
「多重債務者救済」「弱者救済」を旗印に、改正貸金業法が完全施行され、2 年が経過した今、約500万人の健全な利用者の多くが行き場を失っているという。当時、法律立法に携わった元自民党・金融調査会小委員会委員長の増原義剛氏は、著書『「弱者」はなぜ救われないのか―貸金業法改正に見る政治の失敗』の中で、法改正の経緯を振り返り、日本の政治がいかにポピュリズムに翻弄されているかを明かしている。そんな増原氏と、自らのブログでも本書を紹介し、日本の政治が抱える問題点を指摘している金融作家の橘 玲氏が、貸金業法改正を振り返り、そこから見える日本の政治を論じた。
善意の金利規制が、結果的に多重債務者を
増やしてしまった
橘 2006年に成立した改正貸金業法は、経済学的側面からも、常識的に考えても理不尽で、なぜこのような法律が通ってしまったのかと、当初から疑問に感じていましたが、増原さんの著書を読んで、そうした疑問が解消されました。
当時、与党自民党の金融調査会小委員会の委員長を務めたお立場から、そもそも問題の本質はどこにあったとお考えですか。
増原 われわれが検討に至った前提となるポイントは3点あります。まず、一つは、議員立法で段階的に下げていった出資法の上限金利ですが、29.2%とした2003年の規定には「施行3年後に見直す」という条項が含まれていて、ちょうどその3年目に差し掛かっていたということがあります。