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責任と自負を持って挑んでもらいたい

――「映画プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花」DVDブルーレイディスク)での、スタッフのご活躍についてお聞きしたいのですが、一番最後のプリキュアたちと妖精たちの一枚絵は、各シリーズのキャラクターデザインの方が原画を担当されていますよね。

大塚 あそこは是非それぞれのキャラクターデザインの方に描いてもらいたくて。それも自分の中の「この映画はこれで最後だ」という覚悟の一つです。
――その他のシーンのアニメーターさんの人選も大塚さんがやっているんですか?
大塚 製作担当の末竹憲さんと相談して決めています。非常に重要な仕事です。アニメーターは実写映画でいうと、ある意味役者さんですね。芝居を体で表現するか、手を通して紙と鉛筆で描いた絵で表現するかの違いです。
あ、もう一つ違うのはアニメーターさんは性別や年齢もなんでも越えて表現できちゃいます。例えば「DX3」のラストは志田直俊さんです。ブラックホールの口から吐く赤黒いエネルギー、むちゃくちゃかっこいいですよ。「映画プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ!」では復活怪人の顔から遊園地中を作画でぶっ壊しながらグルグル回してくれました。まさにプロの業です。「DX3」最後のプリキュアたちの泣きのシーンから立ち上がっていくくだりですが、「川村敏江さんしかいない!」と、シナリオ考えているときからお願いしようと勝手に決めていました(笑)。
川村さんは「表情」が描ける凄いアニメーターです。かれんとミルクのところや、えりかの表情なんか凄くいいですよね。そして青山さんはコミカルな動きが得意なので、イエローチームや妖精たちのシーンはほとんどやってもらっています。
鷲尾 「DX3」は女性が作業の要になっていることが多かったですよね。
大塚 女性パワーにかなり支えられました。今回、釘貫彩さんという若い女性の方が美術監督を担当しているんですよ。
助監督、美術監督、撮影監督、制作進行ほかにも僕より若いスタッフがたくさんいてびっくりする。
鷲尾 大塚監督だってまだ30歳なんですよ。
大塚 ここ3年間、いつも映画の一番忙しい時期に誕生日を迎えてスタッフみんながお祝いしてくれました(笑)。僕もいつの間にかおっさんですよねー。でも特にメインスタッフは性別や年齢に関係なく、この人になら任せられるなと思った人に声をかけています。制作進行も助監督も1人でやりきれる人にお願いしていますし、美術も撮影もその他諸々ヘルプは入れていません。
やっぱりエンディングクレジットには一枚看板で名前を載せて欲しい。自分に任された役職に対して、責任と自負を持って挑んでもらいたいんです。
――もし制作スケジュール的に間に合わない状況になった場合は?
大塚 最初に決めたメンバーで映画を作り上げるのが僕のスタンスです。自分の責務を全うできるスタッフが集まれば間に合います。もし何か問題が起きたのなら、みんなで考えて助け合えばいいんです。絶対に何か良い方法があります。
大丈夫です。映画っていうのは絶対に自分ひとりでは作れません。「おれの映画」とかは口が裂けても言えませんよ。「僕らの映画」です。映画制作を3本やってなおさら思いました。


映像から出てくるパワーやエネルギーが変わってくる

――大塚さんを「DX」シリーズの監督に抜擢したのは鷲尾さんなんですよね。

鷲尾 はい。大塚監督はテレビシリーズの「ふたりはプリキュアSplash☆Star」の2話「パンパカ歓迎会は嵐の予感!」の演出のときに、すごいことをやるなと思っていました。
大塚 そうなんですか?
鷲尾 咲と舞がどういうふたりなのか、力をいれるとはどういうことなのか、このふたつがちゃんと作品に込められていた。同じく「Splash☆Star」48話の「最終決戦!奪われた緑の郷!」でキュアブライトが使った技は「映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合」にも出ていますからね。
大塚 あそこは作画の志田さんの功績ですよ。素晴らしかった。
鷲尾 いや、大塚監督もすごい力を発揮したな、と。だからいつか映画の大きい画面でお願いしたいと思ったんです。どんどん進化しているんですよ。テレビシリーズのときは絵コンテにずいぶん口を出していたのに「DX1」ぐらいからかな、ほとんどなくなった。
大塚 本当に絵コンテにめちゃくちゃ言ってくるんですよ! 僕がむちゃしようとするのも一因ですけど(笑)。いまは修正が何もなさすぎて逆に不安になりますもん。
鷲尾 私が考えていたことより、すごいものを出してくるので何も言うことはない。あとは映像の仕上がりを待つだけなんです。ですから私は営業回りに集中できました。「間違いなく良い作品になるから」と言い続けられるわけです。子どもがいかに楽しんで、親が安心して観ることができるか、細かく考えてくれている。素晴らしい映像やストーリー構成を思いつけるかどうかが、監督の仕事なんです。そして、関わってくれるスタッフをいかにその気にさせて、最大限の力を発揮してもらうかも、監督の資質としてとても重要なんです。時間が押している中で、「あと1本でも線を引きたい」と思える空気を作れるかどうか。何万枚とある作画の1枚に1本の線が増えただけと思うかもしれませんが、合わせると4万本、5万本と線が増える。それだけでも、映像から出てくるパワーやエネルギーが変わってくるんです。
大塚 それは相互で作用しますよ。僕も魂が揺さぶられるような原画が上がってくると、動画や仕上げもいいものに! ってなって特殊効果も入れるぞ! と気合いも高まり、大号令です(笑)。それに僕は動画仕上げ上がりも5万枚全部チェックします。時間が許す限りできる事をするのが僕なりのスタッフへの礼儀です。映画に対して誠意と熱意を持って、スタッフみんなで楽しく作りたい。そして見てくれた人に「楽しかったよ」と言ってもらえたら、それはすごく幸せなことですよね。最高のスタッフに恵まれた、最高の映画でした。


昔のわくわく

鷲尾 プロデューサーの仕事は、スタッフはもちろん、宣伝や営業回りの人たちと良い環境を築きあげて、その人たちが映画のためになにかをやろうと思ってもらえるような空気を作ることなんです。それが全体としてうまく進めば、悪い映画にはならないんですよ。そういう自負を持ってつくらないと楽しくないですし、次にやろうと思えない。
大塚 作品として良いものになるかどうかは作っている自分たちがよくわかります。新しく入ってもらうスタッフに「面白い作品になるので一緒にやりましょう!」って言えるくらいの自負はあります。監督が面白いと思ってないんだったらそれはスタッフに対して失礼極まりない話ですし。おもしろいアニメを考えるのは凄く楽しいです。
鷲尾 大塚監督は、子どものころにどう思ってアニメを観ていたか、どこにわくわくしたかをずっと記憶して、それを表現している。だから子どもたちに支持される。記憶に残っているものを、いかに正確に引き出して、作品に反映させることができるか。それは監督として大事な資質だと思います。
大塚 アニメに限らず子供の頃に遊んでいた時のドキドキとかね。まぁ自分の昔のわくわくの記憶を思い起こしているだけですけどね。
鷲尾 体に刻まれたその記憶を、今のキャラクターや作品にアレンジしていくのは誰でもできる事ではないですよ。
大塚 そうですか? 僕はそれを考えるのが楽しいんです(笑)。昔のゴジラ映画「怪獣総進撃」とか、わくわくがハンパなかったですから、ちびっ子が大好きなプリキュアの「大集合映画」なんて楽しみすぎますよ。ハンパない企画です!
鷲尾 「ちょ~短編 プリキュアオールスターズGoGoドリームライブ!」は、5分間の短編で、プリキュアが11人。このときですら「こんなこともう無理だよね」と言っていたんですよ。それが、70分の長編映画を3本もやっていますから。
大塚 楽しかった。でもまだまだやりたい事がたくさんあります。これからも楽しいアニメが作りたいです!
鷲尾 「プリキュアオールスターズDX」シリーズ、ご興味持たれた方は是非ご覧下さい!
(加藤レイズナ)