こんな仕事をしておきながら何だが、子供の頃は作文が嫌いだった。というか、文章が嫌い。
読むのも書くのもイヤ。教科書だってロクに読んでいなかったので、文章に触れる機会は「週刊少年ジャンプ」を読んでいる時だけ。その中でもセリフの字数が異様に多い『こち亀』を読むのは、本当に難儀だったし……。

そんな二十数年前の自分に、彼女たちの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。神奈川県横浜市都筑区仲町台で配布されているフリーペーパー『レッツゴー! 仲町台さんぽ』を製作しているのは、なんと小学6年生の女の子二人組らしいのだ。
彼女たちの名前は「かなは記者」と「さおり記者」。二人がフリーペーパー作りのすべてを担当している。取材、記事作成、写真、編集、レイアウト、印刷、配布……。すべてだ。

「若いうちの苦労は買ってでもしろ」なんて言葉があるが、ここまでやってのける子たちは滅多にいないだろう。そこで、伺ってみた。どうしてフリーペーパーを作ってみようと思ったのか。
そのきっかけは?
「仲町台にあるカフェ『マローンおばさんの部屋』(地域活動支援センター)で、お母さんがお手伝いをしています。そのカフェの施設長が『障がいを持った人も、この仲町台で働けるようにしたい』と言っていました。だから、色々なお店の紹介をして仲町台の良さを知ってもらいたいと思い、フリーペーパー作りを始めました」(かなは記者)

そう。このフリーペーパーは、一種のタウン誌のような内容となっている。毎号掲載されているのは、仲町台のお店の情報。他紙と異なる点は、小学6年生の女子の目線で取材されているということ。

例えば、取材時に必ず出される質問が興味深いのだ。それは「どうして、この仕事を始めたのですか?」という、小学生目線による屈託のない疑問。
そして、これが深い回答を毎回引き出している。例えば、自分の幼き頃まで回想して語るパン屋さんがいたり、アルバイト時代における人との出会いを語るシェフの話が聞けたり……。
同紙の取材だと、お店側も親身になって答えている印象があるが、やはり若き逸材に参考にしてもらいたいのかもしれない。私が聞き手だとしたら、ここまで語らせることができるか? 不安だ。


その他の部分に関しても、両記者の糧になっている。まず、今では2人ともワードが使えるようになったという。それだけではない。ホームページ制作とツイッター(@nakamatidaisanp)はさおり記者が担当。動画作成と、助手のキャラクター“ぶうり”(同紙のキャラクター)のブログは、かなは記者が受け持っている。

そんな若き編集部が作るフリーペーパーは、どこで入手できるのか? 実は、彼女らが取材したお店でしか配布されていないそうだ。しかし、ホームページから電子書籍で内容を確認することはできるので、気になる方は要チェック。

ちなみに同紙の発行は、基本的に2カ月に1回のペース。今までは第1号が一月に、第2号が五月に発表されている。第3号は間近か? そして、その先は……。
「中学生になっても、フリーペーパー作りは続けていきたいです!」(かなは記者)

最後に聞いてみた。2人は将来、記者の仕事を目指しているのだろうか? 今の経験を活かして、新聞記者とか、雑誌の編集部とか……。

「将来はパティシエになりたいです」(さおり記者)
「歌手になりたいです。でも、文章を書く仕事もいいなと思うようになりました」(かなは記者)
小学6年生の可能性は、無限大である。
(寺西ジャジューカ)
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