小泉今日子主演、宮藤官九郎脚本の火曜ドラマ『監獄のお姫さま』。過去に罪を犯した女たちが手を組んで、ある男に復讐するというストーリーだ。
満島ひかり、菅野美穂、夏帆、坂井真紀、森下愛子、伊勢谷友介という豪華キャストも大きな話題となっている。第1話の視聴率は9.6%とまずまず。
「監獄のお姫さま」1話「イライラするから嫌い」か「イライラするから面白い」か、これは分かれそうだ
イラスト/まつもとりえこ

「おばさんたちの不完全犯罪」にイライラ


第1話は、馬場カヨ(小泉)、“財テク”こと勝田千夏(菅野)、大門洋子(坂井)、“姐御”こと足立明美(森下)が、“先生”こと若井ふたば(満島)指揮のもと、EDOミルクの若き社長・板橋悟郎(伊勢谷)を誘拐・監禁するまでのお話。

で、これがまぁ、実にわちゃわちゃしていた。まずは悟郎の息子を誘拐しようと企てた女たちの作戦は、とにかく失敗ばかり。スマホの地図の見方もわかっていないし、子どもの容姿を口頭で伝えて間違えて別の子をさらってしまったりする。だったら写真撮って送れよ! そのくせ、ずっとペチャクチャおしゃべりしているんだから、あー、もう、おばさんってイライラする! でも、それを描くのがこのドラマ。
公式サイトのキャッチコピー「おばさんたちの不完全犯罪。」とはよく言ったもの。不完全すぎるよ!

子どもを誘拐した馬場カヨたちの板橋悟郎への要求は、過去の罪をカメラの前で認めること。悟郎はかつて江戸川乳業の社長令嬢・江戸川しのぶ(夏帆)と婚約していたが、悟郎の恋人・ユキ(雛形あきこ)とトラブルになり、ユキが殺害される事件が発生。犯人としてしのぶが逮捕され、「爆笑ヨーグルト姫事件」として広く知られることとなった。だが、しのぶは冤罪だった。悟郎はしのぶに罪を着せ、自分は社長の座に収まっていた。
女たちの目的は、しのぶの冤罪を晴らすことだ。

結局、カメラの前で何も白状しなかった悟郎。憤った女たちは自分たちの素性を明らかにし、力づくで悟郎を襲う! 悟郎の秘書に扮したショートカットの満島ひかりの警棒を構える姿が凛々しい! そして警棒で悟郎を一撃! 

「けっそーーく!(結束)」「はいっ!」

目を覚ました悟郎に向かって吐き捨てた「しゃべるな、クズ」のセリフにシビれた視聴者も多かった模様。おばさんたちはずっとわちゃわちゃしていたが、ふたばだけがピシッとしている。そして悟郎を監禁することに成功! 2017年12月24日、クリスマスイブの夜の出来事である。

ながら視聴に向いていないドラマ


ドラマは第2話から過去に戻り、女子刑務所の中で女たちのエピソードが一つずつ明かされていく。時間は2017年12月24日のままで、クリスマスイブの一晩の出来事を1話から10話までかけて描かれる。
『週刊文春』の宮藤のコラムには次のように説明されていた。

「これをイケメン社長の視点で説明すると『なんか知らないおばちゃんに監禁されて、刑務所での話を延々聞かされる悪夢のような一夜』のお話」

宮藤によると、伊勢谷友介は全10話の間、ずっと拘束された状態が続くらしい。民放連ドラ初出演がずっと縛られっぱなしの役! もっとも、女たちの回想シーンや妄想シーンにも登場するはずだけど。

いきなり『サンデージャポン』から始まったり、何度も同じシーンを繰り返したり、時制をシャッフルしたりと、ややトリッキーな滑り出しだった第1話。「わかりにくい」という視聴者からの声もあったようだが、別に見ていればわかることなんだから、これぐらいはどうってことない。クドカンドラマのファンからは「クドカンらしい」という声が相次いでいた。
ながら視聴には向いてないドラマなのは間違いないだろう。

さっき、おばさんたちのわちゃわちゃを「イライラする」と書いたが、「イライラするから嫌い」と感じるか、「イライラするから面白い」と感じるかは人それぞれ。かなり好き嫌いが分かれるドラマのような気がする。ただ、何もかもスムーズに進んで上手くいくドラマなんて面白くないよね。そもそも、そんな人生あり得ないし。

人生は不可逆、口に入れたおにぎりは返せない


悟郎に語ったふたばの言葉が意味深だった。


「図々しいんですよ、犯罪者って。時間を巻き戻せると思ってるんです。刑務所のことをタイムマシンか何かだと思ってるんです。出てきたら犯した罪までチャラになると思ってるんです」

人生は不可逆であり、口に入れたおにぎりを返そうとしたって無理な話。過去を自由に操れる都合の良いタイムマシンなんて、この世にはない。同じ火曜ドラマ『カルテット』でも描かれていたテーマだ

過去の罪を背負って生きる女たちと、過去の罪から目を逸し続けている男。
過去と現在はますます交錯し、女子刑務所の中でおばちゃんたちがおしゃべりとバトルを繰り広げる『監獄のお姫さま』第2話は今夜9時から。

(大山くまお)