この記事をまとめると
■2010年に登場したホンダCR-Zの魅力に迫る



■ハイブリッドシステムを搭載したスポーツカーとして注目を集めた



■インサイトやCR-Xについても解説



エコとスポーツカーを両立!

ちょっと古い国産スポーツカーの人気が高まるなか、あまり注目を集めていないのがCR-Z。



2010年にホンダが新たな時代のスポーツカーとして発表したハイブリッドスポーツカーですが販売は成功したとはいえませんでした。



しかし、CR-Zにまったく魅力がないとは思えません。

今回はCR-Zを振り返り、どんなクルマだったのか、また魅力はなかったのかを検証します。



CR-Xの再来? ホンダが世に出したハイブリッドスポーツ

2010年に登場したCR-Zは、その当時、ホンダが次の時代に向けたスポーツカーを提案することをテーマに開発がスタート。開発が始まった当初はハイブリッド車となることは想定していなく「21世紀のCR-Xを作ろう」との社内グループが動き始めたことがCR-Z誕生のきっかけとなりました。



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開発が進むにつれ、ハイブリッド技術を取り入れた環境に優しく、しかも速いハイブリッド・スポーツカーを作ろうと発展していったそうです。



デビューした2010年には日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなどエコとスポーツカーを両立したことで話題を集めましたが販売的には成功したとはいえず、発売開始から生産・販売が終了した2017年1月までの累計販売台数は4万台弱。



残念ながらモデルチェンジは行われず、1代でブランドが消滅してしまいました。



そんなCR-Zですが、このクルマにしかない魅力を多数備えていたのも事実。そんな魅力的な部分を取り上げていきます。



低く、短く、広いスタイリング

CR-Zの特徴といえばロー&ワイドなスポーツカーらしいフォルム。フェンダーが大きく張り出し全長も短くおさえられたエクステリアデザインは「官能的」と評する自動車評論家もいたほど魅力的でした。



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自動車ファンからもCR-Zのスタイリングは好評を得ましたが、それは1980年代に大きな人気を博したCR-Xを思い浮かべたからかもしれません。



とくにリヤまわりのハイデッキなデザインや2代目CR-Xにも装着されていたエクストラウインドウが一世を風靡したFFライトウエイトスポーツを彷彿させました。



ただ、レトロなデザインかといわれればそんなことはなくむしろモダンな造形でした。サイドウインドウの造形やキャラクターラインはCR-Xとはまったく別物。

シャープで先進的なイメージを印象づけています。



1.5リッター+モーターを組み合わせたパワーユニット

CR-Zに搭載されたのは1.5リッターエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドユニット。低燃費を実現しつつ2リッター車なみの加速を実現したこのユニットは、2代目インサイトに搭載されているものをベースにしているものの、スポーツカーらしい走行性能を得るためさまざまな改良が施されています。



モーターに組み合わされるエンジンはLEA-MF6型1.5リッター直4。インサイト搭載の1.3リッターエンジンからストロークを延長し排気量を拡大したほか、SOHCのまま4バルブ化。最高出力84馬力(CVT仕様は83馬力)を実現しました。



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燃費性能を重視したインサイトには全気筒のバルブ作動を休止する機能が備わっていましたが、スポーツカーらしいエンジンフィールを重視するため採用はなし。ただし、低回転時には吸気バルブをひとつ閉じる1バルブ休止VTECを装備しました。



ただエンジンと組み合わせるモーターは最高出力10kW、最大トルク78Nmと2代目インサイトと違いはありません。また駆動用バッテリーもインサイトと同じニッケル水素バッテリーを搭載していました。



しかし、2012年に行われたマイナーチェンジでハイブリッド車初となるリチウムイオンバッテリーにチェンジしたことで電圧が高まり、モーターの出力もアップしています。



パワーユニットに組み合わされたトランスミッションは2種類。ハイブリッドカーには世界で初めて搭載された6速MTとパドルシフト付きCVTで、MTとCVTそれぞれでパワーユニットの出力が異なっています。



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2つのトランスミッションはともに「スポーツ」「ノーマル」「エコ」の3モードドライブシステムが備わっており、エンジンレスポンスや操舵力がモードに合わせて制御されていました。



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スポーツカーらしさにこだわったボディ

パワーユニット同様、CR-Zのプラットフォームはインサイトをベースに開発されました。



ただし、インサイトからホイールベースを縮小しリヤサスペンションまわりにパフォーマンスロッドや補強材を配置するなど、ボディ下面を強化して走行性能を高めています。



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また空力性能を向上させるためボディ下面には整流に効果があるカバーなどのパーツをフロント、ミドル、リヤに装着。専用ドアミラーやフロントガラス周りの雨溝の形状にもこだわり、Cd値0.28のインサイトよりさらに優れた空力性能を実現しました。



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装着されたサスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット式、リヤがトーションビーム式。フロント、リヤともに2代目インサイトと比べて出力がアップしたことで剛性アップを果たしています。



ユーティリティ&装備

CR-Zの運転席に座ると目に飛び込むのがSFチックなメーターパネル。ブルーに発光するスピードメーターは、デジタルで表示される速度計の周りを回転計が取り囲む未来的なもの。



メーターの左右には燃料計や警告灯、燃費計やインフォメーションディスプレイが配置されました。



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また運転席の着座位置はスポーツカーらしくヒップポイントが低く配置されていますが、フロントの左右両ピラーの構造を工夫したことなどでかなり広い視界が備わっています。



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CR-Zにはリヤシートも配されていますが、大人が座るのはかなり厳しいタイトな空間。実質は荷物置きとして利用するしかないスペースでした。



ただリヤまわりの形状から見えにくそうな後方視界は2代目CR-X同様、エクストラウインドウが装備されていることもあり、けして悪くはありません。



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CR-Zの装備で気になるのが保温・保冷機能がついたグローブボックス。内部にエアコンの風を通す設計となっていることで、飲み物を冷やすことや温めることができたのです。



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3ドアハッチバックのスポーツカーでバッテリーを床下に搭載していることでラゲッジスペースはミニマム。ただ、2人の乗員がクルマで旅行する分の荷物は収納可能な214リットルでした。



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他モデルの影響を受けたホンダCR-Z

ベースとなった2代目インサイトとは

2009年に登場した2代目インサイトは、ハイブリッド車のパイオニアといえるプリウス対抗馬としてデビュー。プリウスと比べてリーズナブルな価格で販売したこともあり、登場後は月間販売台数1位になるなど、すぐに人気モデルとなりました。



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ボディバリエーションは5ドア・ハッチバックのみ、プラットフォームはフィットやシビックを流用した専用設計としましたが、センタータンクレイアウトを採用するフィットとは違い、燃料タンクをリヤシート下に配置しています。



パワーユニットは1.3リッターエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドユニットを搭載。低速走行時はEV走行、加速時はエンジン走行をモーターがアシスト、高速走行時はエンジンのみ作動とプリウスが搭載するTHSよりシンプルな構造でしたが、その分、コストダウンが可能でした。



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2代目インサイトは販売から2年間ほどは好調な販売を続けましたが、3代目プリウスに対して徐々に劣勢となり、マイナーチェンジでCR-Zに搭載されている1.5リッター+モーターのハイブリッドユニットを搭載する「エクスクルーシブ」などを追加しますが、デビュー時ほどの売れ行きを取り戻すことなく2014年に販売終了。



その後、2018年にシビックをベースとした3代目が登場しますが、国内仕様は今年、生産が終了となりました。



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CR-Zのルーツ? 歴代CR-X

CR-Zのデザインやコンセプトに大きな影響を与えたといえるCR-Xは1983年にデビューした初代から、2代目、さらに大きくコンセプトを変えたCR-Xデルソルへとモデルチェンジされていきました。



FFライトウエイトスポーツとして大きな人気を集めた歴代CR-Xの歩みを振り返っていきましょう。
初代(1983~1987年)
ボディサイズ:全長3675mm×全幅1625mm×全高1290mm,ホイールベース2200mm



1980年代にシビックの兄弟車として販売されていたバラードの2ドアクーペとして登場した初代CR-X。

車名はバラードスポーツCR-Xとして販売されていました。



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元々、アメリカ市場で販売することを目指したコミューターとして開発されたためか、デビュー時のキャッチフレーズは “デュエットクルーザー”。ホンダ自身はスポーツカーというよりスペシャリティカーとしてのイメージを打ち出していました。



しかし自動車ファンは新世代のライトウエイトスポーツカーだと熱狂的に受け入れ、メディアは夢中になってサーキットなどでAE86などとラップタイムを比較しました。



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デビュー時には1.5リッターと1.3リッターエンジンをラインアップしていましたが、1984年には最高出力135馬力を発揮するZC型1.6リッターDOHCエンジンを搭載する「Si」を追加。ボンネットにパワーバルジを設けたことやリヤスポイラーを標準装備したことが他のグレードとの違いとなります。



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1985年のマイナーチェンジでセミリトラクタブルヘッドライトを固定式にチェンジ。バンパーなどのデザインも変更されました。
2代目(1987~1992年)
ボディサイズ:全長3800mm×全幅1675mm×全高1270mm、ホイールベース2300mm



車名から“バラード”が取れ、CR-Xとなった2代目は1987年にデビュー。デザインなどコンセプトは先代から受け継ぎながらボディサイズをやや拡大。ホイールベースも100mm延長し2300mmとなりました。



キープコンセプトとなったエクステリアデザインでしたが、開放感を演出することを目的にルーフからリヤエンドまでガラスで覆われたグラストップを採用し、後方視界を確保するためエクストラウインドウを装着するなど攻めたデザインとなっています。



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プラットフォームを共有する4代目シビック同様、フロント、リヤともにダブルウイッシュボーンサスペンションを装着。初代と比べ操縦安定性が大きく向上しました。



パワーユニットは1.5リッターと1.6リッターDOHCエンジンをラインアップしてデビューしましたが、1989年に最高出力160馬力を発揮する1.6リッター直4VTECエンジンを搭載した「SiR」を追加。



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さらに走行性能を高め、初代を上回る人気と販売台数を記録しました。
3代目(1992~1999年)
ボディサイズ:全長3995mm×全幅1695mm×全校1255mm、ホイールベース2370mm



ライトウエイトスポーツ随一の人気を得ていた2代目の後を受け1992年に登場した3代目は初代、2代目と大きくコンセプトを変えてデビュー。



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CR-Xデルソルと名付けられた3代目は当時、ユーノス(マツダ)・ロードスターが世界的に人気を得ていたことも影響したのか、タルガトップを備えたオープンカーとなったのです。



ロードスターとは違いフルオープンではありませんでしたが、世界初となる電動格納式ハードトップを備え、2代目同様、1.6リッターVTECエンジンを用意するなど話題性は豊富なモデルでしたが、歴代CR-Xファンからは酷評を受け人気は一気に低迷。結果的にブランド消滅を向えることになりました。



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このCR-Xデルソルに筆者も数年乗っていましたが、電動格納式ハードトップの開閉動作は非常に遅く購入後、しばらくするとオープンにすることをためらうようになったのを覚えています。



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ただ、走行性能は優れており、とくに先代モデルと比べてサスペンションストロークが長くなってことで、乗り心地が向上したことが印象的でした。



人気? 不人気? CR-Zの中古相場

CR-Zの中古車相場は執筆時で30~455万円。価格に大きな差がありますが300万円を超える車両はすべて無限が手掛けた300台限定販売のコンプリートカー「MUGEN RZ」。走行距離が1万km以下の車両には450万円を超える価格が付けられていました。



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この「MUGEN RZ」を除くと価格が高いモデルは走行距離が5万km以下で、高年式の車両が210~240万円。リチウムイオンバッテリーを搭載した2012年以降のモデルは70万円から、フロントフェイスなど意匠チェンジなどをおこなった2015年8月以降のモデルでも130万円から販売されているなど、比較的手に入れやすい価格帯で販売されています。



ちょっと古い国産スポーツカーの価格が上がり続けている現在、CR-Zの買い時はいまかもしれません。



まとめ

CR-Zを振り返ると、けっこう魅力的なところが多いことがわかりました。ただ、スポーツカーとして“尖った”箇所が見当たりません。そこが人気を得ることができなかった理由ともいえます。



とはいえ、いまだに貴重なハイブリッドスポーツとしてモーター特有の加速を楽しめることや、なによりスタイリッシュなフォルムを備えているのも事実。



リーズナブルに購入できれば、買って後悔しない1台といえるでしょう。

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