日本は世界でも物価が高い国というのは誰もが知っていることだろう。これは不動産にも当てはまる。
世界で最も土地価格が高いのはニューヨーク、ロンドン、パリ、モナコ、香港、東京などがランクインする。

無論、日本人は例え高給取りだろうが、一括で購入する人はまずいない。25年から35年程度のローンを組み、定年退職までの完済を目指している家庭がほとんどであろう。

一方、東南アジアのベトナムが近年は土地価格の高騰によって注目されているのはご存知であろうか。15年前に200万円で購入した土地が現在では2000万円の価値となっているのだ。ベトナム南部最大都市のホーチミンは観光エリアのメッカでも知られているが、裏では非常に深刻な土地問題を抱えているのだ。


この原因は一部の金持ちや成金が投機目的で土地の転売を繰り返してきた結果と考えられる。インフラがまったく整っていないエリアでなぜか土地価格のみが上昇を続けているのだ。これは日本のバブル期を彷彿とさせる。要は価値のないものに意味不明の価値が付くのだ。

では、具体的にベトナムの土地価格事情を考察していきたい。まず、ベトナム人の一般サラリーマンの平均年収は60万円程度だということを憶えておいてもらいたい。
次に筆者はホーチミンの土地価格事情を調査してみた。

まずホーチミンの中心エリアでは戸建て平均面積の土地を購入するのに4000万円から6000万円程度かかる。これは東京都心部と同程度の値段ではないだろうか。一方マンションを見てみる。日本では億ションという言葉もあるくらいマンション需要が高い。平均価格3000万円程度から上はピンキリだ。
しかし、ベトナムのマンション事情は少し異なる。1000万円から1500万円程度出せば、以下のマンションを購入することができる。

・広さ=120平方メートル
・保育園、ミニスーパー、レストラン、銀行が併設
・プール、フィットネスジム、テニスコートが併設

いかがだろうか。土地価格とは裏腹に、高級マンションは格安で購入できるのだ。しかし、ベトナムではマンション需要が少ない。その理由は、ベトナム人は数世帯で暮らすのが当たり前だからだ。
故に、マンションでは生活するスペース、部屋がまったく足りない。

しかし、ここでも問題が発生する。以上のことからベトナム人は土地を購入し戸建てを建てることが理想の生活なのだが、その土地があまりにも高すぎて一向に手がでないのだ。

毎年50万円貯金しても4千万円の土地を購入できるのは80年先だ。しかも、何より問題なのは「ベトナムにはローンがない」ことだ。つまり、4千万だろうが1億だろうが、すべて一括払いをしなければならない。
このことから、ベトナム人が土地を購入するのはどれだけ至難なことかがお分かりいただけただろう。土地を購入するために家族、親戚から借金を重ねることはベトナムでは普通のことだが、それでも簡単に買える代物ではない。1つの家に数世帯住んでいるというのは、こういった事情も実は含まれる。

「じゃあホーチミンで高級マンションを買って、贅沢なセカンドライフを送ろう」と思っているみなさん、2013年現在、ベトナムの法律では外国人はいかなる財産の所持も許されていない。ただし、最近になって土地マンションの購入は外国人にもできるようにという草案は出されているので、近い将来もしかしたら実現するかもしれない。
(古川悠紀/studio woofoo)