山崎賢人、門脇麦、新木優子、志尊淳、新田真剣佑、菅田将暉……。『トドメの接吻』(日本テレビ系)は、若年層へ大きくアピールするであろうキャスティングに徹底したドラマだ。
(関連)
「トドメの接吻」2話。キスを恐れる山崎賢人、実はキスに救われていた、さらにBL展開が…
「トドメの接吻クリアフォルダ」(日テレポシュレ)amazonより

リアルタイムでテレビ視聴することが少なくなっている。その傾向は、若年層に顕著だ。同作はストーリーだけでなく、視聴方法も含め、過去未来を行き来したい“タイムリープもの”と言える。(『トドメの接吻』は放送1週間後まで「日テレオンデマンド」で最新話を無料配信中)

山崎賢人を献身的にサポートする後輩ホストの存在


歌舞伎町『ナルキッソス』のNo.1ホスト・堂島旺太郎(山崎賢人)は、佐藤宰子(門脇麦)の存在を恐れている。この女にキスされるたびに旺太郎は絶命し、7日前の時点に戻り、生き返るから。
「あいつにキスされると手が痺れて、胸が苦しくなって、そのうち全身が麻痺して、たぶん……俺は殺された」(旺太郎)

宰子のことを“自分の命を狙いに来る存在”だと信じて疑わない旺太郎。前回エンディングで旺太郎と対峙した宰子は、たどたどしく口を開いている。

「あなた、狙われてる。か、かっ、か……」
何かを言いかけた宰子に向かい、「ウォラァーッ!」と絶叫しながら首を絞めにいく旺太郎。「殺られる前に殺る」とでも言わんばかりに。実はこの時の彼女の様子が、後に起こる惨劇の大きなヒントとなっている。

旺太郎をサポートする心強い存在が、後輩ホストの和馬(志尊淳)だ。献身的に尽くす和馬に対し「もう、頼れんのはお前だけだよ」と弱音を吐く旺太郎。
面と向かってそんなセリフを言われた和馬は、思わずトロけそうな表情に……。

しかし、和馬が稀にこぼす旺太郎へのボヤキが気にならないではない。
・宰子の出現を用心しながら、個人資産100億円の「並樹グループ」ご令嬢・美尊(新木優子)の来店の気配を察すると、出勤準備をし始める旺太郎。それを見た和馬は「もう、ボディガード辞めようかな。助かる気のない人を守れませんよ」「欲の塊だ……」と切なげな表情を浮かべている。
・宰子の住所を探るため、宰子と同僚のぽっちゃり女性と寝た旺太郎。
和馬は呆れ顔で「その女癖は死ななきゃ治らないのかもなぁ」とこぼしている。

門脇麦は危ないタイミングにしかキスしていない


加えて、旺太郎はどんな状況で宰子にキスされているかも振り返ってみよう。
・宰子に電話で呼び出され待ち合わせ場所に向かうも、何者かに刺されて気を失ってしまった旺太郎。そこに現れた宰子は、旺太郎へキスをした。
・並樹乗馬クラブの「初乗り会」に出向いた旺太郎は、美尊に話しかけるべく接近。その瞬間、唐突に鉄筋が倒れて旺太郎は下敷きに……。そこに登場した宰子は、旺太郎にキスをした。


宰子は、旺太郎が絶命寸前の危機的状況にしかキスをしていないのだ。

ストリートミュージシャンの晴海一徳(菅田将暉)は、すでに状況を的確に分析している。
「“キス女”(宰子)にそんな力があったら、エイト(旺太郎)を殺しに来るって言うより助けたことになるもんな?」
そういうことなのだ。宰子は旺太郎の得になるキスしかしていない。そして、危機的状況の旺太郎をタイムリープに導いている。

不意に、「過去に戻れるなんて、夢だよなぁ~!」とつぶやいた一徳。
対して、「戻りたくない過去だってあるよ」と返す旺太郎。
無理もない。父の旺(光石研)が船長を務めるクルーズ船に乗り込み、沈没事故に遭遇した過去が旺太郎にはある。一方の一徳は、第1話エンディングで学生時代の宰子が写る写真を見つめながら「見つけた……」とつぶやいている。

過去を捨て去りたい旺太郎と、過去を追い求める一徳。そんな両者の構図があるのかもしれない。


頼れる後輩ホストかと思いきやBLだった


和馬から「ストーカー(宰子)の住所がわかった」と連絡を受けた旺太郎は、案内されたアパートの一室に足を踏み入れた。ここが宰子の自宅なのか?
そこには異常な光景が広がっていた。旺太郎の写真が無数に貼り出され、その上からは太くて赤い筆でデカデカと「愛」の一文字が……。

ふと視線を横に向けると、ホストクラブのイベントで和馬が着ていた女装コスチュームがハンガーに掛けられている。ようやく、旺太郎も察したようだ。彼の脳裏で、今まで気に留めていなかった数々の言動がフラッシュバックする。
・「“キス女”にそんな力があったら、殺しに来るって言うより助けたことになるもんな?」(一徳)
・「死ななきゃ治らないのかもなぁ」(和馬)
・「あなた、狙われてる。か、かっ、か……」(宰子)

後ろを振り返ると、刃物を持って襲いかかりに来る和馬の姿が! これで、点が線になった。宰子の言う「か、かっ、か……」とは、和馬のことを指していたのだ。「あなたは和馬に狙われている」と、彼女は旺太郎に言いたかった。

必死に逃げ出す旺太郎。しかし和馬に追いつかれ、遂に刺されてしまった。
「ずっと好きでした。一緒に死んであげます」(和馬)

宰子の襲撃に備え、旺太郎のボディガードを買って出た和馬。いや、そんな構図じゃない。本当は、和馬から襲われる旺太郎を宰子が救い出していたのだ。全てを俯瞰すると、そういうことになる。

これだけのどんでん返しがありながら、まだ2話目なのが恐ろしい。序盤なのに展開が目まぐるし過ぎる。
『トドメの接吻』は、リアルタイムで視聴するだけでは追いきれないドラマである。
(寺西ジャジューカ)