馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はナックビーナスが勝った2018年のキーンランドCを取り上げる。

名手モレイラ騎手のJRA重賞初勝利となった。

 これぞ“マジックマン”だ。モレイラは初タッグのナックビーナスをロケットスタートからハナへ導くと、人馬一体の走りで余力十分に直線へ向く。ステッキを右に左に持ち変え、リズミカルな動きで手綱を押すと、勢いは全く止まらない。後続に影も踏ませない2馬身半差の完勝劇。自身11度目の挑戦で待望のJRA重賞初制覇だ。「力のある馬なので、スタートが決まったあとは先頭に行こうと思った。サッポロが特別な場所になりました」。世界各地で大レースを制してきた名手はゴール後、何度も右の拳を握りしめた。

 18年夏、モレイラは来日4週間(75鞍)で実に31勝。「応援してくれるみんなのおかげ。これからもっともっと勝てるように努力していきたい」。

 特別な夏だった。来日後、秋にJRA通年騎手免許取得へのチャレンジを表明。強い決意を手綱に乗せ、ここまで4週で75鞍に騎乗し、実に31勝を挙げていた。これは52週の通年騎乗に当てはめれば、年間403勝の驚異的なペースだ。「Jリーグにイニエスタ、フェルナンド・トーレス、ポドルスキが来たことはもちろん知っているよ。ボーダーレスは競馬も同じ。私も彼らと同じように、大好きな日本で活躍したい」とブラジル出身らしく、サッカー好きのモレイラ。新天地と見据える日本での“特別な1勝”は自らを奮い立たせたに違いない。

 すでに活躍中のルメール、Mデムーロ両騎手に加わることを夢見て、競馬と勉強を両立させたが、結果は一次で不合格。昨シーズンまで活躍していた香港での騎手免許を返上して、退路を断ってのJRAの騎手への挑戦だっただけに、「心が傷んでいる。妻や子供もいる。今後相談をして、予定をしっかり立てたい」とショックは大きかった。

その後、短期免許制度で何度も来日しているが、通年免許の試験を再び受けてはいない。

 ナックビーナスは続くスプリンターズSにもモレイラの騎乗で参戦したが7着。しかし、7歳のオーシャンSで2着に入るなど息の長い活躍を続け、その後の高松宮記念(14着)を最後に現役を引退し、繁殖牝馬となった。

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