「家族間のお金のやり取りだから、そこまで厳密にしなくても大丈夫」――そう考えている人は少なくないかもしれません。

しかし、親が通帳や印鑑を管理していたことで、“生前贈与”ではなく「名義預金」と判断されるケースがあります。


今回は、『事例でわかる 失敗しない相続対策入門』(税理士法人チェスター 監/円満相続を支援する士業の会 編/株式会社エッサム 著/あさ出版)から、相続税対策で起こりがちな落とし穴について解説した内容を抜粋して紹介します。
○相続税対策が思いがけないトラブルを招く

▼父が亡くなる前に預金通帳をもらったCさん
Cさんは、父が亡くなる数年前にCさん名義の預金通帳を受け取りました。この通帳には毎年100万円ずつ、20年間にわたり入金されていました。ところが、父が亡くなり、相続税の申告書を提出したところ、税務調査を受け、その預金は名義預金として相続税の課税対象になると指摘されました。父もCさんも「生前贈与」という認識だったのに、相続税対策が無駄になるどころか相続税の本税のほか加算税・延滞税の負担が大きくなりました。

○名義預貯金とは?

被相続人が口座開設等のための資金を拠出し、その後の口座の管理・運用などから被相続人の預貯金口座と認められるものは、その名義にかかわらず、相続税の課税対象となります。したがって、被相続人名義以外の預貯金口座であっても、被相続人の財産と認められるものは、税務調査において、名義預貯金と判断される可能性が高いといえます。

贈与の契約自体は贈与する人、される人の両者の合意があれば成立しますが、贈与したお金を入金した預貯金口座を保管していたのは親だったとすると、名義預金を疑われます。つまり、親が預金通帳を保管していると、贈与が成立していないと判断される可能性が高いのです。

父を信頼していたCさんですが、預金通帳を受け取る前はいくら入金されているか知らず、受け取ったあとも使わずに保管していたことが原因です。
○名義預金と判断されないための対策

名義預金と判断されないためには、「贈与契約書を作成する」「銀行振込で贈与する」「通帳や印鑑は贈与された人が管理する」ことが大切です。

家族でお金のやり取りをするのに、契約書をつくったり、銀行振込をしたりするのは、大げさと感じるかもしれません。
しかし、贈与契約が成立したことを証明するためには、これらの証拠を残しておくことが大切です。贈与であるという客観的な事実、証拠があれば無用なトラブルを避けることができます。

また、預貯金口座は贈与を受けた人が管理するようにします。「無駄遣いしないように管理してあげよう」という親心で通帳や印鑑を預かることもありますが、名義預金だと判定される可能性が高くなるので注意しましょう。

○『事例でわかる 失敗しない相続対策入門』(税理士法人チェスター 監/円満相続を支援する士業の会 編/株式会社エッサム 著/あさ出版)

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