5月27~29日にかけて、横浜にて「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」が開催されました。クルマ関連の最先端の技術が集う展示会です。

そこで見つけた、私たちの生活を変えるポテンシャルを持った最新技術を紹介します。


クルマ関連の最新技術が集まるB to Bの展示会

 このイベントの特徴は、エンドユーザー向けではなく、自動車メーカーやサプライヤー同士が「うちで、こんな新しい技術を開発しました。そちらで使いませんか?」という、いわゆるB to B(ビジネス向け)の展示会であるということです。そのため、量産車に採用される前の最新の技術ばかりが展示されているのです。


 33回目となる今年の開催では、過去最大の612社・1516小間の出展がありました。来場者も例年並みとなる約8万人もあり、大いに盛り上がっていました。


 今回は、そんな中からクルマ単体にとどまらず、私たちの生活にも影響を及ぼすような最新技術を紹介します。


【衝撃】軽トラのCO2が農業を救う!? 「人とくるまのテクノロジー展」で見つけたヤバすぎる最新技術4選
毎年8万人ほどの人が集う、国内最大級のクルマの技術展示会「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」

農業と配達を変えるスズキの最新技術

 世の中を変える可能性を大いに感じたのはスズキの技術でした。ブースの入口に置かれたのは軽トラックの「スーパーキャリイ」。しかし、本当に注目すべきは、荷台の下に設置されたCO2回収装置です。排気ガスに含まれるCO2を取り出して、溜めておく機構が追加されていたのです。驚くのは、回収したCO2を農家のビニールハウス栽培に再利用するということです。


【衝撃】軽トラのCO2が農業を救う!? 「人とくるまのテクノロジー展」で見つけたヤバすぎる最新技術4選
スズキのブースでひと際注目を集めたのがCO2回収装置を搭載した「スーパーキャリイ」
【衝撃】軽トラのCO2が農業を救う!? 「人とくるまのテクノロジー展」で見つけたヤバすぎる最新技術4選
排気管の最後近くに分岐を設定し、排気ガスを冷やし、分離、貯蔵するCO2回収装置

 聞けば、農家のビニールハウス栽培は、室内の植物がCO2を消費してしまうため、CO2を供給するためボイラーなどで火を焚いていたというのです。それを、今回のCO2回収装置付きの軽トラックを使えば、そうした問題をクリアでき、全体としてのCO2排出を減らすことができるのです。

ビニールハウス栽培の世界を変える最新技術と言えるでしょう。


 また、階段を上り下りする、多目的電動台車「MITRA」も展示されていました。まるでおもちゃのように見えますが、スズキは本気で実用化を考えています。この5月からは八王子で、セブンイレブンの配送の実証実験にスズキの電動台車が使われているというのです。


 将来は、コンビニやスーパーから配送するロボット台車を見かけるのが、当たり前になるのかもしれません。


【衝撃】軽トラのCO2が農業を救う!? 「人とくるまのテクノロジー展」で見つけたヤバすぎる最新技術4選
段差を軽々と上り下りするデモを見せた多目的電動台車「MITRA」

電信柱で安全を見守るトヨタ

 トヨタのブースで、世界を変える可能性を見せたのが「ITSスマートポール」です。これは街中に立つ電信柱に、各種センサー、ITS無線機、LED表示板などを設置し、歩行者や自転車、自動車が交通事故になりそうになると、LED表示や無線経由などで、危険を告知してくれるという技術です。電信柱が周囲の交通安全を見守るというのです。


【衝撃】軽トラのCO2が農業を救う!? 「人とくるまのテクノロジー展」で見つけたヤバすぎる最新技術4選
電信柱にセンサーや通信機器、LED表示器などを備えるITSスマートポール

 使われている技術そのものは、目新しいものはなく、すでに実用化されているものばかり。すでに昨年から実証実験もスタートしており、普及を待つばかりとか。クルマと人間だけでなく、電信柱というインフラもあわせて事故を防ぐ、新しい世界はもう目の前に来ているのです。


6~10秒後の事故を予測・警告するホンダCI

 ホンダが用意した最新技術のひとつが協調人工知能「ホンダCI(Cooperative Intelligence)」です。AIがカメラからの映像を解析し、6~10秒後の交通事故を予測・警告してくれるというものです。


【衝撃】軽トラのCO2が農業を救う!? 「人とくるまのテクノロジー展」で見つけたヤバすぎる最新技術4選
人工知能「ホンダCI」が6~10秒後の交通事故を予測して警告をしてくれる

 クルマに取り付けられたドライブレコーダーに搭載するだけでなく、スマートフォンなどのアプリとして自転車やオートバイで利用することも可能とか。

クルマや自転車、オートバイで走るときに、AIによるアドバイスを受けるのは当たり前になる未来を感じさせる最新技術でした。


インフラを支えるダイハツのSPH

 ダイハツが展示したのが「SPH(スマート・パワー・ハブ)」です。これは「発電」「蓄電」「使用」の3方向の電力変換器のこと。これを使うことで、直流を主体としたマイクログリッド環境を実現できます。


【衝撃】軽トラのCO2が農業を救う!? 「人とくるまのテクノロジー展」で見つけたヤバすぎる最新技術4選
「発電」「蓄電」「使用」の3方向の電力変換器「SPH(スマート・パワー・ハブ)」。直流を主体としたマイクログリッド環境を実現する

 では、それにどんなメリットがあるかというと、不安定な電力環境でも、安定した電力供給が可能になるということです。災害で停電したときにこのシステムがあれば、電力の供給を維持できるのです。


 そして、そんなダイハツの技術に対して、農家などから問い合わせがきているというのです。農家で何かを飼育・栽培していて、一時も電力が途切れると困るというケースに、このダイハツの「SPH」が役立つようです。


 面白いのは、「SPH」そのものはダイハツのシリーズハイブリッド(エンジンを発電のみに使うシステム)用の一部を取り出したものだということ。クルマ用に開発した技術が、電力グリッド安定に流用できたというわけです。自動車メーカーが、インフラに貢献するという、未来を生み出す新技術と言えるでしょう。


【衝撃】軽トラのCO2が農業を救う!? 「人とくるまのテクノ...の画像はこちら >>
「SPH(スマート・パワー・ハブ)」は、ダイハツ独自開発のシリーズハイブリッドの一部を流用したものだ

【まとめ】クルマの技術がクルマだけで完結する時代は終わった

 今回の「人とくるまのテクノロジー展」を通じて強く感じたのは、自動車メーカーの技術がもはや「クルマの中」だけで完結するものではなくなったという事実です。スズキのCO2回収装置による農業支援や、ダイハツのハイブリッド技術を応用した電力供給システムに見られるように、クルマのために磨かれた技術が、農業、物流、そして防災といった社会インフラそのものを支える基盤へと拡張しています。


 クルマが単なる「移動手段」から、社会課題を解決し、私たちの日常をより豊かで安全なものにする「社会のハブ」へと進化していく未来に、大きな期待を抱かずにはいられません。


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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。


 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



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