お姫様抱っこ……。
映画では主人公がヒロインを抱っこしている姿を見かけるものの、実際にやったことがある人や、抱っこをされたことがある人となると少ないのではなかろうか? そんな中、お姫様抱っこをし続ける男がいる。
名前はタカバシさん。しかも、既に500人以上を抱っこしたという。果たして動機は?何kgまで抱っこできる? お姫様抱っこをする時のこだわりは? ……など、お話を伺った。

――そもそも、なぜお姫様抱っこをしようと思ったのですか?
「色々なパーティーや飲み会に行って、たくさんの人に出会う機会があるんです。そういう場で写真を撮ることがありますが、いつも普通にポーズをしていて、なんとなく撮ってたんです。そこで、何か決めポーズがあったらいいなぁ~と思ってて、考えてて。
ちょうどその頃、仕事の関係で日本のヒーローと、アメリカのヒーローについて考えていたのですが、アメリカのヒーローは映画の劇中で、必ず一度はお姫様抱っこをする場面があるのに、なぜか日本のヒーローにはそれがないことに気づいたんです。せっかくなので、自分がお姫様抱っこをやってみようと。そうすれば、写真を撮る時にポーズで悩まなくても済みますし」

――動機からして、ユニークですね!今日現在で何人を抱っこしました?
「552人です」(2012年11月19日現在)

――いつ頃から始めました?
「2011年の9月からです」

――ということは、ものすごいペースじゃないですか!! 1人目を抱っこした時のことは覚えてますか?」
「パーティーの場で、『何か喋っていいよ』と言われて、70人ぐらいの前で喋ることになったのですが、これといって喋ることがなかったので、『今日から、お姫様抱っこの記録に挑戦しようと思うんで、皆さん、ご協力をお願いします』って言ったんです。そしたら反応が良くて、一番最初は赤坂のIT系の会社の社長でした。ちなみに、その会場だけで30人を抱っこしました」

――30人も!?
「お姫様抱っこをしている時の傾向がありまして、誰か1人が抱っこされているのを見ると、『私も~』という感じで連鎖的に来られることが多いです。あとは、一度抱っこされたことのある方が『抱っこしてもらったら?』と勧めてくれることがありますね。
そうして人数が増えていきます。女性の場合は特に、重くて持ち上げられなかったら恥ずかしいという思いがあるみたいですけど、僕が男性を抱っこしているのを見て、安心して来てくださる方が多いです」

――お姫様抱っこといっても、男性の方も抱っこしてるんですね。
「女性ばかりをお姫様抱っこしていると、なんだかビミョーな目で見られちゃう気がして(苦笑)。お姫様抱っこをしている時に良い笑顔をするのは女性だけではないので、男性も抱っこしています。男女比は、女性が6、男性が4ですね」

――なるほど。確かに、女性ばかりだと嫉妬されそうな気もしますね。
今までに持ち上げた人の中で、一番重かった人は?
「103kgです。2013年には、110kgまでは抱っこできるようにしたいと思ってます。最初の頃はあまりに重い人は抱っこできなかったのですが、色々な人をお姫様抱っこしていくうちに、体が鍛えられていったのと同時に、コツを覚えていきました。ちなみに、運動は学生の頃は全くやってなくて、社会人になってからフットサルをやるようになったぐらいです。元々、ウチの家系はみんな、足腰が強いみたいで(笑)。でも、お姫様抱っこをしていると、それを見ていた女性の方が『私も持ち上げたい』と言って、他の人を持ち上げちゃうことがあるんです。
小柄な女性が65kgぐらいの男性を持ち上げたこともありました。他の人がお姫様抱っこをしているのを見ると、自分でも持ち上げてみたくなるのでしょうか(笑)」

――抱っこをした人の最高年齢は?
「60歳です。しかも僕の母親です(笑)。僕がお姫様抱っこをしているのを知ってて『私にもアレをやってよ』って言われたのでお姫様抱っこをしましたよ。抱っこされた母が『男の子を産んで育てて、力をつけて、丈夫に育った』という感じで感極まった……かどうかは分かりませんけど(笑)」

――なんだか、微笑ましいですね……。ちなみに、お母様以外で、お姫様抱っこをされた方々の反応はいかがですか?
「写真を見ても分かりますが、笑顔で映っている方ばかりです。
以前、篠山紀信さんがAKB48のメンバーがジャンプをしている写真を撮影した時のドキュメンタリーが放送されていて、その時に篠山さんが『体が宙に浮いている時は、顔が作れないから、素の顔が出て良いんだよ』とおっしゃってたんです。お姫様抱っこも宙に浮いているような感じだから、楽しい表情になっちゃうのかなと思いましたね」

――深い話ですね。お姫様抱っこをする時に心がけていることは何ですか?
「抱っこした状態で写真を撮る時に、僕も笑顔で映るということです。特に女性の時は、僕が重そうな顔をしていると失礼にあたりますから」

色々と気を遣っているタカバシさん。元々、人を楽しませることが好きなのだそうだが、震災が起きて以降、その考えは一層強くなったという。
「震災以降、良い表情の写真を残しておくことの大切さを痛感するようになりました。
だから、なるべく色々な人が笑っている写真を撮りたいです」

そんなタカバシさんが、とりわけお姫様抱っこをしてみたい人を聞いてみた。

――今後、お姫様抱っこをしてみたい人は?
「黒柳徹子さんです。会いたいと思っても、お会いできる方ではないとは思ってますが……。お姫様抱っこ自体が“縁起物”といった感じですが、黒柳さんは存在自体が“縁起物”という感じなので、いつの日かぜひ」

というわけで黒柳さんに、タカバシさんの願いが届くことを祈るばかりだ。ちなみに、お姫様抱っこの世界記録に挑戦している人が、海外にいるのかどうかは定かではないが、当面は1000人を目標にしているという。今日もどこかで、タカバシさんが誰かをお姫様抱っこして笑顔にしていると思うと、心がほっこりするのであった。
(やきそばかおる)