マキタスポーツプチ鹿島サンキュータツオら3人の“文系芸人”によるポッドキャスト番組「東京ポッド許可局」が同名タイトルで書籍化され、話題となっている。10月24日にブックファースト新宿店で開催されたトークショー&サイン会に続いて、11月6日(土)には早稲田祭2010に出張、「東京ポッド許可局 早稲田支局」が開局される。
さらに11月19日には大阪、21日には名古屋に遠征予定。「すべらない話」から「ドラリオン」、「武田鉄矢」にいたるまで世の中の事象を縦横無尽にひもとく“局員”たちの正体とは――。
(※書籍レビューはこちら。「食後に他人にガムを配れるか? 文系芸人たちの『東京ポッド許可局』」

ーーポッドキャスト番組「東京ポッド許可局」を始めたきっかけを教えてください。

タツオ ちょうど「“目先のお笑い”ではない何か」を摸索していた時期でした。マキタさん、鹿島さんとは古くからの知り合い。
いつも楽屋で話しているようなことを音声で配信したら面白いのではないかと思ったことがきっかけとなり、自分たちでお金を出し合ってスタートしたのが2008年のことです。
マキタ お笑いを批評し、議論しようとすると野暮だと一蹴される風潮があります。お笑い界で一時代を築いた人でなければ口にしてはいけないような空気もある。そこをあえて芸人が語るリスキーさが面白いのではないかと。
鹿島 もともと番組を始めるずっと前から「鶴太郎さんは音楽のジャンルで例えると誰だろうね」みたいな話をしょっちゅう語り合っていたんですよ。マキタさんとはロイヤルホストでイベントの打ち合わせしているときに話が盛り上がり、「やりましょう!」という話になった。

マキタ タイトルはメールのやりとりで決めたんだよね。
タツオ 基本的には鹿島さん案ですよ。
鹿島 他にもいろいろあったんですよ。「ロイヤルポッドキャスティング」「東京マキタスポーツ」とか。最終的には満場一致で「東京ポッド許可局」になった……よね?
タツオ どんなに流行っても、きちんと言えないという点が茶目っ気があっていいだろうと。この間、プロのアナウンサーの方もキレイにかんでくださいました。

鹿島 うれしいですね。今度、どんなに本が売れても、みんなきちんと発音できない! 改めて素晴らしいタイトルですね。

ーーこの本の「東京ポッド許可局年表」(P246)によると、初期の頃はマキタさんのご自宅で収録されていたんですね。

鹿島 ああ、旧マキタ邸ね。
マキタ 最初の3回分くらいは録ったんじゃないか。
鹿島 その後はルノアールを中心に流浪してきました。

タツオ 新宿、渋谷、大久保……。店を貸しきったこともあれば、カラオケボックスでやったこともある。「自販機の前で収録」という回もありましたね。
鹿島 よく「あの後ろの話し声は計算でやってるのか?」と言われるんですけど、計算じゃないよね。ホントに誰かが話している声が入っちゃってるだけ。
タツオ ただ、演出上の計算といえば計算ですよ。
「東京ポッド許可局」という架空の会社で、休み時間に3人のおじさんが好き放題しゃべっているのを盗み聞きしてもらうというコンセプトですから。喫茶店で隣の人が話しているのが漏れ聞こえてくるような感覚を味わってもらいたい。

ーー毎回、話すテーマはどうやって決めているんですか?

タツオ そのとき、いちばんしゃべりたいことです。
鹿島 事前には一切決めないですね。みんなで集まって「何話す?」って。
タツオ 「しゃべりたいことをしゃべる」が最優先なんです。

鹿島 一切、編集してないもんね。イマイチでも録り直さない。
マキタ 僕は「東京ポッド許可局」ってバンドだと思っているんですよ。時にはひどいセッションのときもある。
タツオ 「地下鉄の話」とかね。
マキタ あれはホントに酷かった(笑)。でも、後から聞いたら耳が真っ赤になるような内容であったとしても、あえて手を加えずにきた。「ジャムセッションですから」というむき出し感を心がけてきたんです。それは、何でもかんでも屁理屈をこねてみようという僕らの気概であり、屁理屈に対する愛情表明でもある。人間同士がやることだから、まとまらないこともある。予想外の横やりも入る。基本、鹿島局員が邪魔をしますからね。
タツオ 質問しておいて、はしごを外す。
鹿島 やはり、僕がいることはデカいですね。マキタさんとタツオふたりだけで話していたら、ただただ難しくなるばかりですよ。
タツオ・マキタ ウハハハハハハハハハハ
鹿島 僕がある意味、世間との橋渡し役であるという自負があります。


ノースポンサー、ノータイアップだからこそ実現できた天衣無縫のトークセッション。音声メディアの特性をとことん活かしたコンテンツ『東京ポッド許可局』が“書籍”という新たなかたちを手にしたとき、何が起きたのか。後編(11/12掲載予定)は“書籍化”を巡る局員たちの本音に迫ります。(島影真奈美)


マキタスポーツ
オフィス北野所属。ミュージシャン・芸人。対象となる人物の心根を掘り下げる“思想模写”モノマネを得意する。バンド「マキタ学級」で『計算とソウル』『オトネタ』『電動式マキタ』等多数の作品をリリース。雑誌『QuickJapan』『UNGA』などで独自の視点&文体でコラムを展開するコラムニストでもある。2010年東スポ映画大賞期待賞受賞。

プチ鹿島
“筆談芸人”であり、“注釈芸人”でもある。携帯サイト「映画野郎」で連載中の映画の舞台挨拶潜入ルポや、ブログで粛々と配信する「うそ社説」が人気。大御所文化人を迎えての「プチ鹿島・居島一平の思わず聞いてしまいました」は早くもロフトプラスワンのトークイベントに成長(12月のゲストは上祐史浩氏と鳥肌実氏)

サンキュータツオ
お笑いコンビ「米粒写経」、相方は居島一平。オフィス北野所属。オタク芸人トークユニット「アニメ会」メンバー。趣味は「おもしろ論文」を収集すること。TBSラジオ『荒川強啓のデイキャッチ』レギュラー出演中。早稲田大学大学院後期課程単位修得後退学。一橋大学で非常勤講師をつとめる、史上初の“講師芸人”でもある。