
12話は、こんな話
まず、はつ(宮崎あおい/崎の大は立)がひとりで大阪にお嫁入りし、その半年後、あさ(波瑠)もついに白無垢を着る。すっかり女性らしく美しくなったあさに、母・梨江(寺島しのぶ)がはつとお揃いの守り袋を託し、「いつかあんたにもおなごに生まれてよかったとゆう日がきっとくる。せやからしっかりな。やらかい心を忘れんと、ええお嫁さんになるんやで」とはなむけの言葉を贈る。
ところが、大阪加野屋につくと、新次郎(玉木宏)は紅葉狩りに行ってしまっていた。
女のほうがドンとしてる
これまで主に女性の辛さが描かれてきたのが、2週の終わりで、男性は男性で何かを抱えていることが描かれる。
訪ねてきた新次郎(玉木宏)はあさ(波瑠)に亡き兄の話を語る。
初登場からずっと、飄々として何にも動じないふうに見えていた新次郎だったが、できた兄に対して引け目を感じていた。つい、あさに愚痴をこぼしてしまう新次郎。まあ、これも、無意識かもしれないとはいえ、おなごの気持ちをつかむには充分過ぎる。
惣兵衛も子供のときは、おもろいええやつだったらしい。いったい何が彼を白蛇に変えたのか。やはり、はつ(宮崎あおい/崎の大は立)の力で魔法を解いてもらいたい。
新次郎にはあさがいる。兄の死を背負った新次郎を、あさは「お兄さんの分まで生きてください」と励ます。
そのときの新次郎の表情が印象的だ。兄の死を体験した憔悴だけでなく、何かちょっとうるっとしたふうで、いつものお兄さんキャラではなく、少年のようにも見えた。うまく掌で転がしていたように見えた10以上も年下の女の子に救われる新次郎。このふたりはすでに、互いに励まし合ういい関係になってきている。
あさと新次郎は、よくできたひとなのに不幸を背負ってしまった姉と兄がいるという境遇の似た者同士。こういう同じ宿命を背負った者同士が惹かれ合ってしまうというのは物語の王道だ。
これからふたりは二人三脚で生きていくことになる。あさは、「どんとお家を守ります」と父母に宣言(新次郎の「ドンも鳴らん」にかかってるのだろうか)。やっぱり、いざとなったら女のほうが強いと描きたい朝ドラあるある。母・梨江はしっかりあさに言葉をかけているにもかかわらず、父・忠興(升毅)はこういうとき何も言えなくなってしまう。
いずれにしても、梨江の「あんたはただのあかん子やない。筋金入りのあかん子や」のほうがセンスいい。
それにしても、新次郎はなぜ、婚礼の日に、紅葉狩りに行ってしまったのか。
あさに励まされうるっとしてたんじゃないのか。涙涙のお嫁入りのあと、こんなふうに「びっくりぽんや」の出来事で、来週につづかせる手つきには、軽く変化球投げましたという余裕を感じる。
大阪にお嫁入りするには船で川を行く。原作では、伏見から船に乗り淀川を下って大阪に入ると書いてある。川下りのシーンは滋賀県近江八幡でロケが行われた。
原作だと嫁入りにつく人数がもっといるのが(それでも財政難で縮小しているようなことが書いてある)、ドラマだとすごく少人数。今井家の状況ってどうなっているんだろう。いい着物はたくさんもっていそうだが。
(木俣冬)