ナフサショックでプチプチ®が危機!? 「買いだめは控えて」メーカーが訴える原料不足と価格高騰のリアル
ナフサショックでプチプチ®が危機!? 「買いだめは控えて」メーカーが訴える原料不足と価格高騰のリアル

中東情勢の緊迫化により、石油関連製品の供給不安が広がっている。原油を精製して作られる石油製品の一種「ナフサ」の供給不安は国内のさまざまな産業に影響を及ぼしており、その波は梱包・包装資材にも及ぶ。

「プチプチ®」の名前で知られる気泡緩衝材などを製造・販売する川上産業は、原材料価格の高騰を受けて二度の価格改定を実施した。現場ではいま、何が起きているのか。

「いろいろなメーカーが再生原料を調達しようと動き出しています」

カルビーの「ポテトチップス」の商品パッケージが白黒になるなど、ナフサ供給不安によって我々の身近な製品にも影響を及ぼしているナフサショック。その影響は、荷物の発送などで使われる梱包材にも及んでいる。

「プチプチ」の名前で知られる気泡緩衝材などを製造・販売する川上産業株式会社では、原油・ナフサなど石油関連原料の調達環境の不安定化を受け、二度にわたり価格改定を余儀なくされた。

その背景と経緯について同社の担当者に話を聞いた。

「中東情勢の影響でナフサの供給が不安定化し、そこから作られるプラスチック原料『バージンペレット』の価格が大幅に高騰しています。

弊社では、国内でプチプチやポリ袋、ストレッチフィルムなどから再生した『再生プラスチック原料』で主に製品の製造を行なっていますが、バージン原料が高騰しているいま、いろいろなメーカーが再生原料を調達しようと動き出しています。

そういった需要の増加に伴って再生プラスチック原料の単価が上がっている状況です」

同担当者は、再生プラスチック原料について「国内で当社が生産できる量は確保できているので、近々になくなるということはない」と補足したうえで、春以降の製品供給と価格改定の状況について次のように説明した。

「需要の大幅な増加や原料の供給ひっ迫、価格高騰を受け、5月出荷分以降について出荷制限や出荷時の梱包仕様の変更、納期の長期化、一部の有色着色銘柄の一時販売停止に加え、価格改定を行ないました。

さらにこの度、気泡緩衝材『プチプチ』全般を対象に2度目の価格改定に踏み切りました。原反(加工や断裁が行なわれる前の状態のもの)で25%程度、加工品で20%程度の値上げです。

原料がこれだけ大幅に高騰してしまうことは想像しておらず、さすがに我々では吸収が困難と判断し、価格転嫁させていただきました」

実は登録商標の「プチプチ」…その製品数は100種類以上も

日本で初めて気泡緩衝材を製造・販売した川上産業株式会社は、同業界の約60%のシェアを維持しているトップメーカーだ。

主力商品である「プチプチ」は同社の登録商標であり、その製品数は100種類以上にのぼるという。

「プチプチは硬さによって複数の種類があり、柔らかいものから硬いものまで、包むものによって使い方を分けています。

また、粒の大きさが基本的なもので4種類あります。あとはハート型や四角い形のものなど、粒の形のバリエーションもあります。

さらに、機能面においても、静電気を抑制するタイプや、バイオエタノールというサトウキビ由来の原料を使ったものなど、さまざまな種類を製造しています」

同社の商品は、ホームセンターや通販業界、工作機械や機械の部品などの梱包、自動車部品や電気部品などの梱包などに多く使われているという。

なかでも古くからの代表的な用途のひとつが「引越し」だ。

「もともとは引越しやお菓子などの包装でかなり使っていただいていました。しかし、引越しを業者に依頼する人や転勤の減少、リターナブル資材の普及などで需要が減っており、お菓子の緩衝材用途も昨今のマイクロプラスチックの問題や食品衛生法改正の影響などを受けてだいぶ需要は減ってきました。

やがて、自動車や機械などの部品の包装にプチプチが選ばれるようになり、その頃からホームセンターなどがプチプチを小売りされるようになり、順調に推移していました。

そうしたなかでコロナ禍を迎えました。すると今度はフリマサイトなどで活発に使われるようになり、通販での購入が大きく伸びています。

また100円ショップでも取り扱いなどが非常に高まっており、需要は堅調に推移しています」

時代の変遷のなかでさまざまな場面や用途で使われているプチプチだが、意外と知られていないのが「防災」における活用だ。

「2004年に発生した新潟県中越地震の時に初めてプチプチの支援をさせていただきました。

その後、東日本大震災で弊社の仙台工場が被災したのですが、仙台工場で在庫していたプチプチを持って、近くの避難所の体育館の床に敷いたり、防寒対策として重宝していただきました。

プチプチは空気を閉じ込めていますから、断熱保温効果があります。床に敷くと冷気の侵入を防ぐことができますし、毛布のように羽織ると体の熱が外に逃げにくくなります。

能登半島地震でもプチプチを支援させていただきました。あくまで一時的な活用ではありますが、避難所で少しでも活用していただこうと、一部の製品について『あったか活用術』を掲載したパッケージで販売を行なっています」

「手でつぶしてリサイクルボックスに入れていただければ回収量の拡大につながります」

生活に身近な場面から防災に至るまで、多くの用途で活用されているプチプチ。

しかし、リサイクルできることは意外と知られていない。

「我々はリサイクルにも力を入れており、『プチプチはリサイクルできる』ということの認知度向上に努めています。

ペットボトルや食品トレーなどは視認性が高く、スーパーなどいろいろな場所で回収してリサイクルを行なっていますが、同様にプチプチも見た目ですぐ分かるので、リサイクルしやすい製品です。

プチプチの専用リサイクルボックスを作り、多くの場所に設置していただくべく弊社のリサイクル事業部がアピールをしていますが、なかなか大幅な設置数にはつながっていないのが現状です。

ペットボトルや食品トレーなどに比べて、『まだやったことがないから初めては怖い』と受け止められてしまう部分があります」

現在、一部のドラッグストアや自治体、学校など、全国500か所で専用のリサイクルボックスを設置しているが、「2030年までに2030か所の設置が目標です」と同担当者は語る。

「プチプチの回収はかさばるために量が集まりにくい面があります。使い終わったプチプチはストレス発散がてら、手でつぶしていただき、それをリサイクルボックスに入れていただければ回収量の拡大につながりますし、回収量が増える分だけ原料にも戻ります。

行政や国も、積極的にプチプチの回収を呼び掛けてくれれば、我々としてもたいへんありがたいです」

プラスチック資源の国内循環に取り組む同社。リサイクルの重要性が高まるなか、最後に同担当者は消費者に向けてこのように呼び掛けた。

「引き続き安定的な供給はしていきたいという思いはありますが、今一番懸念しているのは、一部で見られる買いだめなどの動きです。

安定的にご提供しますので、できるだけ必要な分をお求めいただきたい、というのが我々の思いです。

もちろん中東情勢が落ち着けば安定的に需要が元に戻りますので、弊社としてはそれを願っていますが」

今回のナフサ供給不安は、原材料価格の変動が私たちの生活を支える身近な製品にまで直結している現実を浮き彫りにした。

再生原料の重要性が高まるなか、限りある資源をどう循環させていくのかが、改めて問われている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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