目次
  • 地域包括支援センターの多様な役割
  • 認知症かどうかを慎重に見極める手順
  • 長谷川式簡易スケールの評価によって異なる対応
  • そのほかの認知症早期発見・対応への取り組み

今回は地域包括支援センターで行われている業務について紹介いたします。

本記事は、あくまで町田市の地域包括支援センターでの事例で、サービスの内容などは各行政区で若干の違いがありますので、ご注意ください。

地域包括支援センターの多様な役割

地域包括支援センターでは多岐にわたる業務を行っています。

  • 介護予防ケアマネジメント業務
  • 総合相談支援業務
  • 権利擁護業務
  • 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
  • 地域ケア会議推進事業
  • 在宅医療・介護連携推進事業
  • 認知症総合支援事業
  • 生活支援体制整備事業 など

1~4が大きな柱となる業務で、5~8はそれに付随する業務です。地域包括支援センターではこれらの業務を行いながら、地域包括ケアシステムの構築と推進に努めています。

今回紹介するのは、7で挙げた「認知症総合支援事業」です。

町田市の地域包括支援センターでは、高齢者の健康と生活の向上を図るため、認知症についての知識と理解を深めることを目的に、医師が指導・助言を行う「もの忘れ相談」を行っています。

まだ専門医を定期受診していない認知症の人、またはその疑いのある高齢者や家族などが対象となります。

具体的には、もの忘れが多くなり、認知症が気になってきたけど、病院に行くまでではないと感じている方や、病院に行こうと考えているが、その前に少し認知症について相談しておきたい方などです。

認知症かどうかを慎重に見極める手順

「もの忘れ相談」を実施するまでの具体的な流れを紹介いたします。

1.担当地区の包括支援センターに認知症の疑いがある高齢者の情報が共有される 本人やその家族、担当するケアマネージャーなどから連絡があります。例えば、本人が自身のもの忘れが気になる場合や、家族から相談がある場合、認知症などの診断が出ていない利用者の相談です。 2.地域包括支援センターで相談者から内容を聞き取り、医師による「もの忘れ相談」が必要かどうか検討する 「ゴミの日を間違えてしまう」「受診日を間違えて医療機関に行ってしまう」「薬が飲めなかったり失くしたりしてしまう」など、実際に起きていることを聞き取ったり、本人や家族から「最近物忘れが多くなってきている」「食事をしたことを覚えていない」といったことを聞き取ります。 3.対象者には、本人の生活拠点や活動場所、包括支援センターといった場所で、医師による聞き取りを行う 本人がリラックスできて、自然体でいられることを大切にしているため、場所の選定は大切にしています。 4.長谷川式簡易スケールを活用して評価を行う

長谷川式簡易スケールとは、認知症のスクリーニングを目的に使用される簡易的な認知機能テストです。記憶を中心とした大まかな認知機能障がいの有無を調べます。

聖マリアンナ医科大学・神経精神科教授だった長谷川和夫氏らによって開発され、認知症の診断にあたって信頼性の高い評価方法として、国内の多くの医療機関で使用されています。

このスケールは、9つの評価項目、30点満点で構成され、20点以下だった場合、認知症の疑いが高いとされています。テストにかかる所要時間は5~10分程度と、簡単に実施できるため、医療現場だけでなく、介護現場でも広く活用されています。

町田市では「もの忘れ相談」プログラムを実施。気軽に地域包括支...の画像はこちら >>

長谷川式簡易スケールの評価によって異なる対応

長谷川式簡易スケールによるテストが終わったら、その評点を基にしてその後の対応を決めていきます。

評価が20点以下だった場合

認知症の疑いがある状態だとみなし、相談者と地域包括支援センターで支援方法を相談しながら決めていきます。

専門医の受診が必要だと判断したら、もの忘れ相談の担当医師より専門医への受診の案内と紹介状を作成します。

もし、かかりつけ医がいれば、その医師への紹介状を作成し、専門医へ受診するよう依頼します。

スムーズに受診して早期発見・早期対応につながるケースもあれば、認知症の疑いがあることを受け入れられず、専門医への受診や、地域包括支援センターの支援を拒否する場合もあります。

私自身が過去に担当した中でも、認知症の疑いがあることを受け入れられず、「早期発見は早期絶望じゃないか」と言われたケースがありました。

このように、受診や支援を拒否された場合は、基本的に無理強いすることはありません。

ただし、何かあったとき、即時に対応できるよう相談台帳を地域包括支援センター内で共有します。加えて、さまざまな見守り支援を活用し、支援体制の構築をできるように準備しておきます。

私の担当したケースでは、本人の生活に支障をきたす状況ではなく、すぐに受診することはありませんでしたが、数ヵ月経って本人から病院を受診したいと連絡を受けました。

もし認知症と診断され、施設へ入居することになれば、今の住まいを離れなくてはいけなくなるのではと不安を感じ、できるだけ準備をしておきたかったようです。

その方は、専門医に認知症の初期段階と診断を受け、近隣のかかりつけ医から経過治療として内服治療を開始しました。その後の生活も急激に認知症状が増悪することはなく、自宅で生活を続けられていました。

早期に診断を受けると、これからの時間をどう過ごしていくのかと考え、準備する時間を確保できます。そのうえで、診断を受けた方がどこで、どのように生活を送りたいかを改めて考える時間にもなるのではないかと思います。

評価が21点以上だった場合

長谷川式簡易スケールの評点が21点以上で認知症の疑いがないとされた場合でも、そこで支援を終了するのではなく、その方の抱えている悩みについて、解決方法を包括支援センターで考えます。

悩みの内容は、運動不足や地域での顔見知りが少ないといった身近なことから、認知症についての知識不足など多岐にわたります。

私たちは運動不足の方には、簡単な体操である「町トレ(まちだを元気にするトレーニング)」を勧めたり、地域での顔見知りが少ない方には地域で活動されている自主グループや団体を紹介しています。

認知症について十分に理解できていない方には、認知症サポーター養成講座や、認知症当事者の著書を読む読書会などに参加してもらって正しい理解を深めていただくように配慮しています。

このように、「もの忘れ相談」はあらゆる相談の入口として機能しています。スクリーニングテストの結果によって対応は異なりますが、認知症ではなくても、地域包括支援センターでは利用者の望む生活が実現できるようお手伝いをしています。

町田市では「もの忘れ相談」プログラムを実施。気軽に地域包括支援センターを活用しよう
スクリーニングテストの結果にかかわらず生活への支援は行う

そのほかの認知症早期発見・対応への取り組み

ほかにも地域包括支援センターでは下記のような事業を行っています。

臨床心理士らによる介護者相談 認知症高齢者の方やその家族介護者が抱えている不安や悩みなどを相談する場です。認知症に対する理解と本人への接し方、介護に対する心身のストレス軽減方法などについて、臨床心理士などが対応します。
認知症初期集中支援チーム事業 認知症の症状が進行したことなどにより、自ら認知症の相談ができなかったり、家族が勧めても積極的に専門の医師に相談できない方を対象に、医療や介護の専門職により構成されたチームが自宅を訪問し、認知症についての相談を受けつけています。

認知症は早期発見・対応によって、その後の生活を大きく改善できる可能性がありますが、まだ認知症の相談を行うことに抵抗を感じる方が多いのが実情です。

そういった方は、地域包括支援センターを訪れることや相談することに心理的なハードルを感じやすい傾向があります。

そこで、町田市では東京都の指定を受けている鶴川サナトリウム病院の認知症疾患医療センターへの電話相談窓口も設置しています。

認知症に関する心配事、病院の選び方、受けられるサービスなど、本人だけでなく、家族や関係者の方も気軽に相談できます。匿名での相談対応もできるので、ハードルは大きく下がります。

ここまでご紹介したように町田市では、認知症の早期発見・対応に向けたさまざまな取り組みを行っています。

身近な場所で専門的な相談ができるようにすることを目指した結果、センターの相談件数は、2011年度の約4万7,000件から、2019年度は約8万3,000件と、およそ1.8倍になっています。

2019年度に行われた市民ニーズ調査でも、高齢者支援センターの認知度は、要介護1~5の方で65.7%、要介護認定をされていない高齢者でも76%に上り、市民に身近な相談窓口として認知されてきています。

ただ、具体的にどのような業務をしているかまではあまり知られていません。これからもその業務について知ってもらい、身近な相談場所として地域包括支援センターを周知していくことがさらに必要だと考えています。

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