この記事をまとめると
■ハリウッドの元映画監督が「スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスLLC」を設立■モータースポーツ活動をするなか2015年には初の市販車として「SCG003」を発表
■ロードモデル、サーキット走行用モデル、レースカーの3つのバリエーションを用意する
映画監督からスーパーカーメーカーの創業者に転身
「スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスLLC」。彼らの名前、そしてそのイニシャルであるSCGの名は、ここ数年モータースポーツの場のみならず、ハイパーカーの世界でも頻繁に耳にするようになった。同社を率いるジェームス・グリッケンハウス氏は、かつてはハリウッドで多くの映画の監督、脚本を担当するなど自動車の世界とは無縁の人物だったが、2004年には新たにこのSCGを設立。
筆者が氏と初めて会ったのは2006年9月、エンツォ・フェラーリをベースに、ピニンファリーナへと製作を依頼したワンオフモデル、「P4/5ピニンファリーナ」の取材でフランスのパリ郊外にあるモルトフォンテーン自動車研究センター(CERAM)を訪れたときのことだった。
この年のペブルビーチ・コンクールデレガンスでワールドプレミアを果たし、その後9月のパリ・サロンに出品されることが決定していたP4/5ピニンファリーナ。そのわずかな期間に、特別にその取材を許可してくれるというのだ。パリに来るかの誘いに、イエス以外の答えはなかった。

このP4/5は、グリッケンハウス氏が所有するフェラーリ412Pのイメージをもとに、現代の最新技術を用いて製作されたものだったが、ここからSCGの本格的なハイパーカー作りはスタートする。
公道仕様・サーキット仕様・レーシングカーの3モデルを用意
ここで紹介する「SCG003」は、そのファーストモデルともいえるもので、デザイナーは元ピニンファリーナで、現在ではイタリアでグランスタジオという独立したデザインスタジオで働く、パオロ・ガレラが率いるチームが内外装を担当している。発表は2013年のことで、この時は「P33」の車名を掲げていたが、2015年のジュネーブでモーターショー・デビューを飾った時にそれは「SCG003」へと改められた。

SCG003の特長は、ひとつのシャシーでロードモデルの「ストラダーレ」、よりサーキット走行にフォーカスした「コンペティツィオーネストラダーレ」、そしてレース仕様の「コンペティツィオーネ」の3モデルに対応していること。
搭載エンジンは、コンペティツィオーネがホンダ製の3.5リッターV型6気筒ツインターボとなるほかは、BMW製の4.4リッターV型8気筒ツインターボを搭載する。ミッションはコンペティツィオーネに6速シーケンシャルが、それ以外の2モデルには、7速のDCTが与えられる。

さらに、優れた軽量性と空力特性もこのSCG003では見逃せない特長だ。

SCGでは、その後もニューモデルの開発に積極的で、「SCG004」、「SCGブーツ」、「SCG007」、「SGC008キットカー」などが現在販売されている。なかでもSCG007は、2021年からスタートした、それまでのLMP1レギュレーションに変わる、新しいハイパーカー・レギュレーションに認証され、「SCG007 LMH」へと進化。今年のル・マン24時間レースでは、トヨタ勢に続いて、3位と4位でフィニッシュする健闘ぶりを見せている。