そんな場所の一つがイタリアの南、地中海に浮かぶ島国マルタ。ここではなんと猫バスが走っていたという。一体どんなところなのか。猫バスの国へ行ってみた。
マルタは猫の国だ。人口は約40万人だが猫はその倍近く住んでいるという。「人より羊が多い」というようなニュージーランドを紹介する時の冗談があるが、マルタの場合は人より猫が多い。だが猫の国に走っているバスだから猫バスではない。この国で走っていた路線バスの形が『となりのトトロ』の猫バスに似ているのだ。
早速探し始めてみるものの、マルタの街中どこを探しても猫バスはない。普通のバスばかりだ。じつは「猫バス」と呼ばれる旧型のバスは、利便性などを考慮して2011年に一新されてしまったそうだ。
バスは黄、赤、白の3色に塗り分けられ、雰囲気あるレトロな装い。猫バスというより猫のようなバス。これだけ古いと燃費も悪いだろうし、車内のつくりもスムーズな乗降車には向いていないだろう。新しいバスに一新されたのは仕方なかったにしても、このバスが走っていた風景が失われてしまったことは残念だ。
以前マルタで走っていた路線バスは、路線は決められていたものの各運転手の個人経営だったそうだ。各車体の顔つきもそれぞれ違い、経営者のドライバー含め個性がより強く出ていたが、合理化により車種も統一。運行会社も現在はロンドンでも路線バスを運行する独企業アリーバ社が受け持っている。
マルタへ来れば誰でも乗れた猫バスだが、ここでも猫バスは子供だけの存在になってしまった。
(加藤亨延)