
イソップ物語は、動物や植物を擬人化して教訓や風刺を伝えようというもの。紀元前6世紀のギリシャで奴隷の身分であったイソップ(アイソポス)が、当時のギリシャで生きるための知恵や権力者をいましめるためにつくった寓話である。当時は、文字が読める人がほとんどいなかったため、話は口伝えで広まった。そのため、同じような話も多く、題名は同じでも違う話になっているものもある。
ギリシャで生まれた話は、その後文字になり、各地で翻訳され世界各国へと広がって2000年以上も語り継がれている。なんともすごいことである。
「アリとキリギリス」が元は「アリとセミ」だったという話に戻るが、その理由は、セミの生態にあった。
セミは、熱帯系の昆虫で、日本より緯度が高いヨーロッパや北アメリカでは種類も少なく、小型で迫力がないこともあって知名度が低く知らない人々が多かった。そのため、セミのいない地域では、セミがキリギリスやコオロギなど別の昆虫に変わっていったのだという。ロシアでは、アリがトンボになっているらしい。
日本にイソップ寓話がもたらされたのは1593年(文禄2)。天草で版行したキリシタン版ローマ字綴り口語文「伊曾保物語エソポのフアブラス」が最初だという。
この「アリとセミ」は、各年代でも出版されているので、日本国内では「アリとセミ」、「アリとキリギリス」が混在しているが、やはり「アリとキリギリス」の方が出版数が多かったようである。
私の場合も子どもの頃は、セミバージョンは読んでいないかったので、これはちょっとした驚きだった。(こや)