完璧じゃないから、弱さに寄り添える。小林親弘・潘めぐみが『銀...の画像はこちら >>



Text by 吉田薫
Text by 鈴木渉



漫画『銀魂』で知られる空知英秋のデビュー作『だんでらいおん』が、発表から24年の時を経て、Netflixにてアニメ化された。



原作は2002年に「週刊少年ジャンプ」に掲載された31ページの読切作品。

当時の読者アンケートでは最下位に近い評価だったにもかかわらず、100通以上のファンレターが届くという、新人作家としては異例の反響を呼んだ。



つねに気怠げでやる気なさそうな主人公に、少女のような見た目に反して毒舌で怪力の相方——『だんでらいおん』には、『銀魂』の原型とも言える要素がすでに色濃くある。本作が『銀魂』1巻に収録されているのも、初代担当編集・大西恒平の「『銀魂』の原点だと思った」「『銀魂』ファンにも知ってほしい」という思いからだという。



今回は、主人公・丹波鉄男役の小林親弘と、その相方である黒鉄美咲役の潘めぐみにインタビューを実施。24年を経ても色褪せない本作の魅力と、空知作品に通底するテーマについて、たっぷりと語ってもらった。



—収録を終えて、あらためて『だんでらいおん』の魅力はどんなところにあると思いますか?



小林親弘(以下、小林):キャラクターたちが終始ふざけていてコメディ色の強い作品なんですが、時に泣けたり考えさせられる言葉があったり。相反するものが一緒になっている不思議な作品で、そのギャップが面白いんです。それこそ本当に『銀魂』に通じるものがあるなと思いますね。



潘めぐみ(以下、潘):やっぱり「芯が通っている」ということを、『だんでらいおん』のときから大事にされているのがうかがえて、空知ファンとしてはすごく嬉しかったです。鉄男も美咲も、生き方に一本の筋が通っていると思いますし、そこが作品の魅力になっていると思います。



完璧じゃないから、弱さに寄り添える。小林親弘・潘めぐみが『銀魂』の原点『だんでらいおん』を語る

(左)小林親弘。1983年生まれ、愛知県出身。

アトミックモンキー所属。舞台俳優としての経験を経て声優活動を本格化。『ゴールデンカムイ』杉元佐一役、『BEASTARS』レゴシ役など。(右)潘めぐみ。1989年6月3日生まれ、東京都出身。アトミックモンキー所属。2011年『HUNTER×HUNTER』主人公・ゴン=フリークス役で声優デビュー。少年から少女まで幅広く演じ分けることで知られ、『【推しの子】』有馬かな役など人気作に多数出演。



—では、お二人が演じた丹波鉄男と黒鉄美咲は、どんなキャラクターだと思いますか?



潘:美咲は「天使」ですが、だらしなかったりいい加減だったりするんです。年頃よりも聡いところはあるんだけれど、決して完璧ではなくて、失敗や迷いも経験している。でも、だからこそ弱さを抱えた人たちと向き合えるんだと思います。



自分の不完全さを知ったうえで、誰かのそばに立って痛みや弱さに寄り添える。

それが美咲であり鉄男だなって思います。



小林:鉄男は仕事に対して普段はやる気がないタイプですが、解決したいことがあるときにはとても熱心なんです。ON / OFFが激しいけれど、芯は通っているキャラクターです。



—なるほど。空知作品らしくて気に入っているシーンがあれば、ネタバレなしで教えてもらえますか。



小林:僕は美咲の過去が描かれる4話です。美咲の達観した人への接し方というか、思いやりが一番わかりやすくて、沁みるんですよね。人間の物悲しいところと優しさが同居している、すごくいい回だと思います。



潘:ネタバレなしなので具体的に言えないんですけど、鉄男と美咲が仲間のために真実は言わないというか、優しい嘘をついているところがグッときます。2人の優しさや、人間の寂しさが描かれているなぁと思います。



完璧じゃないから、弱さに寄り添える。小林親弘・潘めぐみが『銀魂』の原点『だんでらいおん』を語る



—コメディとして掛け合いがこの作品の大きな見どころだと思うんですが、お二人で事前に相談されたりはしましたか?



小林:いや、もう完全に出たとこ勝負でした(笑)。持ってきたものをとりあえず出し合って、うまく反応し合えればいいかなって。

みんなそうだったんじゃないかな。



収録の後に映像が完成したので、絵や尺を私たちの声に合わせて調整してくれた部分もあって。本当にありがたかったです。自由度が高かった。



潘:アドリブも多い現場でしたよね。だから流れを止めないように、いかに役としてセリフをつなげるかというのが大変でした。あと、笑わないでいるのも大変で(笑)。



—掛け合いがうまくいくのは、お二人の15年以上の共演歴があるからこそと思います。あらためて、お互いの声優としての魅力をどう思いますか?



潘:小林さんは役に入るときも地声を変えず、小林さん自身の持つ声で真っ向勝負、というのがめちゃくちゃかっこいい。しかもすごく「生っぽい」んですよね。鉄男のモノローグとか本当に好きなんですけど、どういう生き方をしてきたら、あの芝居が出るんだろうって。



努力を表に出さないところが、普段はゆるいのに決める時は決める鉄男に通じるものがあるなって思います。



小林:もう毎晩この録音聞いて寝ようと思います(笑)。ありがたいです。



潘さんは役の幅がめちゃくちゃ広い人だなというイメージがずっとあって。(『HUNTER×HUNTER』の)ゴンみたいな少年もできるし女性もやるし。本当に役者としてすごいと思います。相当研究熱心で、作品に入る前にめちゃくちゃ準備して取り組んでいるんだろうな、というのは本当に感じます。



潘:嬉しいです、ありがとうございます!



完璧じゃないから、弱さに寄り添える。小林親弘・潘めぐみが『銀魂』の原点『だんでらいおん』を語る



—役作りにあたって、意識していたことはありましたか?



小林:あまり作り込みすぎないようにしていました。物語の中心にいる2人が強すぎると、周囲の個性的なキャラクターが目立たなくなってしまうから。自分を抑えることで、他者を際立たせる、というのは意識していたかもしれないですね。



潘:美咲は感情や表情にすごく振り幅があって、どんな声を出しても許される感じがあったんです。アドリブも結構許されていたし、本当に自由にやらせてもらえました。ディレクションがないまま進んでいったので「これでよかったのかな……」と思っていたら全部使ってくださっていて(笑)。



空知先生もアニメを作るスタッフの方々に「おまかせします」というスタイルだとうかがっていたので、本当にありがたかったですね。「その人が演じたら、もうそれがそのキャラクターになる」というお互いに対しての信頼感がある現場でした。



—では、演出の方からは具体的な要望はあまりなかったのでしょうか?



潘:「面白くなればなんでもいいです」と。



小林:「物語でここが一番大事なポイントだな」というのは、相談せずに何となくみんなで同じ方向を向けていた気がしますね。空知先生作品のイメージをみんなが共有していたからだと思います。



完璧じゃないから、弱さに寄り添える。小林親弘・潘めぐみが『銀魂』の原点『だんでらいおん』を語る



—あらためて、24年前の作品がアニメ化されることをどう受け止めていますか?



小林:当時ファンレターを送ってくれた100数名のために届けたいですし、もっと多くの人にも見ていただきたい作品だと思っています。24年前の、しかも読切作品がアニメ化されるのはなかなかないことだと思うので、貴重なことだと感じています。



潘:本当にそうですよね。個人的には、『銀魂』ファンなのに一度も作品に関われないままで悔しかったんです。でも今回、アニメ化のおかげで、空知先生のしかもデビュー作である『だんでらいおん』に美咲として関わることができて、もうマジで夢を叶えたオタク代表と胸を張りたいです(笑)。



—最後に、これから見る方へメッセージをお願いします。



潘:本作も含めて空知先生の作品には、人の喜びや悲しみ、怒りや憎しみ——そういう普遍的なものが描かれていると思います。

だからこそ、いつ、どこで見ても共感できる。ちいさなお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、たくさんの方にぜひ見てほしいです。



小林:世界中の方がこれを見てどう思ってくれるのかというのも含めて、楽しみにしています。



完璧じゃないから、弱さに寄り添える。小林親弘・潘めぐみが『銀魂』の原点『だんでらいおん』を語る

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