明治大学 総合数理学部 宮下芳明教授と東京大学 中村裕美特任准教授(受賞対象論文の発表時は明治大学大学院博士前期課程に在学)が、イグ・ノーベル賞(栄養学)を受賞した。

イグ・ノーベル賞(Ig Nobel Prize)は、ノーベル賞のパロディー(裏ノーベル賞)として「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に対して贈られるもの。
科学ユーモア雑誌「Annals of Improbable Research」の編集者マーク・エイブラハムズ氏が 1991 年に創設し運営されている。

今回の受賞は、宮下芳明教授と当時 明治大学大学院博士前期課程に所属していた中村裕美特任准教授が2011年に発表した論文「Augmented Gustation using Electricity」に対するもの。この論文は、微弱な電流を流すストロー・箸・フォークによって飲食物の味を変えて食体験の味覚を拡張するビジョンを掲げたものである。

この受賞を受けて、宮下教授は、「今回の受賞をとても光栄に思います。受賞対象論文は13年前に開発した技術に関するものですが、電気味覚技術や味覚メディア技術はその後、多方面に渡る発展と社会実装に至っています。そうした広がりや今後への期待が込められた受賞だと捉え、これからも研究を推進していきたいと思います」とコメントした。


宮下芳明教授は今回受賞対象となった「電気味覚」以外にも、味覚センサーの測定値に基づいて任意の味を再現する味覚ディスプレイTTTVなど、多くの味覚メディア技術を開発している。「白ワインを赤ワインの味に変える」「カカオを異なる産地の(より高級な)味を変える」「毒キノコの味を安全に体験できるようにする」「甲殻アレルギーでも安全にカニの味を味わえるようにする」など、味覚の常識を塗り替える研究成果を多く発信しており、10月末に開催される国際学会では、「口臭を起こさずにニンニクを味わう方法 」を発表する予定だという。

このフォークは香りをコンピューターで制御するというもの。TTTV3と組み合わせることで、ニンニクを使用しないペペロンチーノの食体験ができるなど、口臭を起こさずにニンニクを味わうことができる。