◆オフロードも走れそうな、まったく新しいセンチュリー
トヨタ自動車は、同社フラグシップ「センチュリー」に新型モデルを追加。9月6日より「センチュリーマイスター」が在籍する一部のトヨタ車両販売店での注文受付を開始した。価格は2500万円。なお従来のセンチュリー(セダン)は継続販売する。
センチュリーは、トヨタにおける最上級ショーファー・ドリブン・カー。主に日本国内の官公庁・企業などでの公用車・社用車(役員車)の利用が想定され、日本の天皇および皇族が乗車する御料車や、内閣総理大臣専用車としても使用されている。後部座席の広さや乗降のしやすさなど、快適性に重きを置いた作りと日本製らしい質のこだわりを特徴としている。なお、ショーファーカーとは運転手付きのクルマのこと。
初代が誕生したのは1967年のこと。当時の日本のショーファーカー市場は、欧米ブランドの輸入車が席巻していた。そこで明治100年を迎えるにあたり「日本の実力を世界に示す、格式高い車」「日本人の誇りと実力を示しうる、選ばれた方にだけお乗りいただく車」として誕生した。以後、1997年まで実に30年間にわたり生産される超ロングセラーになった。なお、センチュリーという車名の由来は、トヨタグループの創設者である豊田佐吉の生誕100年から取られた言われている。
1997年に登場した2代目も2017年までの20年間生産されたロングセラー。片バンクの6気筒にトラブルが生じても、残りの6気筒で走行できる日本車初にして唯一のV型12気筒エンジンを搭載。同じようにブレーキをはじめ、走行機器の多くにバックアップのための2重系統化が施されていた。センチュリーロイヤルが御料車として使われ始めたのはこのモデルから(それ以前は、日産・プリンスロイヤル)。
3代目が登場したのは2018年のこと。エンジンをV8ハイブリッドとすることで燃費が大幅に改善したほか、予防安全技術も進化した。2019年の第95回箱根駅伝より大会本部車、または会長車として白のセンチュリーGRMNが投入されたほか、第126代天皇徳仁の祝賀御列の儀ではパレード用オープンカー仕様が登場するなど、メディアへの露出も増えた。
このように誕生から56年が経過するにも関わらず、フルモデルチェンジはわずか2回で、セダンというスタイリングは変わらなかった。だが、新モデルは誕生以来、最大の変化といえる。
◆新時代に合わせた威風堂々さ
今回追加された新モデルは、「これからの時代における新しいショーファーカー」として開発。威風堂々たる風格はそのままに、現在のショーファーカーに対するニーズに応えた1台に仕上げられている。
プロポーションはセダンタイプから大きく変更。水平・垂直を基調としながら、リアに重心を置いたショーファーカーならではのプロポーションとすることで、特別な1台であることを表現している。ボディーサイズは全長5205mmと、セダンと比べて短くなっているものの、全幅は1990mmと60mm拡幅、全高に至っては1805mmと300mm以上高くなっている。さらにホイールベースは短くなるものの、前後席間距離は1220mmと85mm伸長された。
中央に鳳凰のエンブレムを置く大型のフロントグリルはセンチュリーの系譜を受け継ぐが、ヘッドライト、テールライトともに角型4灯へと変更。新しい威厳を周囲に与える。外装はセンチュリーらしく、水研ぎ3回による鏡面仕上げ。本体カラーは7色用意されている。
◆パワートレインはV6・3.5Lのハイブリッド
パワートレインは前後にモーターを配置したV6・3.5Lのプラグインハイブリッド。通常はBEV(バッテリーEV)として動作するが、長距離移動などではHEV(ハイブリッドEV)として動作する。システム出力は公開されていないが、エンジンは最高出力262馬力/最大トルク34.2kgf・m、前モーターが最高出力182馬力/最大トルク27.5kgf・m、後モーターが最高出力109馬力/最大トルク17.2kgf・mとのこと。搭載するリチウムイオン電池の容量は51Ah。充電ポートは用意されているが、家庭用ACのみで、急速DC充電には非対応。
運転席は従来の木目調パネルから一転し、重厚ながらもモダンな雰囲気へチェンジ。センターコンソールを高めにしてコクピット感を演出し、ドライバーズカーとしても楽しめる車であることを予感させる。ちなみに、四輪操舵システムを搭載しているので、取り回しの良さと自然なハンドリングを実現するほか、後席に座られている方が気づかないくらいスムーズな車線変更が可能で、停止時の揺り戻しを抑えるブレーキ制御支援も搭載しているとのこと。
ショーファーカーで重要なリアシートを見ると、セダンは乗車定員が5人であるのに対し、本モデルはファーストクラスのようなキャプテンシートを採用しているため4名へと減少。フルリクライニングに対応するほか、アームレストからテーブルが取り出せるなど、快適な室内空間を提供している。またリアドアガラスに、ボタンひとつで白のスモークに早変わりする調光機能付きのプライバシーガラスを採用するほか、スマホライクな車両リモコンを用意。オプションでワインクーラー(20万円)を設定するなど、イマドキのショーファーカーに搭載されている機能は一通り網羅されている。
乗降性にも配慮されている。ドアは最大75度まで開閉し、さらにオート電動格納式ステップを用意。オーダーによってはパワースライドドア仕様も選択できる。
またドライバーズカーとしての楽しみを予感させるGRMN(GAZOO Racing tuned by Meister of Nurburgring)仕様も選択できる様子。こちらはカーボンパーツが多様され、より一層のすごみをもたせていた。
◆会場にはプロトタイプのクルマも
発表会では、ヴェルファイアのプラグインハイブリッド仕様(プロトタイプ)と、クラウン・セダンの燃料電池仕様(プロトタイプ)も展示されていた。トヨタ自動車のサイモン・ハンフリーズ取締役・執行役員 デザイン領域統括部長は「トヨタは、すべての人が、どんな状況や立場であっても、自由に移動できるという価値を信じています。その中でも、社会におけるショーファーカーの役割は極めて重要なのです。クルマは、お客様の人生を表現し、拡張するものでもあります。それが、ゼロ・エミッションの“FCEVクラウンセダン”の艶やかな品格なのか、あるいは、アルファードやヴェルファイアのアグレッシブさやスペースなのか…。我々は、誰もが自分自身を表現できるための選択肢をお届けしていきます」と挨拶。
その上で「センチュリーは、トヨタのショーファーカーのビジョンを象徴する存在です。大胆でダイナミックでありながら、センチュリー本来の味わいも保っている。本質的にシンプルだが、深みもある…、モダンでありながら伝統を継承している。センチュリーは、美的にも概念的にも、日本ならではの感性の良さをすべて体現したのです。今日の革新が、明日の伝統になっていく。クルマの未来を変えていこう!」と語った。
匠の技など、日本のものづくりが詰まったセンチュリー新モデル。伝統美と現在のニーズを融合させた特別な車として、長く語り継がれる名車を予感させた。
※初掲出時、素材について誤りがありました。訂正してお詫びいたします。2023年9月10日
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