ロースハムは日本固有のものだった
サンドイッチに、サラダに、そのまま食べられるロースハム。日本で生まれたありがたい発明です。
今シーズンも、お歳暮にハムを贈った人、贈られた人も多いかと思うが、「ハム」といえば、まず一番身近な存在が、ロースハムだ。でも、コレ、日本固有のものだって、知ってました?

「元祖ロースハム」を作ったローマイヤ株式会社に、そもそもの誕生のきっかけなどを聞いた。

「本来、ハムというと豚のモモを使った『ボンレスハム』が世界中でもてはやされてきました。でも、ローマイヤ(株)の創業者、アウグスト・ローマイヤが大正10年に、余っていたロースを処分するのにどうしたら良いかということで、作ったのが、この『ロースハム』だったんです」
と言うのは、広報担当の梅本さん。

品川にハム・ソーセージ工場を建てたため、品川からほど近い、横浜・中華街にロースの処分を出していたが、「良い方法はないか」と検討した。
だが、ロースの長細いかたちをハムにするのは食べにくく、難しく、「丸くしたらどうか」と、思いついたのだという。
「食べやすく丸くしたハムを、創業当初は『ロールドハム』と呼んでおり、後に『ロースハム』に名前がかわりました。今でもラベルには『ロールドハム』と書いてあるんですよ」

また、ロースハムが従来のハムと異なり、独特だったのは、「スモークだけでなく、ボイルしてあること」。

「ソーセージもハムも、普通は加工しないと食べられませんが、日本人の好みに合わせて、そのまま食べられるように、ひと手間加えて製品化したんです。これが、手軽な“洋素材”として、爆発的にウケたそうです」
もともと脂の少ない背肉、ロース肉を使い、さらにボイルすることで、日本人好みのさっぱりめの味になったということもあるようだ。

ところで、このような日本固有、正しくはローマイヤ独自の「ロースハム」が、今では、日本のハムの代名詞のようになっているが、特許をとろうなどとは思わなかったのだろうか。
「特許の話はもちろんありましたが、創業者がそれをしなかったんです。むしろ、徒弟制度で、味を広く分けてあげていたと聞きます。創業者はドイツの技術を日本に伝承したほか、日本の技術者を養成してきたことでも知られているんですよ」
つまり、味を広く分け与えていった結果、「ロースハム」が今のような身近な存在になったということだ。


滑らかであっさりしていて、しかも、すぐ食べられるロースハム。これが日本のものと聞くと、意外なようで、実にしっくりきませんか。
(田幸和歌子)