いわゆる「キャラクター商法」というものが人類史上、いつ頃から始まったのかはわからないが、もっとも古く、かつ世界的に親しまれてきたものの一つが「キューピー」だろう。その容姿から赤ちゃんのようにも、またその名前から天使のようにも見えるキューピーがこの世に誕生して、この12月でちょうど100年を迎える。
それを記念した展覧会「誕生100年 ローズオニールキューピー展」が、12月10日から24日まで東京・銀座の松屋8階で開催されている。そこで、展示されている品々をなぞりながら、キャラクターとしてのキューピーについて考えてみたい。

キューピーが登場したのは1909年、アメリカの婦人向け雑誌「レディースホームジャーナル」12月号でクリスマス特集の短編ポエムに添えられたイラストが最初。クリスマスの晩に子どもの枕元にやってきて、幸せをもたらす擬人化された存在として無数のキューピーたちが集団で描かれている。ただし、このキューピーたちは決して天使=Cupidではなく、「Kewpie」というスペルの、古くからある言い伝えなどとは別の擬人化キャラとして扱われている点に注目したい。

つまり、音のニュアンスから誰もが知っている「天使」のイメージを残しつつ、全く新しいキャラを創造したということ。言うなれば、親近感と斬新さを融合させた、現代のキャラクター作りを1世紀先取りしたその道の元祖そのものなのだ。

続く1910年1月号では、当時の最先端技術であるライト兄弟による世界初の飛行機に乗って冒険の旅に出るキューピーたちのイラストが登場。世界に革命をもたらした飛行機とキャラクターブームの融合は、今で言えばネットビジネスにキャラクターを絡ませる手法に通じる、まさに時代の先取り。これらを機にブームは爆発的なものとなり、3D化、すなわちキューピー人形の登場や広告への採用など元祖メディアミックスが展開されていく。その名前は「アンネの日記」にも登場する。

そしてブームは世界へ。
そこで重要な役割を果たしたのが日本だ。1913年(大正2年)にはキューピー人形が日本国内で生産されるようになり、大正から昭和戦前にかけて主力輸出産品の一翼を担うことになる。並行して日本でもキューピーブームが浸透し、黒い目にちゃんちゃんこなどを着た、原画とはひと味違う“和風キューピー”が登場。子供向けの絵本や様々な広告やグッズに描かれ、「きゅーぴーさん」と呼ばれ親しまれていく。

そして最近では、アニメキャラなどをモチーフにしたキューピーの根付け「キュージョン」が人気になっているのはご存じの通りだ。キャラクタービジネスの元祖が100年後のキャラクターと融合するとは、ローズオニールのキャラクター力の偉大さに改めて気づかされる思いだ。
(足立謙二/studio-woofoo)
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