海外から見た日本のイメージは「酔っぱらい」だ。日本へ観光に行ったフランス人たちが、帰ってきて私に得意げに見せるのは、浅草や京都の寺社仏閣とともに、繁華街で酔っぱらったサラリーマンが道で寝ている写真である。
それを他のフランス人たちにも見せるので、その友人たちも日本へ行くと、泥酔のサラリーマンを「観光」として写真に収めて帰ってくる。

欧州では「酒の席では無礼講」といった考えが日本のように強くなく、さらに吐いたり泥酔したりするのは、自分をコントロールできない恥ずかしい人間という意識が日本より強い(といっても欧州も、週末の夜は路上で吐いている人は多いし、フランスでは女性含め、お酒を飲んだ帰り道にトイレが無いと、平気で道端で立ちションをするのだけれど……)。
列車内で寝れば常にスリの危険が隣り合い、路上で寝れば、それこそ高価なものは身包みはがされるため、寝ようとする人は少ない。そして、いかにも酒に溺れているという身なりの人ではなく、スーツを来た人が路上で泥酔し寝ているアンバランスさも、彼らにとって新鮮に映るのかもしれない。

そんな日本の酔っぱらい文化の1つが「飲み放題」だろう。これはフランス人たちにも好評で、仕事や留学で日本に住んだ経験がある人は、皆声をそろえて「日本は飲み放題があって楽しい!」と言う。
特に学生の場合、一定料金を払えば時間内で好きなだけお酒を飲める飲み放題のシステムは、とても魅力的に映る。どこの国でも、同様のサービスを思いつきそうなものだが、なぜフランスには飲み放題がないのだろうか? 

日本人と比べフランス人はアルコールに対して強いので、日本の感覚で飲み放題を設けたら、いくら酒があっても足りないから店がやらないのだと、勝手に考えていた。しかし、どうやら違うらしい。じつは法律で禁止されているのだ。

仏行政サイト「セルビス・ピュブリック」によれば、定額飲み放題でのアルコール販売は禁止だそうだ。これは2009年に可決された法律によるもので、そのため現在レストランやバーは、同種のサービスを提供できない。
イギリスも2010年にアルコールの定額飲み放題を禁じている。飲み放題以外にもイギリスでは「早飲み競争」「女性はアルコール無料」「デンティスト・チェア(歯医者のイス:周りの人が口にお酒を流し込むこと)」も禁止された。

日本でも、アルコールの飲み放題については、国がどこまで規制していくべきか議論がある。賛否どちらにせよ、欧州が行った政策は1つの目安にはなるはずだ。
(加藤亨延)