伊藤匠叡王に斎藤慎太郎八段が挑む第11期叡王戦五番勝負(主催:株式会社不二家)は、伊藤叡王連勝で迎えた第3局が5月3日(日)に愛知県名古屋市の「か茂免」で行われました。対局の結果、意表の四間飛車を駆使して戦った斎藤八段が116手で勝利。
両者秒読みの激戦を制して1勝を返しています。
○カド番をしのげるか

2連敗と後がなくなった斎藤八段。後手番で迎えた本局は角道を止める雁木含みの序盤戦を選びます。玉側の端歩を突いて態度を保留したのが細かな工夫で、先手が早繰り銀の姿勢を見せたときに四間飛車にしたのが観戦者もびっくりの力戦策でした。居飛車側が穴熊に組みづらいのを見越した駆け引きで、実戦は力戦調の角交換四間飛車に落ち着きました。

5筋の歩交換から戦いが本格化。先にペースをつかんだのは先手の伊藤叡王でした。愚直な桂打ちで銀取りをかけたのは序盤に打った自陣角を生かした攻めで銀得の実利を獲得。とはいえ後手の斎藤八段も金銀の厚みで先手の飛車を抑え込みつつ玉側の端攻めに出られている主張点はあり、局後の検討では両者自信なしの難解な中盤戦の感想で一致しました。

○一分将棋の好勝負

ともに持ち時間を使い切って形勢不明の終盤戦に突入。小駒が活躍する玉頭戦のなか斎藤八段に好手が出ました。自玉そばに金が迫られた状況から開き直って反撃に出たのが読み切りの一手。
香を渡しても自玉に詰みがないのが重要な条件で、安い駒を使って先手玉に詰めろをかけ続ければ徐々に道が開けてきます。筋に入ってからも斎藤八段の攻め手は冷静です。

終局時刻は19時40分、最後は自玉の受けなしを認めた伊藤叡王が投了。感想戦では最終盤で先手から角をぶつけて金駒を質に入れる手が発見され、それなら伊藤叡王も有望だったとされました。1勝2敗と奪取に望みをつないだ斎藤八段は「最後に残っていたのは幸運だった」と熱戦を振り返り、伊藤叡王は「自信のない局面が多かった」と総括しました。

水留啓(将棋情報局)
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