藤井聡太名人に糸谷哲郎九段が挑戦する第84期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、藤井名人2連勝で迎えた第3局が5月7日(木)・8日(金)に石川県七尾市の「和倉温泉 日本の宿 のと楽」で行われました。対局の結果、相雁木のねじり合いから抜け出した藤井名人が130手で勝利。
○自分の土俵で
2連敗であとがなくなった糸谷九段が選んだのは先手番での雁木。先に角道を止めるだけに消極的ですが、名人挑戦を決めた永瀬拓矢九段戦(プレーオフ)などの勝負所で投入している得意形とあって、本局への意気込みがうかがえます。この日は後手の藤井名人が穏やかに応じたことで盤上は相雁木の持久戦へと移行。糸谷九段はやがて右玉に組み換えました。
前例の少ない中盤戦にも糸谷九段の指し手のペースは落ちません。金銀をナナメに連結させる陣形はいわゆる「飛騨の中飛車合掌造り」(つのだじろう『5五の龍』から)を想起させるバランス良い構え。1日目は糸谷九段が存分にその持ち味を発揮して終了しました。とはいえ形勢は難解で、2日目は守勢に回っていた藤井名人の懐深い指し回しが光る展開に。
○藤井印の毒まんじゅう
先手が2枚目の自陣桂を打って攻めの継続を図ったところが本局のハイライトでした。桂を跳んでくる手は意にも介さず、自身の角頭タダのところにジッと歩を打ったのが藤井名人の怪しい一手。注文通り銀で食いついた糸谷九段が局後この手を後悔することになったことから、観戦したファンは「恐ろしい」「毒まんじゅうだったか」と大いに盛り上がりました。
タダ捨ての歩の効果はすぐに出てきます。誘い出された銀をめがけて後手からも控えの桂を打ったのが大局観に基づく好手。攻め合いの中で争点が変わったことで、いつのまにか先手の自陣桂のほうは出番のない遊び駒になっています。最後も圧巻で、藤井名人は40手近い即詰みを読み切っていました。終局時刻は18時11分、最後は糸谷九段が詰みを認め投了。
一局を振り返ると序盤は糸谷九段が持ち味を発揮する展開ながら、中盤以降は藤井名人の勝負術と正確な終盤力が光った好局に。3連勝スタートとした藤井名人がこのまま4連覇を決めるか、注目の第4局は5月16日(土)・17日(日)に大阪府高槻市の「高槻城公園芸術文化劇場」で行われます。
水留啓(将棋情報局)











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