「ビジネスは朝令暮改でいい」そう断言したのは、日本マクドナルドを創業し、外食産業初の年商1000億円企業に育て上げた伝説の経営者・藤田田。情勢が刻々と変わる現代こそ、昨日の方針を今日翻すスピードが命取りになる。
■さわやかな弁舌は男の武器だ
私は、若いころから、「40歳以上の日本人はスクラップだ」といいつづけてきた。40歳をすぎると頭が動かなくなる。頭が動かない奴はバカだ、というのが私の持論である。だから、日本には40歳以上の者はいらない。若い人間でこの世の中を引っぱっていけばいい、と主張してきた私も、59歳。もう、そろそろいらなくなった人間ではないか、と思う。
世の中は40歳までのフレッシュな感覚でことに当たるべきである。これは、いってみれば戦略、大方針である。若い感覚でやったほうがいい。ただ、若いだけでは困る。
だれにきいても「カラスは黒い」のである。しかし、「カラスが黒い」のは当たり前の話である。実は「カラスは白い」という。
あなたは「カラスは白い」ということを証明できますか。私は「カラスは白い」ということを証明できる人間でなければ、この資本主義社会は生きていけない、と思う。
もしも、あなたが、自分の奥さんでも、彼女でも、恋人でも、友だちでもいいから、その人の前で「カラスは白い」ということが証明できれば、あなたは一流のセールスマンとして通用するし、一流の社長にもなれる。この資本主義社会を生きていくことができる。
あなたの話をきいて「なるほど、カラスは白い」とうなずいたら、アウト、ダメである。それぐらい、資本主義社会というのはトリッキーなところがあるのだ。例は悪いけれど、布団を売る、ダイヤモンドを売る、住宅を売る、という場合は、すべて、この「カラスは白い」が基本になっている。
だから、この「カラスは白い」ということを証明して、相手を納得させられる人なら、布団でもダイヤモンドでも住宅でも、なんでも売ることができる。そして、資本主義社会で立派に生き残っていくことができる。
「カラスは黒い」とか「1プラス1は2である」と、当たり前のことを当たり前にいっていたのでは、だれひとり説得はできない。
「カラスは白い」ということを証明できる、さわやかな弁舌を身につけるべきである。その弁舌を武器にできれば、太陽は西から上がる、ということだっていえるようになる。
「太陽は西から上がります。たまたま、今日は東から上がりました。しかし、明日は西から上がります」
こういって相手を説得することも可能である。当たり前のことを当たり前にいっていたのでは儲からない。
■大衆レベルで攻略法を考えろ
人間はみんな、明日も健康でありたい、と思っている。明日も金を儲けたい、と考えている。健康で金が儲かれば「勝ち」なのである。
ビジネスでも、説明は不要である。勝てば官軍で、とにかく勝てばいい。勝ちさえすればすべて合法化される。合法化、英語でいう〝ジャスティファイ〟=〝正当化〟である。
ビジネスは儲からなければダメである。理由をいろいろいって「だから儲からなかった」と悔やんでみてもしかたがない。勝つことがすべてなのである。
それでは、どうすれば勝てるのか、というと、あまりレベルの高いことを考える必要はない。私はいつもうちの広告宣伝課にいっている。
「この部屋にいる、一番レベルの低い人間に合わせて、宣伝文句を考えてくれ」と。
レベルの高い人間に合わせて、すばらしいアイデアだ、といっても、そんなものは大衆受けしない。大衆というのは、それほどレベルが高いものではない。大衆に受ける宣伝をやろうとすれば、大衆レベルで発想しなければならない。
私は、広告宣伝というものは、レベルは低くてもいい、と思っている。大衆のレベルが低いからといって、これを啓蒙しようなどとは思わないことである。人を啓蒙しようと思ったら、金は儲からない。
会社は営利を追求するところである。学術論文を書くところでもなければ、人になにかを教える学校でもない。物を売って営利を追求する会社が、人を啓蒙しようとか、敬服させてやろうとか、おこがましい考えをもったら、その時点で負けである。
不安と二人三脚で生きている人を説得するうえで、一番大切なことは、断言することである。
■ビジネスは朝令暮改でいい
ビジネスの世界では、刻々と情勢は変化していく。
日本人は朝令暮改をいやがるところがある。しかし、これだけ情勢の変化のスピードがはやくなってくると、朝令暮改でいかなければ、間に合わないことがある。いつまでも、朝決めたことにこだわっていては、負けてしまうことだってでてくる。朝令暮改はよろしくない、というのは、これまでの常識だった。しかし、時代とともに常識もかわっていくものなのである。
突発性〇〇炎でもなんでもいいから、とにかく病名をつけてやると患者は安心するという。「どこも悪くありませんよ」というと、患者は納得しない。むしろ不安がる。あいまいにはいわない。ハッキリということが大切である。
「それにはこういう方法もあるかもしれませんが、その方法をとったからといって、あながちうまくいく、ということは保証できません」
こういういい方ではダメである。
「こうすればいい、勝てる。これでいきなさい」
そう断言することである。
「それにはこの方法しかない」
そう断言することである。
断言すると、きいたほうも、そうかな、と思ってその言葉にしたがう。そうすると、不思議に勝てるものなのである。
かつて、江戸から京都までは、カゴで53日かかった。今日では、東京と大阪の間は航空機を利用すれば、所要時間は40分である。東京と大阪が40分の時代に、江戸と京都がカゴで53日かかった時代の常識やものの考え方をもちだしても通用しない。
自然界では、江戸時代もいまも、梅にウグイスがくることにはかわりはない。梅にウグイスを歌によみ、月を観賞し、雪を俳句にして生きている人は、いまも昔もいる。それを愛でる人はそれはそれでいい。しかし、ビジネスの世界では、ウグイスといっていたのではダメである。
桜にウグイスが常識になることだってありうるのだ。ボタンの花にくるかもしれない。ビジネスの世界では梅にウグイスにこだわらず、必要に応じて常識をかえていき、朝令暮改はおろか、夕令暮改も必要とあればやっていくべきである。
常識を時代に合わせてかえていかなければならない。いつまでも、江戸時代や明治時代の常識を後生大事にかかえていたのでは、時代に取り残されてしまう。
■自分を第一人者だと思え
事をはじめるに当たって、他の奴も同じことを考えているのではないか、と危惧することはない。このことについては、自分自身が一番精通している、自分自身が天下の第一人者だ、と思うべきである。これがやれるのはオレしかいない、オレ以外の奴はカスだ! そう考えるべきである。
ライバルだと思うから、自分と同等だと思ってしまう。同等などと思わずに、自分には逆立ちしてもかなわない奴だ、と思うべきなのである。
私の日本マクドナルドは、昭和59(1984)年、日本の外食産業ではじめて1000億円の売り上げを記録した。1000億円の売り上げをこれまで日本の外食産業で記録したところはないから、1000億円の売り上げ達成は、栄光の記録だといえる。
1000億円突破の日は、昭和59(1984)年12月8日であった。だから、私はその約1か月前の10月26日に、ホテル・ニューオータニで3200人の大パーティーを開催した。1000億円突破という前人未到の外食産業の売り上げ1000億円の栄光の瞬間に立ち合っているという誇りは、社員の心に死ぬまで残るはずだ。
しかし、これは前人未到の記録ではあるが、1000億円で満足しているわけではない。やはり、何千億円と売るべきなのである。1988年には2000億円を売る、2000年には5000億円を売るところまでもっていきたいと思っている。
だから私は、社員に「われわれは団結してやれば、絶好のチャンスがつかめる。人生、先手を打って、トップランナーとして走れ」といっている。私のこの弁舌で社員を動かし、社員はハンバーガーを売って売りまくっているのだ。
日本人は1億無宗教だ、といってもいい国民なのである。非常にハレンチな国民ともいえる。そんな日本人に対しては、さわやかな弁舌は男の武器になる。そして、それは、頭でライバルを倒す最高の方法である。
諸君、カラスは白なのだ。本当に真っ白なのだ。さあ、そのカラスの白さを証明してみたまえ。
文:藤田田
《『凡人が億を築く法』より構成》
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