21世紀、人類は鋼鉄の1万倍の強度を持ち、A.I(人工知能)を搭載した夢の紙「ペーパーA.I」を発明した。しかし、ペーパーA.Iで作られたロボットの一団が「シュレッド軍」を名のり、人類に反旗を翻した。
これに対抗するべく、人類は自ら「オリロボ」シリーズを開発。ここにシュレッド軍とオリロボの長きに渡る戦いが始まった……。

なーんて、70年代ロボットアニメ風の魅力的な世界観を持つ「オリロボ」。福岡県在住のアートディレクター・フチモトムネジさんによる、創作折り紙のシリーズです。06年あたりからスタートし、しばらくはネットを中心に知る人ぞ知る存在でしたが、今夏に待望の書籍化を達成。続いてiPhoneアプリ化も実現しました。


「オリロボ」

「オリロボ」の魅力は、なんといってもそのカッコ良さ! フィギュアと見間違うほどの精悍なフォルムです。しかもこれ、1枚の折り紙だけを使って、切り貼りなどをしないで作られているんですよ。「奴さん」と「袴」の組みあわせのように、1枚にこだわらなければ楽なんですけど、安易に「逃げ」は打たない。このストイックさが良いですね。

書籍版ではカラー図版による背景トーリーと、19タイプのオリロボ+5つのアイテムの折り方が紹介されています。これに対してアプリ版では、スタンダードな「オリロボ115」の一種類しか掲載されていません。
書籍版からの再録ページもありますが、デザインがiPhoneに最適化されておらず、ちょっと読みにくいのが難点です。

でもでもアプリ版では、フチモトさん撮り下ろしの「折り方動画」が見られるんですよ。これはホントにナイスです。というのも「オリロボ」って折り方が複雑で細かく、立体的なんですね。たぶん紙の折り方だけ見ていては、わけがわからず挫折する人が大半だと思います。少なくとも僕は腕の制作あたりで、ギブアップしそうになりました。


これが動画だと非常にわかりやすい。指の動かし方など、きれいに折るコツまでわかります。またフチモトさんの声や、折り方などを見ていると、なぜだか「諦めずに続けてみよう」という気になるんですよ。なによりフチモトさんの作成が、折り返しのフチまでピシッとそろっていて、非常にきれい。この名人芸だけでも一見の価値がありますよ。

というわけで、さっそく僕も「オリロボ115」を折ってみました。
いや、大人でも結構大変で、評判どおり「ムズタノシイ」です。定番サイズの150ミリ四方の折り紙で折ると、完成時の全長は7センチくらい。ただ、これだと細部が折りにくいので、もう一つ上の175ミリ四方の折り紙を使う方が楽かもしれません。親子で作ると楽しそうですね。

また本アプリであらためて、ハウツー本と動画の相性の良さを認識しました。料理・手芸・プラモデルなど、モノ作りホビー系のムックはすべて作例動画を織り込み、アプリ版とセットで出版して欲しいですね。
CD-ROMなどと違い、iPhoneなら手元で見られるので、作業中に手軽に参照できますし。本書には、その先駆けとしての意味もありそうです。(小野憲史)