「ロックの申し子」西城秀樹 矢沢永吉への憧れ、桑田佳祐からの敬意…スターたちが認めた“本当の実力”
「ロックの申し子」西城秀樹 矢沢永吉への憧れ、桑田佳祐からの敬意…スターたちが認めた“本当の実力”

2018年5月16日に63歳で亡くなった西城秀樹さん。『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』など数々の大ヒットで知られるロックの申し子とも称された国民的スターの彼が、なぜ世代を超えて愛され続けるのか。

西城秀樹さんの“本当の凄さ”を、名曲とともに振り返る。

「矢沢さんにボクのオリジナル曲を書いて欲しい」

1977年にリリースされた西城秀樹のカバー・アルバム『ロックンロール・ミュージック』の最後を飾ったのは、矢沢永吉の『恋の列車はリバプール発』だった。矢沢のデビュー・アルバム『I LOVE YOU, OK』に収録された楽曲である。

西城秀樹が、キャロルや矢沢永吉に強く惹かれた理由のひとつには、初期のビートルズに影響を受けて育ったという、お互いの共通項があったと考えられる。西城秀樹はこの曲を自身のライブで何度も取り上げていた。

ところで二人が初めて顔を合わせたのは、キャロルが毎週木曜日にレギュラー出演していた、夕方のテレビ番組『ぎんざNOW!』だった。

そのことが女性誌『セブンティーン』(1978年)に掲載された、矢沢永吉の取材記事に記されていた。当時の矢沢は資生堂のCMキャンペーンとタイアップした『時間よ止まれ』が大ヒット中で、時の人になりつつあった。

そこにコメントを寄せていた西城秀樹はごく自然体で、普段から思っている気持ちを、そのまま素直に取材記者に語っている。

数年前に『ぎんざNOW!』でキャロルと一緒になったことがあるんだ。そのとき、「僕も、広島県出身なんですよ」って話しかけられてネ、ずいぶん腰の低いていねいな人だななんて思った。
でも、スッゲエいい曲歌ってるんだ。ボクが矢沢さんを尊敬しているのは、このソング・ライターの面が多いかもしれないよ。


今のボクのコンサート・ツアーにも「セクシー・キャット」と「恋の列車はリバプール発」の2曲がはいっているけど、何といっても矢沢さんにボクのオリジナル曲を書いて欲しいな。

コメントの中で語った言葉からは良い楽曲と出会って、それを自分の表現で歌ってみたいと思っている若者が、素直に音楽に向き合おうとしている向上心が感じられる。

ソングライターとしての矢沢永吉を高く評価しているところが、西城秀樹が“ロックの申し子”であることを示していた。

桑田佳祐が語った「日本の音楽界を大きく作り変えた」西城秀樹への敬意

1995年夏、横浜みなとみらい21臨港パークにて開催されたサザンオールスターズのコンサート『スーパーライブ in 横浜 ホタル・カリフォルニア』で、サプライズ・ゲストとして出演した西城秀樹は、代表曲の『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』を披露した。

終演後にゆっくり話ができたという桑田佳祐は、偶然にも西城秀樹と学年が同じだった。

のちにロックの先駆者に対する感謝の思いを、「本当に実直で、誰に対してもフランクで兄貴のような存在。日本の音楽界を大きく作り変えた」などと敬意を語っている。

桑田がカバーしてライブで取り上げた西城秀樹の作品には、2008年の『情熱の嵐』、2013年の『傷だらけのローラ』、2018年の『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』がある。

どちらもソロのライブとして行なわれたチャリティ・イベント『Act Against AIDS LIVE』における企画だったので、結果的には映像とともに音源が残されることになった。そして日本の歌謡曲を集大成したライフワーク『ひとり紅白歌合戦』のBOXに収録されて発売されている。

その他にも2018年の5月16日に急逝した西城秀樹を追悼した自分のラジオ番組『やさしい夜遊び』(同年5月19日放送)のなかで、ギターの弾き語りでカバーした『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』が絶品だったという声もある。

一方の西城秀樹は、自分が本当に好きで影響を受けた楽曲については、デビューして間もない時期から積極的にコンサートでカバーしている。

とくにロック色が強い洋楽のカバーに関しては楽曲を選ぶセンスもいいし、自分の中で昇華させてからの表現も突出していた。

1979年8月24日に後楽園球場において開催されたライブが収録されたアルバム『BIG GAME '79 HIDEKI』は、激しい雨の中での開催で有名になった2枚組のアルバムだが、伝説として語り継がれるキング・クリムゾンの『エピタフ』に加え、サザンオールスターズの『いとしのエリー』も歌っている。

オリジナル版『いとしのエリー』の発売日がその年の3月25日だったのだから、その直後にはカバーしようと決めていたのだろう。そういうセンスと決断の早さが、"ロックの申し子"らしいところなのである。

サザンオールスターズは、1978年にデビュー・シングルの『勝手にシンドバッド』がヒットしたことで一気に注目を集めた。当初は見た目の若々しい印象からして、都会に住む恵まれた家の学生たちだと思われて、一発屋的な見方をされたこともあった。

しかし、3枚目のシングルとして発売した『いとしのエリー』で音楽的な評価を確かなものにして、そこからはライブの積み重ねによってバンドとしての成長を遂げていった。

1988年の『Keisuke Kuwata』から、バンドと並行して桑田佳祐はソロ活動を始めた。そこから実に多様な活躍を経ていくなかで、バンドも維持しながら今日に至っている。

ところで西城秀樹がカバーした『いとしのエリー』は、クセの強さを打ち出していた桑田佳祐の歌唱に比べると、切なさに満ちていて、素直に聴きやすくて深みも感じさせた。

最初から最後まで聴きどころなのだが、とくに2番のサビ前の「♫ エリー」のひとことと、最後にあえて声をつぶし気味にした「♫ エリー」からは、西城秀樹ならではのロック衝動が伝わってくる。

文/佐藤剛 編集/TAP the POP

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