日本航空(JAL)が、国産のクラフトウイスキーの機内販売を充実させる。担当者は「ウイスキーに興味を持っていただき、ゆくゆくは日本各地の蒸留所にも足を運んでもらえたら」と話す。

○国産ウイスキーを知るきっかけに

JALグループでは、移動を通じた「関係・つながり」の創出に注力している。その一環として、国産ウイスキーをハブに「五感をくすぐる本物の体験」や「人生を豊かにするつながり」の提供を目指す。

JAL国際線の機内販売で2026年度、2027年度の上期に取り扱うジャパニーズクラフトウイスキーの主な蒸留所と銘柄は、以下の通り。価格帯は2万円~3万円のものが中心となる。

福島県の安積蒸溜所(笹の川酒造)は「シングルモルト安積 シャトーバタイエ」などを提供。太くて短い銅製のポットスチルによる丁寧な蒸溜、厳選された麦芽の使用、多彩な樽熟成によって、国産らしいバランス感と個性を兼ね備えたウイスキーをつくっている。

埼玉県の秩父蒸溜所(ベンチャーウイスキー)は「イチローズモルト秩父」などを提供。担当者は「空の旅は、単なる移動手段ではありません。私たちは、機内における時間を贅沢に楽しんでいただけるよう、ウイスキーの味わいをデザインしました。秩父の原酒に海外の原酒をブレンドしており、しっかりとした個性、ふくよかさ、繊細さ、複雑さ、スモーキーさを体感いただけます。良いウイスキーに国境はないと言いますが、世界のウイスキーを集めたイチローズモルトでワンワールドをお楽しみください」と紹介する。

鹿児島県の嘉之助蒸溜所(小正嘉之助蒸溜所)では140年にわたる焼酎づくりで培った技術をウイスキーづくりに活かしている。
3種のポットスチルで蒸留し、多様な樽で熟成させた個性豊かな味わいが特徴。「シングルモルト嘉之助」などを提供する。

大分県の久住蒸溜所(津崎商事)は清らかな湧水と冷涼な気候に恵まれた阿蘇の土地にあり、フルーティー×複雑×力強さを備えたウイスキーをつくっている。日本航空限定のプライベートボトルを提供する。

北海道の厚岸蒸溜所(堅展実業)は「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー春分」などを提供。ボディが厚く、ピーティーでソルティながらもドライフルーツのようなコクや甘味などのフルーティさを感じられるウイスキーとなっている。

山形県の遊佐蒸溜所(金龍)では鳥海山の伏流水や遊佐の冷涼な気候、日本海から吹き込む風といった自然環境を最大限に活かしている。華やかさと落ち着きを兼ね備えたフルーティな味わいの「シングルモルト遊佐 ミズナラカスク」などを提供する。

静岡県の井川蒸溜所(十山)では、南アルプスの天然湧水、南アルプスの地形が生み出す冷涼多湿な気候、豊富な広葉樹資源を活かしたウイスキーづくりに取り組んでいる。提供する「シングルモルト デッサンシリーズ」は、クリアで甘みのあるノンピート原酒を複数ブレンドした、華やかなウイスキーが特徴。

本坊酒造では、鹿児島県のマルス津貫蒸溜所・山梨県のマルス駒ヶ岳蒸溜所にて日本の風土を活かしたジャパニーズクラフトウイスキーづくりに取り組んでいる。「シングルカスク津貫」は、2019年に蒸溜した津貫蒸溜所の原酒を梅酒樽で熟成した原酒の中から選りすぐった1樽を瓶詰めしたもの。
広島県のSAKURAO DISTILLERY(サクラオブルワリーアンドディスティラリー)は、広島県産の原料にこだわった純国産のジンやシングルモルトウイスキーをつくっている。「シングルモルトジャパニーズウイスキー桜尾」は、はちみつやアールグレイのような香りがあり、口に含むとビターチョコのようなまろやかな甘みと程よい酸味が広がる。

日本航空 執行役員の西田真吾氏は、JAL Group Management Vision 2035について紹介。「JALグループの強みを活かした価値を提供することで、サステナブルでウェルビーイングな未来を目指します」と話す。現在は”非航空領域”における事業にも力を入れている。「2035年までに、マイル / 金融・コマースの非航空事業+LCC領域において収益の半分くらいを担えれば」と西田氏。

「人間は、用がないところには移動しないもの。でも関心を持つ出来事があると、そこに移動したいという欲求が生まれます。ウイスキーをきっかけに日本各地を訪れ、現地で醸造しているお酒との出会いを楽しんでもらえたら幸いです」(西田氏)

また日本航空 ライフ・コマース事業部長の中村健太郎氏は、JALでは2023年より機内販売で日本各地のクラフトウイスキーを販売してきたと紹介。機内誌やプレスリリース・SNSでその魅力を伝え、ラウンジや機内提供で実際に体感してもらい、体験イベント・蒸留所ツアーで深堀りしてもらえる横断的な取り組みを進めてきた、と振り返る。

「まずはJALの国際線にご搭乗いただいた国内外のお客様に向けて、ジャパニーズクラフトウイスキーを知っていただく機会になれば。日本各地に、情熱を持った蒸留所があります。
是非、そうした地域にも足を運んでいただいて、土地の空気を体感し、さらにウイスキーのファンになってもらえたらと思います。JALでは、少しでもそのお手伝いができれば幸いです」と中村氏。いずれも量産できない貴重なウイスキーではあるが、今後は国内線の機内販売にも販路を拡大していければ、と話していた。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら
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