ハイクオリティな作品を多数生み出し、国内にとどまらず海外にも多くのファンを持つ日本のアニメ。人気の熱源となるアニメーション制作スタジオの作画や演出も多様化が進み、スタジオ単位で作品を探すファンも多い。

とりわけ近年は新鋭スタジオの活躍が目覚ましく、『雨を告げる漂流団地』『SPY×FAMILY』『呪術廻戦』など注目作やヒット作が次々と生まれている。そんな喜ばしい状況をより楽しむため、今回は注目の新鋭スタジオとその作品を紹介していく。

【動画】スタジオコロリド長編最新作『雨を告げる漂流団地』本予告

■スタジオコロリド

 2011年に設立。近年は『ペンギン・ハイウェイ』(2018)『泣きたい私は猫をかぶる』(2020)を公開。続く第3作として、9月16日に最新作『雨を告げる漂流団地』が全国公開、Netflixにて全世界独占配信された。

 劇場用長編アニメーションをコンスタントに発表しており、アニメファンのみならず映画ファンからも注目を浴びている。このほか、漫画家・久保帯人原作の『BURN THE WITCH』や、『ポケットモンスター ソード・シールド』のオリジナルWebアニメ「薄明の翼」といったアニメを手掛ける。

 柔らかな線と色彩で描かれた温かみのあるキャラクターデザインは世代を選ばず、そのキャラクターたちが瑞々しく躍動する姿を描き出す、アニメーションの原点への挑戦を続けるスタジオだ。

<注目の新作>
『雨を告げる漂流団地』


 『ペンギン・ハイウェイ』を手掛けた石田祐康監督の最新作。大海原を漂流する団地を舞台に子供たちが初めて体験する別れの旅の物語。9月16日より全国公開、Netflixにて全世界独占配信中。

 かつて同じ団地で育った幼なじみの航祐(CV:田村睦心)と夏芽(CV:瀬戸麻沙美)。
夏休みのある日、取り壊しの決まったその団地にクラスメイトとともに忍び込むと不思議な現象に巻き込まれ、気づけば団地ごと大海原へ…。果たして航祐たちは、元の世界へ戻れるのか?

■CLAP

 マッドハウスを経て、フリーランスで『この世界の片隅に』のプロデューサーを務めた松尾亮一郎が2016年に設立。

 ここで紹介しているスタジオの中では最も新進で、映画制作に注ぐ若者たちの情熱を描いた映画『映画大好きポンポさん』(2021)を手掛けた。劇場作品、短編アニメーションなどの企画開発と制作を中心に活動しており、今後の作品にも期待が高まる

<注目の新作>
『夏へのトンネル、さよならの出口』


 八目迷氏による同名ライトノベルをアニメ化。来年10月放送の『BLEACH 千年血戦篇』でも監督を務める田口智久が監督・脚本を務める。9月9日より全国公開中。

 高校生の塔野カオル(CV:鈴鹿央士)と花城あんず(CV:飯豊まりえ)は、欲しいものが手に入る不思議なトンネル“ウラシマトンネル”を調査し、それぞれの願いをかなえるために協力関係を結ぶ。

■TRIGGER

 『新世紀エヴァンゲリオン』『天元突破グレンラガン』を送り出してきたガイナックスに所属していたクリエイターを中心に、2011年に設立。

 近年では『キルラキル』『リトルウィッチアカデミア』『SSSS.GRIDMAN』などのテレビアニメシリーズから、『プロメア』といった長編アニメーションまでオリジナル作品を手掛ける。スタイリッシュなキャラクターデザインとオタク心に刺さるストーリー展開を持ち味に、多くのファンを獲得している。

<注目の新作>
『サイバーパンク エッジランナーズ』


 Netflixにて9月13日より全世界独占配信中。CD Projekt REDが手がけるゲーム『サイバーパンク2077』を原作とした、10話構成の独立したストーリー。


 テクノロジーと人体改造が一般化した未来都市ナイトシティを舞台に、すべてを失った主人公の少年が生き延びるためにアウトローの傭兵“サイバーパンク”として戦う姿が描かれる。原作ゲームの持つバイオレンスな雰囲気を存分に表現した作品だ。

■MAPPA

 2011年設立。2016年には大ヒットを記録した『この世界の片隅に』を制作。その後も『ユーリ!!! on ICE』『BANANA FISH』『どろろ』などテレビアニメで話題をさらってきた。2021年には『劇場版 呪術廻戦 0』と、同作のテレビシリーズ『呪術廻戦』も手掛けている。

 アクションシーンの作画クオリティの高さを取り上げられることが多いが、さまざまなタイプの作品を手掛けており、多彩なバリエーションに定評がある。作品ごとに色が変わるのもMAPPAの強みと言える。

<注目の新作>
チェンソーマン


 テレビ東京系6局ネットにて10月11日24:00より放送開始。「少年ジャンプ+」(集英社)にて第2部が連載中、コミックス累計発行部数1500万部を突破した藤本タツキによる同名漫画が原作のダークヒーローアクション。

 悪魔が存在する世界で、「チェンソーの悪魔」ポチタと共にデビルハンターとして暮らす少年デンジ。親が遺した借金返済のため、貧乏な生活を送る中、裏切りに遭って殺されてしまう。
薄れる意識の中、デンジはポチタと契約して悪魔の心臓を持つ「チェンソーマン」としてよみがえる。

■WIT STUDIO

 過去には『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』といった注目作、最近ではテレビシリーズ『SPY×FAMILY』『王様ランキング』で確かな実績を残すスタジオ。

 『進撃の巨人』の立体機動アクションや、今年公開された長編アニメ映画『バブル』のパルクールシーンなど、重力を感じさせないアクションの作画が特徴的。今年で設立10周年を迎える。

<注目の新作>
『王様ランキング‐勇気の宝箱‐』


 フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて2023年放送予定。柔らかな絵柄と壮大な世界観、重厚なストーリーがSNSを通じて話題を呼んだ漫画を原作に、2021年10月から2022年3月にかけて放送されたアニメ第1期の続編となる。

 耳が聞こえず、話すことができない非力な王子・ボッジと親友・カゲの知られざる“勇気の物語”が描かれる。

 現在は実績のある老舗でなければ人気作が生まれないということは決してなく、テレビアニメにおいても劇場アニメにおいても業界をけん引している印象さえ受ける。多様化するスタジオの活躍と魅力的な作品によって、今後のアニメシーンのさらなる過熱が期待される。

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