ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第469回)
今年夏から気象情報が大幅に変更されます。気象庁では2026年5月29日から運用開始することを明らかにしました。
今回の変更点は多岐にわたります。小欄ではニッポン放送でどうお伝えするかも含め、順を追って解説していきます。
2019年の東日本台風で増水した多摩川
■危険度をイメージしやすいよう、複雑だった「警戒レベル」を整理
まずは警戒レベルが5段階に整理されます。危険度の高さから順にレベル5の「特別警報」、レベル4の「危険警報」、レベル3の「警報」、レベル2の「注意報」、レベル1は「早期注意情報」になります。このうち特別警報と警報の間にある「レベル4危険警報」は今回新たに設けられる情報です。
この「レベル情報」を縦軸にし、横軸に「河川氾濫」「大雨」「土砂災害」「高潮」の4つの災害の情報が整備されます。
例えば、河川氾濫の特別警報は「レベル5氾濫特別警報」、土砂災害の危険警報は「レベル4土砂災害危険警報」というふうにお伝えすることになります。
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これまでも警戒レベルについては、1から5まで区分けはされていましたが、例えば土砂災害に関してはレベル5相当が「大雨特別警報」、レベル4相当が「土砂災害警戒情報」、レベル3相当が「大雨警報」というように、警報だったり警戒情報だったりと名称がバラバラで、危険度がイメージしづらいという指摘がありました。
また、洪水や大雨浸水に関しては警戒レベル4相当の情報がありませんでした。大雨警報も「土砂災害」「浸水害」という違う災害に種類が分かれていました。
さらに、高潮をみると、特別警報と警報が同じ警戒レベル4になっていたり、注意報がレベル2とレベル3相当に分かれていたり、「とにかくわかりにくい」という声が専門家からも上がっていました。こうした声を受け、災害のレベルを縦軸に、災害の種類を横軸にすっきりと整理したというわけです。
新しい防災気象情報(気象庁資料を基に作成)
■レベル4に「危険警報」を新設。ポイントは「レベル4(避難指示)が出たら必ず避難」
新しい情報体系に戻りますが、まずは縦軸です。
レベル1は「早期注意情報」、最新の情報に注意する段階、続いて、レベル2は「注意報」、避難の方法を確認する段階です。
そして、レベル3にあたる「警報」になると災害発生の恐れが出てきます。本格的な避難を考える段階で、自治体からはこれを基に「高齢者等避難」が発表される可能性があります。
レベル4にあたる「危険警報」になると、災害の危険性が非常に高まります。自治体が「避難指示」の発表を判断する目安になります。
そして、レベル5に相当するのが「特別警報」、これは正直に言って「もうアカン」という情報です。すでに災害が発生している可能性が極めて高い情報になります。自治体からは「緊急安全確保」が発表されるような状況です。
「住民に行動を起こしてほしい部分の情報はレベル4の情報。多くの方はレベル4の段階で、対象地域にいる人は『自分は大丈夫だろう』という考えではなく行動をとってほしい。
気象庁の野村竜一長官は運用を前にした5月20日の会見で、このように呼びかけました。
ポイントは「レベル5を待ってはいけない」「レベル4(避難指示)が出たら必ず避難」「レベル4(避難指示)が出ている間に避難を終える」と覚えておいてください。
■「河川氾濫」の情報は市町村ではなく、川を対象に発表される
続いて横軸です。これまで警報などの情報は主に市町村単位で出されていました。今回も「大雨」「土砂災害」「高潮」に関してはそうですが、「河川氾濫」に関しては、河川を対象に出されます。それも「洪水予報河川」に指定された大きな河川が対象になります。対象河川は全国に400あまりあり、関東では多摩川、荒川、江戸川といった川が挙げられます。「(××県を流れる)●●川の△△流域」という形でお伝えすることになります。
なお、洪水予報河川以外の河川は「大雨」の情報の中で氾濫の危険度が示されることになります。中小河川の周辺に住んでいる方は、大雨の情報に河川氾濫の危険度が含まれていることを知っておく必要があります。
■「レベル3土砂災害警報」はランクが上がる可能性が高い
続いて「土砂災害」、注意していただきたいのは「レベル3土砂災害警報」。これは数時間後にレベル4の「土砂災害危険警報」にランクが上がる可能性が高い場合に出されます。
これは、いわゆる「空振り」を防ぐためです。これまでは「警報」が出ても、その後、上のレベルに行かないことが多く、緊迫度の低い情報になりがちでしたが、今後はより気を引き締める必要があります。
■防災気象情報=避難情報ではない
新しい防災気象情報は「レベル●△△警報」というように、「レベル数」と「情報名」をセットにしてお伝えしていきます。気象庁関係者によりますと、これまで馴染みのある警報・注意報の「情報名」は継続しますが、いずれは直感的に危険度をイメージしやすい「レベル数」に置き換えたい意向があり。今回の情報刷新はその第一歩になります。
一方、改めて皆さんに認識していただきたいのは、これらの防災気象情報は、お住まいの方々に災害の危険度を伝え、避難などを判断する目安としてもらうためのものです。つまり、防災気象情報=避難情報ではありません。避難情報を出すのは自治体で、こうした防災気象情報を基に発令を判断することになります。
さらに、これらの避難情報の対象は、主に土砂災害警戒区域や洪水・浸水想定区域が該当します。対象区域を絞り込むことで、より情報の確度を上げるのが狙いです。お住まいやお勤め先の地域が、対象地域に入っているかどうか、日ごろから自治体などが公表しているハザードマップで確認しておくことが重要です。
防災気象情報と避難情報の関係(内閣府・気象庁資料を基に作成)
■線状降水帯、記録的短時間大雨などは「気象防災速報」に集約
記録的短時間大雨情報、線状降水帯発生情報など、「建て増し建て増し」でバラバラの印象があった情報も「気象防災速報」という形で一括して扱うことになりました。大雨災害について、改めて意味をおさらいしておきます。
★気象防災速報(記録的短時間大雨)
数年に一度のような大雨の時に発表されます。
★気象防災速報(竜巻注意/竜巻目撃)
竜巻などの激しい突風が発生する可能性が高まった場合、目撃情報が寄せられた場合に発表されます。そして、近年増えている線状降水帯に関する情報にもメスが入ります。
★気象防災速報(線状降水帯発生)
線状降水帯が発生したことを伝えます。
★気象防災速報(線状降水帯直前予測)
今回新たに設けられる情報です。2時間から3時間後をめどに線状降水帯が発生する可能性が高まった場合に発表されます。
「線状降水帯直前予測」の精度ですが、過去のケースを基にシミュレーションしたところ、発生を予測して実際に線状降水帯が発生する「的中率」はおよそ5割、実際に線状降水帯は発生したケースで予測ができていた「捕捉率」は8割程度だということです。
気象庁・野村竜一長官(5月20日の定例会見で)
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ざっと今回の防災気象情報について解説しました。「新たな情報が国民の避難行動、防災関係機関の防災活動に効果的に活用されるよう、周知広報に務めていきたい」と、気象庁の野村長官は話します。
なお、防災気象情報によって、すべての災害が防げるというものではありません。誤解を恐れずに言えば、こうした情報や、それに即したマニュアルの類は、いくらきめ細かく制定しても、人間がつくる以上はどこかに穴ができます。それは、いくら密度の高い塊でも原子・分子レベルでは空間があるのにも似ていると私は思います。その穴を埋めていくためには、やはり日ごろからの備えが大切です。
非常持ち出し袋や備蓄品の準備、ハザードマップ、避難所、お住まいの地域にどんな川が流れているのか、歴史的にどんな地形にあるか確認するなど……、情報を活かせるかどうかは一人一人の意識にかかっています。
(了)

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