高級店の高いかつ丼はもちろん美味いが、不味いなら不味いなりの美味さがある。
肉が薄くても、柔らかくなくても、アツアツでなくても、なんならスーパーの惣菜コーナーのかつ丼だって十分楽しい。
なぜかつ丼は、こうも外れが少ないのだろうか。勝手に真剣に考察してみたいと思う。
■「卵とじ」「ソースがらめ」の万能調理法
もともと「卵丼」があるくらいだから、卵と甘い出汁でとじて不味いわけがない。加えて、玉ねぎの甘みもあって、しかも、具材はボリュームある「かつ」。「美味しい」の上に「美味しい」を重ねていくわけだから、ますます美味しいに決まっている。
一方、ソースかつ丼のソースのパンチ力は無敵。さまざまな野菜類がとけこんでいるソースは、全ての材料に一体感を与える包容力がある。
というわけで、この二大調理法を用いれば、特にカリッとしていなくても、アツアツでなくてもOK。揚げ衣が卵やソースを十分に吸い込むことで、衣がふやけていることすらも魅力になる。
■鶏でも牛でもない、豚の強み
値段と味が比例する牛に比べて、豚は安くても美味い。
また、親子丼などは、卵のトロトロ具合で味の差がかなり出るが、かつ丼なら、卵がトロトロでなくとも、衣とあわさることでカバーできる。揚げ衣との相性の良さも脂身の多い豚に分があり、揚げることでくさみも消えるし、素材の良さがさほど重要でないところも楽ちんだ。
■ご飯との相性の良さ
「肉の脂+揚げ油+炭水化物」という、最強のカロリーコンボ。残念ながら、カロリーが高いものって、やっぱり美味い。やっぱりステキ。カロリーの高さですでに十分すぎる吸引力がある。
■「かっこむ」という行為との親和性
本来ご飯を大胆にかきこむのが、丼物の醍醐味。でも、天ぷらや鰻、海鮮丼など、贅沢な素材を使っていたり、さまざまな食材が載っていたりすると、少しずつ味わいながらチビチビ食べることも多いもの。
その点、「かつ」なら、躊躇なく粗野に大胆にかっこむことができる。下品でも良い。そのほうが断然美味い。
ちなみに、ボリュームがあるため、食欲があるときでないと食べられないイメージもある「かつ丼」だが、個人的には病気や体調不良の後、あまり食欲がないときにも、かつ丼なら食べたくなる。おそらく弱った体がエネルギーを欲しているからだろう。
高くとも、安くとも、等しく元気をくれるところも、かつ丼の魅力のひとつだと思う。
(田幸和歌子)