1999年7月1日、ニーナ・シモンは、イギリスで最後となる公演を行った。終演後、客席にいたウォーレン・エリスはステージに向かい、ニーナ・シモンが噛んだガムをピアノから取り、彼女のステージタオルに包んで持ち帰った。
それから20年。ガムはずっとウォーレンの手元にあり、彼のクリエーティブな営みを支える力となった。そして2019年、エリスの親友であり数々のプロジェクトを共にしているニック・ケイヴが、自身の「ストレンジャー・ザン・カインドネス(Stranger Than Kindness)」展に何か出品しないかと彼に尋ね、ガムの運命が動き出す。ウォーレンはガムを銀と金で鋳造させ、誰も予想できなかった出来事の連鎖を引き起こす。
一見取るに足らないもの、すぐに捨てられてしまうようなものが、人と人とのあいだに美しいつながりを生み出す様が、明らかになっていく。これはものや経験に意味が与えられ、精神性を帯びていくことについての物語であり、創作のプロセス、そこから生まれる作品の力、愛と友情とを讃えている。
多くのアーティストから支持を得て、9ヶ国語に翻訳。ニーナ・シモンの貴重なエピソードや写真を収録。序文:ニック・ケイヴ
『ウォーレンは、自分のアイドルのピアノから歓喜の瞬間に掠め取った記念品を、偽りなき信仰の対象となる芸術品に変えたのだ。』
ニック・ケイヴ
『. . . いちど描かれた絵画は、記された文章は、レコードに刻まれた音楽は、つくり手のもとを飛び立った瞬間に新たな、コントロールできないエネルギーを帯びて拡がりつづける。ニーナ・シモンが噛んだガムも、そんなふうにただのゴミから世界の誰かを揺さぶり、変えていくエネルギーになった。この本は、そういう「生まれ直し」の奇跡の証言集なのだった。
』
都築響一
【著者】ウォーレン・エリス
オーストラリア出身のマルチプレイヤー、作曲家。ニック・ケイヴのコラボレーション・パートナーとして、またバンド、バッド・シーズとグラインダーマンのメンバーとして最も知られている。ソロで、およびニック・ケイヴと共同で『プロポジション -血の誓約-(TheProposition)』、『ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して(The Velvet Queen)』他多数の映画音楽を手がけ、多くの賞を受賞。自身のバンド、ダーティ・スリーは1994年以来9枚のスタジオアルバムをリリース。プロデューサー、作曲家としてマリアンヌ・フェイスフル、ジュピター&オクウェス、ティナリウェンなど様々なアーティストを手掛けている。2021年、スマトラ島に、虐待を受けて保護された野生動物のための終の住処「エリス・パーク」を共同設立した。
ウォーレン・エリス著
佐藤澄子訳
発行:2ndLap
2024年7月2日発送開始
定価 4,950円(本体4,500円+税)
A5変形判(211 × 157 × 24mm)
ISBN: 978-4-9912795-3-9
オールカラー/上製本/全256ページ
投稿 熱烈な信奉者を持つ稀代のミュージシャン ニーナ・シモンによる、フォト・メモワール『ニーナ・シモンのガム——失われたものと見つかったものをめぐる回想 』本日発売 は ブルース&ソウル・レコーズ に最初に表示されました。