宝島社「このマンガがすごい!2012年版オンナ編」で1位を獲得した久住昌之・水沢悦子による人気漫画をドラマ化した、MBS・TBSほかで放送中の深夜ドラマ「花のズボラ飯」で民放連ドラ初主演の女倉科カナに話を聞いた。

「花のズボラ飯」主演・倉科カナインタビュー フォトギャラリー

 演じるのは、夫の単身赴任を良いことにズボラな性格を発揮しながらシングルライフを満喫するヒロインの花。
家事洗濯は苦手で部屋は汚れ放題、食事もありもので済ませてしまう。一人暮らし“あるある”が散りばめられた本作だけに「役作りはまったくしませんでした」と倉科も等身大で挑んでいる。第1話では花の住む散らかった部屋を舞台に、倉科が一人芝居を繰り広げる。「視聴者の方が見ていて飽きないように心がけて演じた」と撮影を振り返るが、言うは易く行うは難し。「楽しいという言葉は簡単だけれど、それは一握りの部分。苦しくて大変なことも多い」と芝居の奥深さを物語る。


 2009年にNHK連続テレビ小説のヒロインに抜擢され、女優として3年の月日を経たが「手応えはまだまだ」と苦笑する。自分にとっての短所と長所は「自分がない」ことだが「自分がないからこそ、役に出会って色々な色に自分を変化させることができるし、それによって自分がどんな風に変化を遂げるのかを知るのが楽しい」と語る。女優業は倉科にとって「自分探しの場所でもある」という。役柄を演じることによって「自分自身も知らなかった新しい一面を発見することがありますね。ママたちの疑心暗鬼を描いた『名前をなくした女神』の際には、良い人だと思っていた自分の中に、嫉妬心や渦巻くものがあったことに驚いた」と初めて知る自分と対面することも。

 女優として頂点を極めたい、という思いはなく「憧れの女優さんはいますが、どんなに願っても自分がそこまでの高みに行けないことはわかっているので、自分の興味ある役柄や作品に出会って、自分自身を変化させていくのみ」というスタンスを持っている。
一般的な倉科のイメージから考えると、このリアリスティックな発言には大きな溝がある。倉科曰く「実際は淡々と喋るし、現実的にものを考えて嫌なものは嫌とはっきり言ってしまうタイプ」だそうで「ホンワカ系の可愛い仕草で可愛い声を出す人というイメージを抱いている方が多いみたいで、会う人会う人にイメージと違う、サバサバしていると言われることが多い」と不思議がる。そんな世間とのギャップに対して「24年間、皆さんを裏切り続けて生きてきた」と楽しそうに答える倉科だが、そもそも女優とは虚像を実像のように投影する仕事である。「自分がない」ということは、すべてに対して受身のように思えるが、撮影期間中に倉科を襲うある症状こそ、受身ではない倉科の女優魂を証明するものだ。

 本作の見所は花が作る一品料理と、それを食べるときの至福の表情。小食という倉科だが「撮影では何度も食べなければいけないので、朝と昼にカレーを食べて、午後にはドライカレー、その後にお茶漬けとケーキというスケジュールの日もありました」と高カロリーに悲鳴を上げる。
体重増加を心配してしまうが「新陳代謝もいいし、撮影では頭をフル回転させているので、逆に食べることを意識しないと痩せてしまう」と意外な状況にある。それは今回に限ったことではなく、女優として撮影に臨むときには必ず現れる症状らしい。倉科は役柄について熟考する中で、知らず知らずのうちに自らを追い込んでいるのだ。「自分がどんな色に染まって変化していくのか」と倉科は口にしたが、その言葉の奥には自らを役色に染めるための努力が隠されていた。

 ちなみに、美味しい表情を出すために「天に昇るような顔」を心がけたという倉科。自身の思い出の一品は「母親がよく作ってくれたダシ巻き玉子」だとか。


倉科カナ主演「花のズボラ飯」は、MBS・TBSほかにて放送中。

(ヘア&メイク:宮本愛、スタイリスト:興津靖江)