディを備えたスポーツカーだ。マツダ・ロードスターは国内販売総数の70%以上、先代 日産フェアレディZも約60%がMT車だった。スポーツカーは運転を楽しむ目的で購入するカテゴリーだから、変速操作を積極的に行えるMT車が売れ行きを伸ばすのは納得できる。
今後MTで登場するとみられるモデルも
またスズキ・スイフトスポーツも、MT比率が約60%と高い。コンパクトな5ドアハッチバックだが、専用の1.4リッターターボエンジンを搭載して、サスペンションのパーツには名門のモンロー製を使う。価格は約200万円と割安だが、本物指向のスポーツモデルとあって、6速MTで乗りたいユーザーに人気だ。販売も好調で、スイフト全体の50%以上をスポーツが占める。
ホンダ・シビックも6速MT比率が30%に達する。この背景にあるのは、MTを選べる車種がスポーツカーに偏っていることだ。マツダ車は6速MTをマツダ2、マツダ3、CX-30、CX-5など幅広い車種に設定するが、それ以外のメーカーでは、MTを選べる実用性に優れた車種は少ない。

その点でシビックは高い実用性を備えるため、MTとの両立を求めるユーザーに歓迎された。シビックはことさらに高性能をアピールせず、日常的に上質な運転を楽しめて、なおかつMTを選べる。このような車種は、今の日本車では大幅に限られるから、シビックが人気を高めた。
既に登場した新型のMT車としては、新しいフェアレディZが注目される。トヨタ・スープラRZも、マイナーチェンジを受けた時に6速MTを加えた。

これから発売される車種としては、直近ではシビックタイプRがある。さらに2022年の末から2023年に掛けてフルモデルチェンジを受ける次期スイフトスポーツ、後輪駆動に切り替わるマツダ6も6速MTを設定するだろう。