東京と大阪で電気料金に年間2万円の差?「イラン情勢緊迫化」「補助金終了」「再エネ賦課金」値上がり続く東京都の電気代高騰、切り札は原子力発電か
東京と大阪で電気料金に年間2万円の差?「イラン情勢緊迫化」「補助金終了」「再エネ賦課金」値上がり続く東京都の電気代高騰、切り札は原子力発電か

今年5月の検針分から電気代の値上げが顕著になりそうだ。再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は0.2円の引き上げで1kWh当たり4.18円となり、初めて4円を突破した。

イラン情勢を受けての原油価格高騰の影響が出るのも、6月請求分からとみられている。政府の補助金は4月に終了、5月請求分からはすでに値上げが始まっていた。電気代高騰の三重苦が家計を直撃する。

エネルギー価格高騰の影響を反映できず電力会社の多くが減益に

「燃料輸入価格は今月(4月)ぐらいから上がっていくということだと思いますので、それから2~4か月後に、一般的に言えば電気・ガス料金が上がり始める」

赤沢亮正経済産業大臣は、4月24日の記者会見でこう発言した。これは6月ごろからの電気料金の値上がりを示唆している。

大手電力会社の決算が出そろったが、軒並み軟調である。東京電力は4542億円の最終赤字、関西電力は1割の減益だった。今年度は減益予想を出している会社が大半だ。東京電力などは燃料価格の見通しが不透明で未定としている。電力会社は燃料価格高騰の影響を価格に転嫁するのに時間差が生じるため、一時的に利益が押し下げられるケースが多い。

イラン情勢が緊迫化した影響で、3月から原油価格の高騰が本格化した。電力会社が利益を取り戻すため、先食いしたエネルギー高の影響を電気料金に反映すると、一般家庭は6月請求分から月間で数百円~1000円程度の値上げになる可能性が高い。エネルギー価格の高止まりはしばらく続くとみられており、年間で1万円前後の負担増になりかねない。

「再エネ賦課金」の価格改定も見逃せない。4人世帯の平均的な使用量といわれる月間400kWhあれば、0.2円の値上げで月額80円の負担増、年間の再エネ賦課金だけで負担額は2万円を超えてくる。

また、大量の電力を消費する事業者への影響も大きい。今回再エネ賦課金を値上げした分だけで、事業所によっては月数万円、年間数十万円の負担増もありえる。原油価格高騰の影響と再エネ賦課金の値上げによって電気代が重くなり、商品やサービスへの価格転嫁が進む可能性があるのだ。

大手製菓メーカーの江崎グリコは5月1日からポッキーやGABA、カプリコなどの菓子類の希望小売価格を3~12%引き上げたが、その要因の一つとしてエネルギーコストの価格上昇を挙げている。こうした物価高騰の積み重ねで家庭の負担は重くなる。

政府は石油節約の呼びかけをためらう一方で、経済界からは需要抑制の声も聞こえてくる。需要喚起策である補助金の導入か、節約かの二択となっているのだ。安易に補助金を導入することもできず、難しいかじ取りが迫られている。

東京と大阪で年間の電気料金には2万円の差

価格高騰の切り札になりそうなのが低コストの原子力発電だ。原子力への依存度で家庭の電気料金は大きく異なる。それは特に関東と関西の電気料金の差によく表れている。

関西電力は全発電量の半分程度を原子力に頼っている。一方の東京電力は柏崎刈羽原発を約14年ぶりに再稼働したが、度重なるトラブルで本格稼働したのは今年4月からだ。

総務省統計局の家計調査によると、2023年から2025年における二人以上の世帯の年間平均の電気代は東京23区が13万6060円で、大阪市が13万4726円だった。電気料金はほとんど変わらないが、世帯当たりの年間の電気使用量は大きく異なる。

大阪の年間平均使用量は4766kWhだが、東京は4052kWhだ。使用量に差が生じているのは、大阪の1世帯当たりの平均人員が東京に比べて多いことや、東京よりも夏場の平均気温が高いことなどが関係している。

仮に1年間に使用する量を4000kWhと仮定すると、トータルの電気代は大阪が11万3072円、東京が13万4313円となる。一概に原子力発電への依存度によるものとは言い切れないが、電源構成が異なる大阪と東京では、実に2万円以上の差が生じている。

関西電力は原子力発電所の定期検査などを行なうため、今年度の原発の稼動率は低下する見込みだ。これにより、年間のエネルギー事業の利益は230億円程度押し下げられるという。裏を返せば、それほど低コストで発電できるということなのだ。

一方、原子力発電には高いリスクも伴う。

4月30日に発表された最新の決算で、東京電力は4500億円を超える赤字となったが、これは主に9138億円もの災害特別損失を計上したからだ。災害特別損失とは、東日本大震災で被災した福島第一原発の復旧等に必要な見積額が増えたことによるものである。

東京電力は廃炉に必要な費用を8兆円と見積もっているが、当初は2兆円と予想していた。費用は大幅に膨らんでいるのだ。廃炉費用や賠償金は電気代に一部上乗せして捻出されている。

足元のインフレで人件費や資材費、エネルギー価格が上がっていることを考えると、今後も廃炉に必要な費用が計画を上回る可能性も十分ある。それが最終的に電気代に跳ね返ってくるわけだ。

脱原発を成し遂げたドイツでは再稼働を待望する声が

原発の再稼働に向けた機運も失われている。日本原子力産業協会の「日本の原子力発電所の運転実績」によると、2025年度の全国の原発の稼動率は33.6%だった。前年度比で1.3%の増加に留まっている。

福島第一原発の事故後、規制強化で廃炉や稼働停止が進み、2025年度で稼働している原子力発電所は15基。事故前は50を超えていた。

脱原発を訴える動きも活発で、今年3月11日にも首相官邸前で市民によるデモが行なわれた。

一方、エネルギー価格の高騰が一部の国民の意識を変えつつあるのも事実だ。欧州に目を向けると、ドイツは福島原発事故を契機として脱原発へと傾き、2023年4月に最後の原発を停止し、脱原発を完了した。しかし、ウクライナ紛争がエネルギー価格高騰を招いて原発再稼働の声が上がるようになり、現在でも一部の政党が熱心に再稼働を訴えている。

電気代が高騰する日本においても、原子力発電所の有効利用に向けて冷静な議論がなされるタイミングが訪れているように見える。

取材・文/不破聡 写真/shutterstock

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