牛乳より手軽で、薬ほど大げさでもない。骨や健康のための「保険」として、優秀に思えます。
カルシウムサプリで心筋梗塞リスクが上がる?
ニュージーランドのオークランド大学などの研究チームは、カルシウムサプリと心筋梗塞などの関係を調べた複数の試験をまとめて分析しました。参加者をくじ引きのように「カルシウムを飲む群」と「偽薬を飲む群」に分けて比べる、医学では質の高い研究方法です。対象は主に1日500mg以上のカルシウムをサプリで飲んでいた人たち。約1万2000人分のデータをまとめたところ、カルシウム群ではなんと心筋梗塞のリスクが約3割増えていました(※1)。
もちろん勿論、「飲んだら必ず心筋梗塞になる」わけではない。ただ、カルシウムサプリは健康に気を使う人ほど長く飲みがちです。
肝心の骨折予防効果も、思ったほど強くない
では、肝心要の骨折の予防効果はどうだったのでしょうか。実は、ここも微妙な結果です。2015年にBMJに掲載された大規模なレビューでは、カルシウムサプリは骨折全体を11%、背骨の骨折を14%減らすという結果でした。一見悪くなさそうですが、寝たきりにつながりやすい太ももの骨折や、手首の骨折では、明確な予防効果はありませんでした。さらに、研究の質が高いものだけに絞ると、どの部位の骨折にも明らかな効果は認めなかったとのことです(※3)。
同じ論文では、約5年半サプリを飲んで「骨折を1件防ぐ」ために必要な人数は77人。つまり77人が毎日飲み続けて、ようやく骨折を1件防げるかどうかという計算です。別の研究でも、カルシウムを増やしたときの骨密度の上昇は0.7~1.8%程度。効かないとは言いませんが、「とりあえず全員が飲むべき」と言えるほどの効果でもありません(※4)。
糖尿病の人は特に注意したい
さらに気になるのが、糖尿病のある人。2024年の医学誌『Diabetes Care』に掲載された研究では、平均年齢56歳の約43万人を、心臓・血管の病気については中央値8年、死亡については中央値11年追跡しました。その結果、糖尿病のある人でカルシウムサプリを習慣的に使っていた群は、心筋梗塞や脳卒中などの血管の病気の発症リスクが34%、それらによる死亡リスクが67%、すべての死亡リスクも44%高いという結果でした(※5)。
これは観察研究なので、「サプリが原因」と断定はできません。もともと健康不安がある人ほどサプリを飲んでいる、という影響もあるでしょう。ただ、糖尿病の人はもともと動脈硬化や腎機能低下のリスクがあります。そこに必要以上のカルシウムを摂取することで動脈硬化に拍車がかかり、その延長線にある心筋梗塞などの病気のリスクが高くなったとも考えられるため、漠然とした長期間の使用には注意を払うべきです。
サプリは血中カルシウムを急に上げやすい
「ではカルシウム自体が悪いのか」といえば、そうではありません。問題は摂り方です。魚、乳製品、大豆などから摂るカルシウムは、食事全体の中で比較的ゆっくり吸収されます。一方、サプリはまとまった量が短時間で入るため、血液中のカルシウム濃度が急速に上がりやすい。行き場を失った大量のカルシウムが血管壁に沈着することで、心臓や血管に負担をかける可能性が考えられています。
サプリは「健康食品だから安全」では決してなく、毎日飲むなら、薬に近いものとして扱うほうが賢明かもしれません。
骨を守るために、サプリを飲む前にやるべきこと
特にビタミンDは見落とされがち。
日本人の食事摂取基準2025年版では、18歳以上のビタミンDの目安量は1日9.0µg。足りなさそうな人は、鮭、サバなどの魚や、きくらげ、しいたけなどのキノコ類などを意識してみて下さい。日光も大事で、地域・季節で変わりますが、顔や手に浴びる程度なら夏で10分前後、冬で30~50分程度が目安です。
運動も王道。早歩き、階段、スクワットなどで骨と筋肉に負荷をかける。補足として、高齢者299人の研究では、軽いジャンプのような骨へ衝撃が入る活動が多い人ほど、太ももの骨密度低下が少なかったという報告もあります。信号の待ち時間などに、つま先立ちして無理ない範囲で踵を落とすような動作を取り入れてみてもいいかも。
カルシウムサプリが必要な人もいます。食事量が少ない人、医師から治療の一部として指示されている人は勝手にやめるべきではありません。ただ、「骨にいいから」と自己流で何年も飲んでいるなら、一度見直す価値はあります。
<文/岡本宗史>
参考資料
1. Bolland MJ, et al. Effect of calcium supplements on risk of myocardial infarction and cardiovascular events: meta-analysis. BMJ. 2010;341:c3691. PMID: 20671013.
2. Bolland MJ, et al. Calcium supplements with or without vitamin D and risk of cardiovascular events: reanalysis of the Women’s Health Initiative limited access dataset and meta-analysis. BMJ. 2011;342:d2040. PMID: 21505219.
3. Bolland MJ, et al. Calcium intake and risk of fracture: systematic review. BMJ. 2015;351:h4580. PMID: 26420387.
4. Tai V, et al. Calcium intake and bone mineral density: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2015;351:h4183. PMID: 26420598.
5. Qiu Z, et al. Associations of Habitual Calcium Supplementation With Risk of Cardiovascular Disease and Mortality in Individuals With and Without Diabetes. Diabetes Care. 2024;47(2):199-207. PMID: 37506393.
6. Miyamoto H, et al. Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry. J Nutr. 2023;153(4):1253-1264. PMID: 36806449.
7. Savikangas T, et al. Changes in femoral neck bone mineral density and structural strength during a 12-month multicomponent exercise intervention among older adults – Does accelerometer-measured physical activity matter? Bone. 2024;178:116951. PMID: 37913888.
【岡本宗史】
東京大学大学院医学系研究科を修了後、埼玉県のクリニックにて実臨床に従事。「健康・エイジングケア」に関する知見を、医学的視点から紐解き、メディアやSNSを通じて多角的に発信している。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」評論家 等。
Instagram:@soshi_okamoto
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