「コンプラ時代の反動か」“ダサい・怖い”ヤンキーが再評価される理由…来場者殺到『大ヤンキー展』の中身
「コンプラ時代の反動か」“ダサい・怖い”ヤンキーが再評価される理由…来場者殺到『大ヤンキー展』の中身

かつて「ダサい」「怖い」と距離を置かれてきたヤンキー文化が、いま若い世代を含めて再び注目を集めている。東京・北千住で開催中の体験型イベント「大ヤンキー展」には、若者から中高年まで幅広い世代が来場。

なぜ今、人々はヤンキーに惹かれるのか。

再評価される「ヤンキー文化」の正体

コンプライアンス、ルッキズム、炎上リスク――。

いまは何をするにも、「人にどう見られるか」「どう受け取られるか」を考えるのを避けて通れない時代だ。

そんな窮屈な時代に、あらためて存在感を増しているのが、「ダサい」「怖い」「時代遅れ」と距離を置かれてきた、昭和後期から平成初期にかけてのヤンキー文化である。

もちろん、特攻服や改造バイクに象徴される反社会性が、そのまま肯定されているという単純な話ではない。

では、人々はいま“ヤンキー”のどこに魅力を見いだしているのか。

その背景を探るべく、東京・北千住マルイの「1010PARK」で5月10日まで開催されている体験型展示会「大ヤンキー展」を主催する株式会社E-VENTの代表取締役・増田堅斗さん(27)に話を聞いた。

「ヤンキーが再評価されているのは、単なる懐かしさではなく、その根底にある“何かに抗う感じ”や“自分のカッコよさを貫く感じ”が、今でも人を惹きつけるからだと思います。

ヤンキー文化って、ツッパリのような硬派なものから、ロックンロールに影響を受けたファッションまで、いろんな要素が混ざり合ってできた文化なんです。

だから、見た目だけではなく、精神性や概念の部分が今も残っている。今はコンプライアンスの時代で、自由に振る舞いにくい空気があるからこそ、その過剰さや振り切った感じが新鮮に映るんだと思います。

上の世代には懐かしく、若い世代には漫画や映像を通じた新しいカルチャーとして届く。その両方があるからこそ、今ヤンキーは再びおもしろがられているんじゃないでしょうか」

実際、会場を訪れているのは、当時を懐かしむ世代だけではない。

今年2月、埼玉・大宮マルイで実施された同展では来場者の約半数を40~50代が占めたといい、今回の北千住会場でも40~50代が中心となっている。

一方で、10代から70代まで幅広い世代が足を運び、親子三世代で訪れるケースも珍しくない。四国や北海道など遠方からの来場者もいるという。

前回より約3倍の規模に拡大した今回の展示について、増田さんは「ヤンキーが多い街」という北千住の土地のイメージも企画に重なったと振り返る。

そうした世代を超えた関心はどこから生まれるのか。

増田さんは、「ヤンキー的なもの」が消えたのではなく、時代に応じて「強さ」や「カッコよさ」をめぐる価値基準が変化してきたのだと語る。

「昔と今の違いは、SNSやウェブがあるかどうかだと思うんです。今は常に誰かの視線や評価を意識せざるを得ない時代で、自分をすごくメタ的に見るようになっている。

でも昔のヤンキー文化は、もっと主観的に、自分たちなり“カッコよさ”を信じて追い求めることができた。

その意味では、昔の“腕っぷし”が、今はSNSのフォロワー数やネット上での影響力に置き換わっているだけなのかもしれません。

戦う場所がフィジカルからインターネットに移っただけで、人が自分の強さや存在感を示したいという感覚は、今も変わっていないと思います」

「ヤンキーを扱う企画は昔から一定の数字を取っていた」

会場では、単に昔の不良文化を並べるのではなく、その時代のクリエイティビティや遊び心も前面に出す。

象徴的なのが、ゼロから制作したという改造バイクや自転車だ。

さらに、パンチングマシーンや、「タイマン」と銘打った腕相撲ブースなど、来場者自身が身体を使って参加できる仕掛けも並ぶ。

実際、会場では学生服を身にまとい、改造バイクにまたがって記念撮影を楽しむ来場者の姿も見られた。

増田さんは、そうした展示の背景にある、ヤンキー文化によって培われた“創造性”についてこう語った。

「昔のヤンキー文化って、いま見るとすごくクリエイティブなんです。

限られたお金や物の中で、自分たちなりのカッコよさを作ろうとしていたし、調べれば正解が出る時代じゃなかったからこそ、手持ちのもので工夫して美学を形にしていた。

その不格好さも含めて、いまの目線で見ると新鮮なんだと思います。

それに僕は、ただ見るだけの企画展ではなく、五感を使って楽しめる体験型のイベントをやりたかった。

自転車やバイクは、ただ派手な展示品として置くのではなく、実際に乗ることができます。学生服や特攻服も、実際に暴走族をしていた人たちから借りたもので、着ることができる。

ヤンキー文化には、濃さや熱量があるし、少し “禁忌”に触れるような感覚もある。そういう振り切ったものだからこそ、体験としての面白さにつながるんじゃないかと思いました」

増田さんは、自身が当時のヤンキー文化を実体験として知る立場ではないからこそ、企画にあたっては、その時代を生きた人々の“生の声”を重視してきたという。

イベントの監修に携わった“ヤンキー界の重鎮”こと青少年不良文化評論家の岩橋健一郎さん(59)は、ヤンキー文化の魅力と本質についてこう語る。

「ヤンキー文化がいまおもしろがられているのは、懐かしさだけではないと思うんです。

私は40年以上、ドキュメンタリーやバラエティ番組でヤンキーのキャスティングに関わってきましたが、ヤンキーを扱う企画は昔から一定の数字を取っていた。つまり、ずっと需要があったということなんです。

ただ、いま響いているのは、コアな不良文化そのものではない。

ヤンキーになれなかったけど憧れていた人たち、いわば“ライトツッパリ”の感覚に向けたものが、いちばん広く届いているんです。

そういう層に向けた動きは10年以上前から続いてきたし、その流れの中で決定打になったのがNetflixで配信された恋愛リアリティ番組の『ラヴ上等』だったと思います。

あの作品で、ヤンキーの強さや怖さだけじゃなく、仲間との結束や礼儀、不器用さや可愛げまで含めた“人間くささ”が魅力として届いた。

ヤンキー文化には日本の“裏文化”として独特のおもしろさがある。無難さが求められる時代だからこそ、振り切った熱量が、あらためて人を惹きつけているんじゃないでしょうか」

かつては時代遅れの記号として扱われがちだったヤンキー文化だが、いまは懐古、憧れ、体験の対象として幅広く受容されつつある。ヤンキー文化の再浮上は、時代の側の変化を映す現象なのかもしれない。

取材・文/鮫島りん 集英社オンライン編集部ニュース班

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