2025年12月に突如発表された原田勝弘氏のバンダイナムコ退職。
業界関係者やファンからは驚きの声があがるとともに、これまで30年続いてきた「鉄拳」シリーズをはじめとする世界中のプレイヤーたちから、感謝とねぎらいの声が多く寄せられた。
同発表では“ゲーム制作を辞めるわけではない”ということも示唆されていたため、その動向についても様々な憶測が飛び交った。
そんななか、ついに発表された新スタジオ「VS Studio SNK(以下、VSスタジオ)」
渦中の原田勝弘(@Harada_TEKKEN)氏に加え、同スタジオの米盛祐一氏、パートナーである株式会社SNKの小田泰之(@snk_oda)氏にインタビューを行った。
1時間超のインタビューで原田氏が語った「挑戦」と「恩返し」
3D対戦格闘ゲーム「鉄拳」シリーズをはじめ「ソウルキャリバー」シリーズや「ポッ拳」、「サマーレッスン」といった作品に携わってきた原田勝弘氏。
2026年5月1日(金)に東京ビッグサイトで行われた「EVO Japan 2026 presented by Levtech」のステージ上ではゲームクリエイター功労賞を受賞し「無職の原田です」と冗談を交えながら会場を沸かせていた。
そんな氏が水面下で進めていた新スタジオ「VSスタジオ」とは何なのか。
原田氏が「VSスタジオ」に、そしてゲーム業界にかける想いや情熱を1時間以上のロングインタビューで紐解く。
「VSはバーサスだけではない」「SNKさんのビジョンに合致」
― 新スタジオの概要を教えてください
原田氏: 正式名称は「VS Studio SNK(通称: VSスタジオ)」です。
“VS”というのはいろんな意味があって、皆さんバーサスをイメージすると思いますし、もちろんそれで良いんですけど、例えば僕と米盛のルーツは旧ナムコの“VS開発部”という部署だったんですよ。
90年代のVS開発部ってビデオゲームソフト開発部の略称だったんですよね。
そこで生まれたのが殴ったり切ったり、太鼓叩いたりするようなタイトルで、もっとさかのぼれば古き良き日のシューティングゲームを作っていた部署の系譜でもあります。
そんな伝統的な部署からVSって付けた面もありますし、“ヴァンガードスピリッツ”とか開発者目線で言えば“ビジュアルスタジオ”とか。
いろんな良い意味をこめて付けたのが「VSスタジオ」という名前です。
― SNKとの関係性は?
原田氏: SNKさんの中の部署なのかと言われれば違うんですよ。
出資比率などは言えないんですが、独立性が保たれた状態でのSNKさんの子会社であり、そのバックにある財団のグループの一員というか。
そんな感じです。
― SNKとタッグを組んで活動することになった経緯を教えてください
原田氏: 前職を辞めて「さぁどうしよう」と思っていたところで、ありがたいことにさまざまな企業様や個人様からお声がけいただきました。
同世代ということもあって小田さんとはもともと親交があり「将来何か一緒にできたら面白いね」という漠然な話はあったんですが。
さまざまなオファーを頂くなかで、SNKさんの出資元からもビジョンを含めお話いただいて、僕の想いと合致する部分が多く、今回のように実現したという流れです。
「SNKが個人的に好き」「第2の創業のような雰囲気」
― これまでのSNKにはどんな印象を持っていましたか?
原田氏: ゲーム業界に入る前、僕が大学生くらいの時にはNEOGEO(ネオジオ)がドーン!と展開されていました。
個人的に色んなIPやタイトルのファンでしたし、業界に入ってもやはりNEOGEOの印象が強かったですね。
前職でもコラボさせていただきましたし、一ファンとしてSNK好きの皆さんと同じ感覚でいました(笑)
―SNKと関わるようになって印象は変化しましたか?
原田氏: SNKさんって長い歴史があるおかげで、切り取る年代によって見え方が全然違うと思うんです。
今は様々な理由から、老舗のゲームメーカーなのに第2の創業みたいな雰囲気ですよね。
それがご一緒したいなと思った理由の1つでもあります。
会社として今だけではなく、4, 5年先でもなく、ゲーム事業が完全に主軸で、ものすごく先のことまで見据えているというのは確信できたので、そういった理念をもってビデオゲームを作るんだ!という意気を感じています。
― 今後どのように関わっていくのでしょうか?
原田氏: 僕とSNKさんの相性は良いと思っています。
小田さんとも話していたんですが、お互いに似たジャンルを作ってきたように見えて、そのナレッジは違っていることが分かってきました。
僕が培ってきた知識や経験をSNKさんと交換することでシナジーが生まれると思いますし、僕はもちろん小田さんも期待してくださっていると思っています。
― SNKのIPを使ったゲーム開発の可能性もあると?
原田氏: 個人的にSNKさんの好きなIPがたくさんあるというのは事実ですが、じゃあそれで何かを作るかとか、こう絡んでいくということに関して具体的なお話ができる段階ではありません。
またどこかのタイミングでお話できる日は来ると思いますが、僕自身は面白いことができるんじゃないかなと思っています。
「多くの人に支えられてきた」「今は好奇心とワクワク感」
― 「サムライスピリッツ」のアクションRPGや「龍虎の拳」シリーズの新作などに関わることも・・・?
原田氏: どうなんですかね?
小田氏: やります?(笑)
原田氏: 個人的にはあれやりたいこれやりたいという思いもありつつ、SNKさんのものなのであんまり勝手なことは言えないんですが・・・。
今現在、特定の何かに携わっているということは本当に無いですが、昔から雑談レベルでは盛り上がりますけどね(笑)
小田氏: 原田さんは本当に素晴らしいキャリアを持っているので期待値がすごいですし、さまざまなところから多くの要望が来ていると思います。
全て聞くわけにもいかないので、そのあたりはSNKとしてうまくサポートしていけたら良いなとは思っています。
小田氏: これが90年代だったら気軽に色々手を出せてたんでしょうけど、1タイトルの開発で4, 5年とか当たり前の時代なので、なかなか簡単には言えないですね。
― 餓狼伝説CotWでは面白いコラボが次々実現していますよね
原田氏: 実は自社とかグループじゃない、しかも格闘ゲームじゃないIPをゲストとして迎えた初の格闘ゲームって90年代に僕が手掛けていた某タイトルなんですけど。
今となっては当たり前になりつつありますが、僕は全然関係ない他社さんのキャラクターを取り入れるということをやってきた側なので、ほかの格ゲータイトルや、SNKさんの餓狼伝説CotWのゲストもようやくこういうことをやりだしたという安心感というか。
ユーザーの皆さんには心理的抵抗がある人もいるかもしれませんが、だんだん慣れてくると「次は何が出るんだろう」というワクワク感に変わってくる、そんな気がしています。
― では、鉄拳を世界一に導いた経験がSNKとどのようなシナジーを生むと考えられますか?
原田氏: 前職ではすごい色々なものを背負っていたので、自分がチームを率いてやってるんだ!という感じを出していましたけど、実際は本当に多くの人に支えられていました。
いま1人になって、あらためて客観的にそう思えてますし、僕1人がどうということはないと思います。
今までの成功体験に対してもセオリーとか法則は見えていないんですけど、たぶんここはこうだよなという勘みたいなものが自分の心の中の宝としてあると思うのでそこは共有していきたいです。
逆に小田さんからも、もっと色々なお話を聞きたいですし、どちらかというとノウハウやナレッジというより、好奇心やワクワクが強いですね。
この年齢になって感じているこの気持ちはすごい重要だし、意味合いとしても大きいと思います。
― 今後も日本のスタジオには同様の投資が行われる予定ですか?
小田氏: 投資というと仰々しいですが、規模とケースによりますね。
今回の「VSスタジオ」設立にSNKが協力させていただくというのは特例ではあると思います。
しかし、いまSNKの中だけでも非常に多くのプロジェクトが進んでいますし、それぞれの案件で多くのスタジオと協力させていただいています。
そういう形では今後も継続してプロジェクトを進行していきたいとは思っています。
「僕に対戦モノは欠かせないと思う」「シニアクリエイターは宝」
― 「VSスタジオ」ではどんなゲームを作っていきたいと思っていますか?
原田氏: 僕のWikipediaを見てもらえれば分かると思うんですが、これまでVRとか色んなジャンルのゲームに携わってきたんですよね。
ただ、やっぱり得手不得手はありますし、市場やSNKさんから期待されているものが必ずあると思っています。
そういう意味では、やはり僕は人と対戦するものやアクションといった要素は外せないのかなと思いつつ、自分自身もまだまだ追求したいという想いがすごくあるので。
ジャンルを1つに絞るわけではありませんが「対戦モノ」を作りたいなとは思っています。
― 今はそのための環境づくりに奔走していると
原田氏: もちろん若いクリエイターの人にも一緒に参加して作ってもらいたいという想いが強くあります。
ただ一方で、僕は45歳以上のシニアと呼ばれるような世代の開発者が宝だと思っています。
下手したら今年来年で定年を迎えてしまうような人も含めて、もう一度僕のもとに集めて、すごいベテランパワーと若い人の組み合わせで良いものを作れたらな。という構想ではあります。
「原点回帰」「情熱ある仲間を集めたい」
― あらためて「VSスタジオ」の体制や環境について決まっている範囲で教えてください
原田氏: 場所はSNKさんと同じビルの別フロアに構える予定です。
まだできたてほやほやというか絶賛進行中という感じで、僕が実現したいことができるくらいの規模ではあります。
立場上は代表取締役 CEOとなるんですが、できるだけクリエイティブにも足を踏み入れていきたいなと思っているところです。
ここ10年くらいの僕よりはもう少しクリエイティブや開発といった原点に帰って、ゲーム開発に関わっていくことになると思います。
― そこに米盛さんも加わっていると
原田氏: 米盛は1998年に僕の部署に後輩として入社してきました。
新人研修のときに彼が作っていたゲームが良くて絶対あいつをチームに入れよう!って強引に引き込んだ割に僕は何も教えなかったんですけど(笑)
僕のもとで盗みながら仕事を覚えて、20年くらい仕事をしたあと一時は他社に所属していたんですけど、今回の件で退職してもらって一緒にやっているという感じですね。
僕がスタジオの社長で、彼がCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)というかたちです。
米盛氏: 今の説明の通りです(笑)
鉄拳でいうと業務用「鉄拳7」までは開発側のトップにいて、原田さんが全体統括をしていて、という状態でした。
原田氏: 「鉄拳7」のスタッフロールには僕に次いで2番目に名前が載ってます。
― 今はもう右腕のような
原田氏: まさにそうですね。よく言ってましたから。
― ほかの開発スタッフも優秀な方が集まりつつあるのでしょうか?
原田氏: そうですね。
前職を離れると発表をしてからはありがたいことに先輩後輩関係なく皆さんから声をかけてもらえたので、情熱のある仲間を集められたらなと思っています。
「毎日楽しくてしょうがない」「退職発表時はチームで24時間監視」
― あらためて、退職を発表されたときの心境を教えてください
原田氏: 発表したときはすごい煽りとか非難を食らうのかなと覚悟していたんですが、このまま人生を終えたら綺麗だなって思うぐらいファンの皆さんから感謝を伝えてもらえました。
そんなこと言われるんだって正直ビックリしちゃって。
家族との時間を作ったりとか、実は心穏やかな時間を過ごしてきました。
ただ、ありがたいことに多くのオファーを企業様や個人様から受けたり、「VSスタジオ」がかたちになっていくなかで、やっぱり情熱とか好奇心が沸々と湧いてきている実感もあります。
今は毎日少しずつ色んなことが進んでいるので、楽しくてしょうがないですね。
正直言うと人生の残り時間をすごい意識していたんですけど、今はとにかくみんなと長生きしたいなと(笑)
早くいろんなことをやりたいですね。
― もう少し厳しい意見がくると予想していました?
原田氏: はい!(笑)
特に海外の方はズバっと言う方も多いですし、実は炎上対策というわけではないですが、僕の退職発表時には6人くらいでチームを組んで24時間監視みたいなこともしてたんです。
AIにSNSとか記事の反応とかのコメントも全て拾わせて、完全な統計を取っていたんですが、皆さんが一斉に感謝コメントを送って頂いたおかげで、早々に警戒解除!みたいな流れでした。
こんなありがたいコメントで31年間やってきたことから引退して良いのかって思ったくらいでしたが、とても励みになりましたし、皆さんに恩返ししたいなと思いました。
― 退職理由には“開発者として残された時間”を挙げられていました
原田氏: 別にリセットしたかったというわけでは全くありません。
ただ、仕事を積み重ねてきたことによって社会人としてのポジションや責任感、求められるものというのは一定のかたちが出来上がっていて。
じゃあそれを50歳を過ぎた年齢で仕切り直したいと思っても普通それは通じないですよね。
その立場にあぐらをかくのではなく、一度自分の実績を横に置いておいて、まだ肉体的にも精神的にもやれるうちにやろうと。
日本人男性の平均寿命って81歳くらいで、よく考えたらいまの倍も生きられないんです。
しかも健康寿命で言うともっと短くて、逆算すると残された時間ってあんまりないなと。
最後にこれだけはやりたいんだよなという想いを実現するために、いまこのような結果になっています。
私の後に続く人に長く働ける環境を作りたいというのもありますし。
― 独立したぶん、今後SNSでの発信も増えていくのでしょうか
原田氏: 実は僕のXを見てもらえると分かるんですけど、僕からの自発的な一方通行の発信ってそこまでなくて、多くはユーザーからの問いかけに答えるかたちで発信しているんです。
コミュニティやマーケットにいる一般の方の温度感をレポートやデータを見て感じれば良いや、というのは僕は違うと思っています。
反響やバズり方の数字だけを見て物事を判断するというのは僕には合わないなと。
多数派の意見はもちろんですが、たまに少数派の意見も心に刺さることがあるんですよね。
それがゲーム制作のヒントになることもあるので、手厳しい言葉も含めて刺激を受けつつ、「だったらもうちょっとやってやろう」みたいな気持ちになれたりもするので。
以前ほどの頻度かは分からないですが、どのようなかたちでもコミュニティと接触していきたいなとは思っています。
― 今回の「VSスタジオ」発表ではどんな反応があると思いますか?
原田氏: 一般の方の反応は予想することしかできなくて、「またお前か!」みたいなのはあると思いますね(笑)
実は、業界内にいるまだ情熱を失っていないベテランの人とか、もう1回真剣にものづくりをやってみたいなって人に問いかけたいという裏テーマもあるんです。
そんな方々に届いて反応があることを期待していますし、それで一緒にやれる人が増えたら嬉しいなと思ってますね。
「あと20年しかない」「定年を待つのは違うかなと」
― 前職では「VSスタジオ」がやりたいから退職に向けて動いていたという時系列なんでしょうか?
原田氏: ゲームを作りたい、ゲームに携わりたいという気持ちは全くブレていません。
ただ、一般論としてはやはり同じ組織で積み上げて根が生えると、自分の意思とは関係なく求められることが増えてくるんですよね。
人生の残り時間との兼ね合いでみたとき、今の荷物を一度置かせていただいて、新しい荷物を自分で選んでどこまでやれるのかという挑戦がしたかった部分があります。
― ゲームクリエイター独立の前例は少なくないですが、やはり作り手の性(さが)なんですかね?
原田氏: そこの考えは少し他の人と違うかもしれません。
以前から小田さんとも「僕が小田さんチームに入ったらこういうことができるかもね」といった開発チームコラボみたいな話を、今回の件とは全く関係ない雑談でしていたんです。
なので、他の方々の独立とは少し違って、SNKさんとかそのバックの方々の協力も得られる状態で存在しているというような。
社長業としてスタジオがやりたいわけではないので、できるだけお力も借りながら開発に集中できる環境として、いまのかたちに落ち着きました。
― 具体的にいつ頃から考え始めるように?
原田氏: 僕はけっこう統計とか好きなんですけど、日本人男性の平均寿命が80歳と少しだって思うと、40歳超えたあたりで「いやぁもう半分も生きられるとは限らないんだ」ってゾッとしちゃって(笑)
しかも健康なのはあと20年・・・?とか思うと、しょうもない話なんですけど、真剣に思いましたね。
― そういうのは逆算して計画するんですか?
原田氏: そうですね。
今が10年前に思っていた10年後かと聞かれると、誰しもズレるじゃないですか。
ゲーム業界は本当にそうで、1タイトルに4, 5年かかるようになってから「あれ?これは・・・?」って思い始めましたね
それで慌てたというよりは、自分がやりたいことをやるのに定年退職を待ってからというのは違うんじゃないかと。
そう思ったことは自分の中で大きかったですね。
「みんなが幸せなゲームづくりを」「規模感は映画10個分くらい?」
― 売れるゲームと作りたいゲームが必ずしも一致しないこともありそうですよね
原田氏: これはちょっと面白くて、僕も以前はそう思っていたんです。
ただ、年の功というか、唯一経験値だと思うんですけど、作りたいもんだけ作れれば良いというわけでもないなと。
ゲーム開発って色んな人が関わってるわけじゃないですか。
一緒に作ってくれる人も幸せであってほしいし、遊ぶ人も幸せであってほしいし、それで儲ける人や株主といった関係者も、幸せであるに越したことはないわけです。
これをどうバランス取るかということも含めて、作る面白さの1個だと思ってるんです。
きっと20代の頃はできなかったでしょうけど、今はそこもちゃんと見れるんじゃないかという裏付けのもとで走り出している部分もあります。
― 今後手掛けるタイトルの規模感はどれくらいになるのでしょうか
原田氏: あんまり言うと金額感もバレるから言えないしな・・・。
小田氏: 映画10個くらいで良いんじゃない?(笑)
原田氏: お~新しいな(笑)
僕らの会社の理念は“Beyond tradition, crafted to perfection.(伝統に挑み、極限を創る)”なんです。
要はできるだけ良いもの作ろうぜって感じで。
今はインディーズでもすごい支持されて大きな賞をもらうタイトルが出てきてるじゃないですか。
あれを見るとAAAとかインディーズって区分けはもう無いなと。
どれだけ作り手が本当に好きで本気で作っているかというのが伝わる時代だと思っているので、そこで勝負したいなと思っています。
「複雑で難しい時代」「価値観のアップデートも重要」
― 世界でヒットさせるためにどう戦っていきますか?
原田氏: 難しいですね・・・。
いまここにいる3人が本格的にゲーム開発を始めたのは1990年代です。
1990年代ってとてもおもしろい時期で、良いゲームを作れば売れるっていうピュアな時代でもあったと思うんです。
(今の)ゲームのワールドワイドの売れ方っていうのは単に良いゲームというだけではなく、マーケティングやプロモーションといった届け方の上手さでも差がつきますし、一概にこうすれば絶対売れるんだということは言えないくらい複雑で難しい時代になっています。
ただ、やはりモノにある程度芯が通ってないと売れないことも間違いないですよね。
このネットワーク時代にゼロから作り始めるならどうすれば良いんだろうというのは、みんなと知恵を出しながら再構築しているところです。
今までも自分ひとりの力で作ってきたわけではないので、SNKさんとも一緒に模索していければと思っています。
― これまでの経験を生かせることも多そうです
原田氏: 僕も仲間たちもそうでしたが、これまでの知識や経験が重要なのは前提としてあります。
一方で、この業界は流れが早いので、今までの成功体験に囚われると新しいテクノロジーに対応できないし、学習もできないんです。
開発というのはもともとテクノロジーなわけですから、今までの経験を土台として持ちつつ、価値観のアップデートや新しい勉強もしていきたいです。
ユーザーに何を求められているのかというのをもう一度見直して作りたいですね。
そのための新しい環境なわけですからね。
― 今のeスポーツ業界についてはどう思っていますか?
原田氏: eスポーツというのはゲーム業界がシステマチックに生み出したものではありません。
我々ゲーム開発者が作ってきたタイトルにファンがついて、ファンたちが自発的にコミュニティを盛り上げて、世界各国で小さな大会がどんどん大きくなって、その流れが大きくなってeスポーツ化という背景があると思っています。
今や20年前には考えられない規模になっていますし、だからこそチャンスはいっぱいあるし、僕自身はいまのeスポーツに対して「いやぁここまで来たか」という気持ちで見ています。
一方で面白いことに課題もたくさんあって、それはコミュニティ側ではなくメーカー側の責任になったりとか。
例えばどのようにコミュニティをサポートしていくのか、といったときに、それは単に金銭面だけではないんです。
コミュニティ側にどのようなアプローチができるかというのは今後の課題だと思っていますし、どんなゲームを作るにしても皆さんとの協力関係は構築していきたいなと思っています。
僕からは、eスポーツは業界というよりコミュニティが大きくなった結果のように見えています。
「本当に良い環境での挑戦」「皆さんに恩返しを」
― 小田さんからみた「VSスタジオ」への期待感を教えてください
小田氏: 具体的に作られるタイトルへの期待はもちろんなんですが、作っていく過程におけるSNKとの関係性がすごく面白くなりそうですよね。
個人的にはそこが一番楽しみです。
基本的に別の会社ではありつつも、交流はかなり密になるんじゃないかなと。
原田氏: 密にしようねという話はしているんです。
正直、小田さんが僕らの会社に役員としていらっしゃるわけでもないですけど、そういうのを置いておいても、お互いにいい刺激になるような関係でいようとは話しています。
小田氏: 弊社にもバンダイナムコさんから転職してきた人もいるわけです。
そういう人たちをちょっと絞りにいってもらおうかなと(笑)
原田氏: それ嫌だろうな!俺せっかく新しいとこ来たのになんでコイツ来るんだよ!って(笑)
喜んでくれる人もいるけどね(笑)
― 最後におふたりから展望やメッセージをお願いします
米盛氏: このまっさらな新しいスタジオで自由に挑戦できるという機会はそうそう無いことなので、この状況を楽しんでゲーム開発をしていきたいと思っています。
ご期待ください!
原田氏: 具体的なタイトルが言えないのにこんな発表するな!って怒られそうですけど、僕は面白いことをしようと思っていますってことだけ発信させていただきました。
「VSスタジオ」は本当にありがたいことにリスクや不安を極力SNKさんたちに吸収していただきつつ、やりたいことに関わる裁量だけを残してもらって。
本当に都合が良いことは自分でも分かっているんですが、せっかく良い環境をいただいたので、ユーザーの皆さん、SNKのファンや社員の方にも、しっかり僕らが貢献できることを示して、最終的にはしっかり恩返ししたいと思っています。
またしばらくできないと思いますが、またみんな忘れた頃くらいに発表ができれば良いなと思います。
原田氏が描く「VSスタジオ」とゲーム業界の未来
現時点で具体的なタイトルや動きこそ見えないものの、何か新しい面白いことが始まっているという熱量は、言葉の節々と表情から感じられた。
ゲーム業界の名クリエイターに名を連ねる原田勝弘氏。
原田氏の右腕として、長年その手腕を振るってきた米盛祐一氏。
原田氏の盟友であり、同じ格闘ゲーム業界で切磋琢磨してきた小田泰之氏。
実績十分の3人がそれぞれの視点から語った「VSスタジオ」への気持ちは、今後の展開に期待せざるを得ない内容であったし、新たな挑戦と思い描く未来には引き込まれる魅力があった。
筆者も静かに、そして情熱を持って「VSスタジオ」の今後に視線を注ぐこととする。


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