【M&Aリブート】前田建設のインフロニアHD、「総合インフラサービス企業」に変身を期して大型買収を連発

準大手ゼネコンの前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングス(HD)は近年、建設業界で最も注目される存在だ。

「脱請負」を掲げ、建築・土木の施工だけでなく、道路や上下水道などの社会インフラの企画・投資から維持管理・運営までを担う「総合インフラサービス企業」に変身を目指している。

その手立てが積極的なM&A。今や業界再編の台風の目ともなっている。

「水ing」を買収、水インフラ強化へ

インフロニアは4月半ば、水処理プラント大手の水ing(東京都港区)を912億円で買収すると発表した。荏原、日揮ホールディングス、三菱商事の3社が3分の1ずつ保有する株式のすべてを7月1日付で取得する。

持ち株会社であるインフロニアは現在、傘下に主要事業会社として前田建設工業をはじめ、前田道路、前田製作所、日本風力開発、三井住友建設(アルソシア建設に10月1日に社名変更)を置く。ここに今回、水ingが新たに加わる。

買収の狙いは、コンセッション(民間による公共施設の運営受託)市場の拡大を見据え、上下水道施設の設計・建設、機械設備の導入から維持管理・運営までを一体的に担う体制を整えることにある。

こうした水処理のエンジニアリング業務で、水ingはメタウォーターに次ぐ2番手に位置する。売上高は829億円(2025年3月期)。施設の運転管理実績は国内300カ所以上という。

水ingは元々、荏原の水処理部門が統合して2009年に設立。翌2010年に日揮、三菱商事が資本参加していた。

インフロニアを設立、「脱請負」に注力

インフロニアの中核企業である前田建設が「脱請負」に経営のかじを切り始めたのは2000年代初頭にさかのぼる。

【M&Aリブート】前田建設のインフロニアHD、「総合インフラサービス企業」に変身を期して大型買収を連発
前田建設工業の工事看板(都内で)

発注者から建設工事を受注する請負ビジネスは元来、景気や公共投資に左右されやすいうえ、当時はバブル崩壊後の“建設冬の時代”。

「脱請負」で自ら需要をつくり出し、収益機会を広げる戦略に打って出たのだ。

少子高齢化による自治体の財源不足や担い手不足が進む中、老朽化するインフラや公共サービスの保持が難しくなりつつあることが背景に挙げられる。「総合インフラサービス企業」を旗印に、こうした社会課題の解決を商機に結び付けようというわけだ。

だが、前田建設単独では経営資源に限りがある。前田建設、舗装大手の前田道路、建設・産業機械の前田製作所のグループ上場3社が経営統合し、2021年10月に発足したのがインフロニア。脱請負とこれに伴う成長加速に向けてアクセルを踏み込んだ。

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インフロニアHD傘下の前田道路(東京・大崎)

2000億円買収で再エネ分野に本格展開

建設業界では持ち株会社を設立する例はあまりない。新生・インフロニアとして最初の一手は2022年、海洋土木大手で20%を出資していた東洋建設の買収。

約580億円を投じる大型案件だったが、任天堂創業家の資産運用会社が対抗買収者として出現する予期しない展開となり、TOB(株式公開買い付け)不成立の苦渋を味わった。

次に照準を合わせたのが風力発電最大手の日本風力開発。2024年1月、米投資ファンドのベインキャピタルから約2030億円で買収した。インフロニアの当時の時価総額の約半分に相当する巨費で、同社はもちろん、建設業界全体を見回しても過去最大のM&Aだった。

資金面を含めてプロジェクトの上流から下流までインフラ全般の運営推進にかかわることを成長戦略の柱と位置付ける中で、ターゲットの1つが再生可能エネルギー分野。

失敗に終わった東洋建設の買収に乗り出したのも海上分野の技術・ノウハウを取り込み、港湾インフラのコンセッション事業や、洋上風力発電などの再生可能エネルギー事業の展開に弾みをつけるのがそもそもの目的だ。

三井住友建設を取り込み、大手5社の背中も

そして昨年9月には同業の準大手ゼネコン、三井住友建設をTOBで子会社化した(12月に完全子会社化)。買収総額は940億円。

三井住友建設は大型マンション建築、コンクリート橋梁、アジアでのODA(政府開発援助)工事などを強みとする。同社の子会社化により、異なる得意分野を補完し、あらゆるインフラ分野で競争力の強化などを目指している。

2025年3月期の売上高はインフロニア8475億円、三井住友建設4630億円。両社合わせて1.3兆円と、スーパーゼネコンと呼ばれる鹿島、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店の大手5社に次ぐ規模で、準大手勢では断トツだ。

実は、主要ゼネコン同士のM&Aは2013年、ハザマと安藤建設が合併し、「安藤ハザマ」を発足して以来12年ぶり。

これに触発されるかのように昨年は、大成建設がインフロニアが取り逃がす形となっていた東洋建設を1600億円で傘下に収めたことが記憶に新しい(買収発表はインフロニア5月、大成建設8月)。

「インフラ運営」の売上比率は3%程度

インフロニアの2026年3月期業績(国際会計基準)は32.7%増の1兆1248億円、営業利益60.8%増の758億円。同社発足直後の22年3月期に比べると、一連の大型買収で売上高は6割以上膨らんだ。

では部門別の売上高構成はどうか。建築4977億円、土木2650億円、舗装2822億円、機械395億円、インフラ運営319億円、その他30億円。このうちインフラ運営の売上比率は3%程度にとどまるが、利益貢献額は約51億円という。

【M&Aリブート】前田建設のインフロニアHD、「総合インフラサービス企業」に変身を期して大型買収を連発

産業界でも有数の“ストロングバイヤー”

足元の2027年3月期は売上高21.4%増の1兆3660億円、営業利益2.6%増の778億円を見込む。今期は昨年9月に子会社化した三井住友建設が通期でフルに寄与するほか、7月に買収完了する水ingの業績(当初予想に含まず)も加わる。

インフロニアは建設業界で今、最もM&Aに積極的とされる。実際、一連の大型買収に4000億円近くを投じており、“ストロングバイヤー”として産業界全体でも有数だ。

M&Aを織り交ぜ、基幹の「請負」事業をより強固としつつ、次代の成長を託すインフラ運営を軸とする「非請負」事業との相乗効果をどう最大化していくのか。PMI(買収後の統合プロセス)の巧拙とともに、同社の今後が、がぜん注目される。

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インフロニアHDの沿革

文:M&A Online

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