【2025年小売】コンビニ大再編突入、ドラッグストアとスーパーはビジネス同質化でM&A頻発か

2024年、小売ではドラッグストア業界で大きな動きが出た。イオン子会社でドラッグストアの最大手ウエルシアホールディングスと業界2位のツルハホールディングスが経営統合に向けた協議を開始したからだ。

そのきっかけを生んだのが物言う株主として知られる香港ファンドのオアシス・マネジメント。オアシスはツルハの収益性を課題に挙げ、キャンペーンを展開していた。競合がひしめく中、これから先の日本の人口減少を背景に一店舗あたりの収益低下が避けられず、将来的にドラッグストア業界は大手数社に収れんしていくと主張。上昇やむなしの物流費、人件費などのコストを下げるためにも、経営統合による規模の重要性を訴えていた。

オアシスの提言がどの程度影響したかはわからないが、ウエルシアはツルハと統合する道を歩み始め、ドラッグストア業界の経営の厳しさを知らしめることとなった。

小売業界で加速するM&A、ドラッグストア・スーパーの生き残り戦略

こうした状況は他のドラッグストアも同じ。同一エリアに多店舗展開するドミナント戦略を展開し、調剤薬局との併設、生鮮食品の販売拡大に取り組んでいる。

その中で積極的にM&Aを活用したのがクスリのアオキホールディングスだ。2024年内に6件のスーパーマーケット買収を発表。食品取扱のノウハウの獲得ほか、エリアに見合った店舗改装、品ぞろえを展開していく戦略だ。

スーパーマーケットも状況は厳しい。PB(プライベートブランド)商品の拡大、デリカの拡充、鮮度の高い食材ルートの確保などを進めつつ、ドラッグストア同様にドミナント戦略を掲げて競争優位性を確保しようという動きがある。

M&Aはそれを一気に進める手段として活用され、スケールメリットによる低価格化や店舗投資にも結び付けるための手段として活用された。

広島県を基盤とするイズミによる西友の九州地区全69店舗の取得は、その一例といえるものだ。西友は北海道のスーパー事業をイオン北海道にも譲渡している。

耳目を集めたのは、1月に米スノコから店舗を取得するなど、コンビニの海外M&Aを積極的に行ってきたセブン&アイ・ホールディングス。同社は総合スーパーのイトーヨーカ堂ほかヨークベニマルなどスーパーマーケットなど主力のコンビニ以外の事業の経営権を手放すことを決意した。2024年春からIPO(新規株式上場)を視野に入れた事業整理を行う方針を示した。8月にカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けるなど大きなニュースがあったが、事業整理までの根本をたどればドラッグストアをはじめとした異業種との競争激化がきっかけといえる。

一方、こうした環境下にあって、MBO(経営陣による買収)で非公開化を選んだのがアオキスーパーだ。競争激化とコスト上昇のなかで、持続的な成長を続けることが困難だと判断した。ドラッグストア、スーパーマーケットでは競争環境はさらに激化していくことが予測され、2025年も多数のM&Aが実行されそうだ。

KDDIのローソンTOBは小売の手本に?

その他のコンビニチェーンにも目を向けたい。2024年は、KDDIがローソンのTOBを実施し、三菱商事との折半出資による共同経営に移行した。DX(デジタルトランスフォーメーション)の深化による付加価値の高いサービス提供が不可欠と判断。KDDIのテクノロジーに関する知見や会員基盤を活用して新サービスを開発し、未来のコンビニのスタンダードを築きたいとしている。

業界を越えた競争激化はコンビニも同様で、会員基盤の活用も戦略としては同じ。KDDIと共同開発するサービスが先進的なものならば、他の小売にも大きな影響を与えそうだ。業界最大手のセブン&アイHDについても、買収提案受領後、11月になって創業家によるMBO(経営陣による買収)の計画が明るみになり、その動向にも注目が集まる。

勢いづくリユース業界ではM&A頻発

小売で勢いづいたのはリユース業界だ。中古品に対する消費者の意識変化や物価上昇による生活防衛意識の高まり、環境配慮の観点から先々も市場の成長が予測されている。高級時計やブランドバッグを求めるインバウンド需要の回復も市場拡大を後押ししている。

こうしたなかで、2024年にリユース業界では活発なM&Aが発表された。高級ブランド品の取り扱いに定評のある業界大手のコメ兵ホールディングスが越境EC(電子商取引)の強化と海外展開の加速を目指し3件のM&Aを実施。同様にBuySell Technologiesも商品の買取りと販売チャネルの拡大を目的に2件の買収を実行した。

また、ジュエリーの製造・販売を手がけるヨンドシーホールディングスが中古の高級腕時計販売会社の羅針を買収したことも興味深い。新規商材の獲得を目的にしたM&Aだが、異業種参入はそれだけリユース市場が魅力的であることの証。2025年の動きも注目される。


◎2024年小売業を対象とする主なM&A

順位公表日案件内容取引総額11月11日セブン&アイ・ホールディングスが米スノコからコンビニ・ガソリンスタンド204店舗を取得1457億8700万円27月3日アインホールディングスがインテリア・雑貨店のFrancfrancを子会社化499億7600万円34月2日イオン北海道が西友から北海道のスーパー事業を取得170億円41月5日アオキスーパーがMBOで株式を非公開化107億円510月11日ヨンドシーホールディングスが腕時計販売・買い取りの羅針を子会社化105億4200万円65月13日G-7ホールディングスがエルアイイーエイチ傘下で「業務スーパー」フランチャイズ展開のボン・サンテを子会社化47億3500万円75月9日歯愛メディカルがセブン&アイ・ホールディングス傘下で通販大手のニッセンホールディングスを子会社化41億9900万円82月29日ジェイドグループがファッションECのマガシークを子会社化|NTTドコモと業務提携33億2600万円99月24日ファーマライズホールディングスが経営破綻した寛一商店グループから調剤薬局事業を取得31億円1010月8日ワールドと政投銀の折半出資会社がライトオンをTOBで子会社化20億6700万円

文:M&A Online

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